[スポンサーリンク]

一般的な話題

サイエンス・コミュニケーションをマスターする

[スポンサーリンク]

 

突然ですが自分の研究を伝えるのって難しいと思いませんか?学会などのプレゼンテーションや企業での面接の時など、「自分にわかりやすく伝える力があれば、、」とほぞを噛む経験は一度はあると思います。

僕が感じる問題は、一般的にプレゼンテーションにおける「正解」があやふやにしか定義されていないために、努力が上滑りになってしまうことがあるということです。でもこれって野狐禅的というか、もうちょっと確固たる指針を元にやっていきたいとおもいませんか?

 

といったところで、MRS fall meetingでサイエンスコミュニケーターであるTim Miller氏によるサイエンスプレゼンテーションの講演があり、聴講したところ非常に良かったので、一つの良い例として少し紹介したいと思います。

 

私達のなかにある「どうやってよいプレゼンテーションをすればいいのか?」という迷いが少しでも無くなればよいと思います。

1)基礎編どうやって話すか?

presentation.png

プレゼンターの態度は、プレゼンテーションの雰囲気や聴衆の聞く気を直接左右します。基礎的ながら重要な点として

 

(1)しっかり立ってプレゼンする。(ふらふらしたり、変に歩きまわったりしない)

(2)きちんとオーディエンスの方向を向く。(自分のパワポにむかって話したりしない)

(3)オーディエンスとアイコンタクトを取る。

(4)ゆっくり話す。

(5)たくさん練習する。(アメリカ人はプレゼンをよく練習しているし、練習好きな気がします。これは日本人はもっと改善できるところな気がします)

(6)元々の話のストーリーを途中で変えない

を挙げられます。

 

これらは例えば英語でのプレゼンや、重要な面接の時などは、特に重要で緊張しがちな状況であればあるほど堅守していくべきものです。そのためにやはり何度も何度も本番の状況になるべく近い状況でリハーサルしていくことが良い方法であります。

 

2)パワポの作り方

powerpoint.png

ここはかなり独特なTim Millerの意見があって面白かったです。例えば、「パワポは黒バックグラウンドであるべきだ!」とか「レーザーポインターは使うべきでない」など、刺激的でかつ一考の価値のある主張でした。

 

 

3)ストーリーの作り方__わかりやすく感動的なストーリーテリング

 

プレゼンテーションにおいて一番重要なのが、そのストーリーをわかりやすく伝えることです。

そこでTim Millerが伝えるゴールデンルールは

 

何が主人公であり、何がゴールであるかを最初に明確にすること。

 

もっというと、はじめにストーリーラインを聴衆に理解させ、それにそって話を展開していき、最後にゴールを超えたモノを用意すること。この展開は感動させるストーリーとしてとても有用です。

例えば映画007では、まず(1)(主人公である)ジェームス・ボンドが、(2)(ゴールである)敵を倒す、というのは観客に共有されています。そしてその前提にそって話が展開していくので、わかりやすいし楽しめます。さらに最後に(3)(ゴールの先にある)人間的な成長、みたいなものが用意されていると、見ていて非常に感動するし、好印象になるというスキームです。

 

研究発表においても何が主人公で何がゴールかを明確にすることはとても重要です。逆にいうと、他の人の発表を見ていてなぜ分かりにくいかを考えるときに、この(1)主人公の設定と(2)ゴールの設定というストーリーラインがぶれているということが原因であるということは多いです。

 

4)最後に

サイエンスにおけるプレゼンテーションは非常に重要で、分かりにくいからこそわかりやすく伝える努力はとっても大切です。

残念ながら15分やそこらのプレゼンテーション1つで、研究の全てを伝えることや聞き手が知らないことを教育することは不可能です。

だからこそプレゼンテーションにおいて伝えるべきものは、その先にある熱いパッションであったり、人の中の何かを動かすバイブスです。そのことを重視しているTim Millerの講演は実際に感動的で、もっとプレゼンの高みを目指したい気持ちになりました。

科学者にとってコミュニケーションは重要課題の1つであることは、間違い無いと思いますので、興味のある方は是非チェックしてみてはいかがでしょうか?

 

関連動画

Talking Nano: A Brief intro to Nano by Tim Miller

やすたか

投稿者の記事一覧

米国で博士課程学生

関連記事

  1. 近赤外吸収色素が持つ特殊な電子構造を発見―長波長の近赤外光を吸収…
  2. ゼロから始める!量子化学計算~遷移状態を求める~
  3. 生命が居住できる星の条件
  4. 研究者向けプロフィールサービス徹底比較!
  5. 世界最高の耐久性を示すプロパン脱水素触媒
  6. 高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題…
  7. 男性研究者、育休後の生活を語る。
  8. いまさら聞けない、けど勉強したい 試薬の使い方  セミナー(全5…

注目情報

ピックアップ記事

  1. SlideShareで見る美麗な化学プレゼンテーション
  2. エルマンイミン Ellman’s Imine
  3. 有機合成化学協会誌2021年8月号:ナノチューブカプセル・ナノグラフェン・芳香環C-H変換・メタルフリー複素環合成・スピロシクロプロパン
  4. 配位子で保護された金クラスターの結合階層性の解明
  5. 有機合成化学協会誌2024年3月号:遠隔位電子チューニング・含窒素芳香族化合物・ジベンゾクリセン・ロタキサン・近赤外光材料
  6. キース・ファニュー Keith Fagnou
  7. エコエネルギー 家庭で競争
  8. 有機合成化学協会誌2022年10月号:トリフルオロメチル基・気体分子等価体・蛍光性天然物・n型有機材料・交互共重合法
  9. Reaxys Prize 2012ファイナリスト45名発表!
  10. ステープルペプチド Stapled Peptide

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年12月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

有機合成化学協会誌2025年3月号:チェーンウォーキング・カルコゲン結合・有機電解反応・ロタキサン・配位重合

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年3月号がオンラインで公開されています!…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー