最近は一般の人でも耳にする、”酵素”。
以前は洗剤に入っていると言うくらいの知名度だったと思いますが、今やなんだか健康食品にまで入っているようです。
してその効果の程は、そもそも酵素はタンパク質で、消化管の中のタンパク質分解”酵素”で分解されるので・・・。
と言う当たり前の話は置いておいて、酵素はタンパク質でできた化学反応の触媒として働くものです。
今回は最近の論文を紹介しながら、酵素についてちょっとだけ興味を持ってもらいたく、つぶやいてみました。
酵素と言えば、上述したとおり化学反応の触媒。ある決まった基質を、ある決まった反応で、ある目的の生成物をはき出します。
他の触媒と比べて、水中で利用でき、常温常圧で反応速度を大幅に向上させることができるというすばらしい触媒なのですが、応用範囲が狭い、と言うことが欠点としてあげられます。
つまり、「決まり事しか守れない」わけです。
そんな生真面目な触媒である酵素は、いつも律儀に極められたことしかやっていないと思われがちでした。
しかし最近は、どうもそんな奴らばかりではないと言うことが分かりはじめてきました。その一つは、酵素は一つなのに構造を変えることにより二つの化学反応の触媒として働くという報告です。
なんちゃって解説をしたいところなのですが、筆者サイドからきちんとした解説がなされているので、こちらは東大のプレスリリースをご覧になり理解してください。
もう一つは、本来エステルを加水分解する酵素であるリパーゼが、なんと、Ugi反応の触媒として働くという報告です。
Model Studies on the First Enzyme-Catalyzed Ugi Reaction
Kłossowski, S.; Wiraszka, B.; Berłożecki, S.; Ostaszewski, R. Org. Lett. 2013, 15, 566–569. DOI: 10.1021/ol3033829
とりあえず言えることは、なにやら便利な反応と言うことです。
ともかく、一般的なリパーゼの反応をおさらいしておくと、いわゆるセリンプロテアーゼ型の機構でエステルを加水分解します。
そんな触媒部位を持つリパーゼにこれら3つの化合物を反応させると、以下のような触媒サイクルでUgi反応が進行すると考えられています。
メカニズムに関しては当然推測ですが、本来来るべき化合物とは異なる化合物が来ても、ある種の酵素は対応し、何らかの化合物を生成できるなんて非常に面白いことだと思います。
酵素が触媒できない反応はない、と言った人がいるとかいないとか。その真偽はともかく、まだまだタンパク質性触媒の可能性は広がりそうです。