[スポンサーリンク]

一般的な話題

還元された酸化グラフェン(その1)

[スポンサーリンク]

 

無機物の中でも最もホットな材料の一つがグラフェンでしょう。

いうまでもないですが、グラフェン(graphene)は、2005年にNovoselovとGeim(と他の人)が、Natureに発表し、2010年には二人にノーベル賞が出たという、物質です。

その構造はベンゼン環が多数縮環した単層膜で、炭素の同素体であり、鉛筆の文字にも含まれている(といっていいと思われる)

 

"Simple is the best"

を体現したような材料です。









 

 

 

その単純な構造は、物理学者だけでなく、電気・電子、

果ては数学者や生物系をも巻き込むムーブメントになっていると言えるでしょう。



しかし化学者、特に有機系のみなさまにとっては、ツルツルしていてイマイチつかみ所がない、という感覚ではないでしょうか。

それともフラーレンをあんなのや、こんなのにする有機の皆様ですから、グラフェンなど屁でもない、という感覚なのでしょうか。



Grapheneを化学的に扱う、という仕事も多数あり、例えば超分子的な相互作用を用いて溶媒に分散させる、というようなテーマもホットです。

それ以上に「流行」を感じさせるのは、酸化グラフェンと呼ばれるグループです。
 
 
酸化グラフェン(Graphene oxide, GO)は、グラファイト(要するに鉛筆の芯)を酸化し、分散した水溶液として得られるもので、実はその発見はとても早く、
HUMMERS, RICHARD, OFFEMANらによって、1958年には製法が確立されておりました。
 
J. Am. Chem. Soc. 195880, 1339.
 
その方法も極めて単純で
「鉛筆の芯(グラファイト)に濃硫酸と過マンガン酸カリウムを加えて混ぜる」だけで、要するにグラファイトを過マンガン酸カリウムで酸化し、
親水性にして、はがれてくるやつを集めるという、これもある種の"Simple is the best"と言えるのではないでしょうか。
 
酸化グラフェンとグラフェンは、下記のような違いがあります。
 
 

グラフェン

酸化グラフェン

炭素のみ

炭素と酸素と水素もいっぱい

SP2混成軌道

SP3混成軌道

完全な平面

グニャグニャしている上に欠陥もたくさん

電気を流す(半金属的?)

電気は流さない

疎水的で水に分散しない

親水的で水に分散する

 
 
特に酸化グラフェンは水溶液(正確には分散液)として扱うことが出来ます。そのため、化学者の目から見ると、酸化グラフェンの方が扱いやすく見えるのではないでしょうか。
 
今回のテーマは、それを還元させた"Reduced graphene oxide"です。直訳すれば「還元された酸化されたグラフェン」となり、何をやっているんだ!?
とも思われるでしょうが、、、
 
今回はここまで。

関連記事

  1. MEDCHEM NEWS 33-2 号「2022年度医薬化学部会…
  2. AIBNに代わるアゾ開始剤!優れた特長や金属管理グレート品、研究…
  3. コバルト触媒でアリル位C(sp3)–H結合を切断し二酸化炭素を組…
  4. 静電相互作用を駆動力とする典型元素触媒
  5. 水をヒドリド源としたカルボニル還元
  6. 人工細胞膜上で機能するDNAナノデバイスの新たな精製方法を確立
  7. 新規抗生物質となるか。Pleuromutilinsの収束的短工程…
  8. JEOL RESONANCE「UltraCOOL プローブ」: …

注目情報

ピックアップ記事

  1. Natureが査読無しの科学論文サイトを公開
  2. ハネウェル社、アルドリッチ社の溶媒・無機試薬を販売へ
  3. イグノーベル賞2021が発表:今年は化学賞あり!
  4. 湘南ヘルスイノベーションパークがケムステVプレミアレクチャーに協賛しました
  5. 第8回 FlowSTシンポジウム
  6. リスト・バルバス アルドール反応 List-Barbas Aldol Reaction
  7. サンギ、バイオマス由来のエタノールを原料にガソリン代替燃料
  8. 【25卒化学系イベント】 「化学系女子学生のための座談会(11/18・19)」 「Chemical LIVE(12/9・10)」Zoom開催
  9. 日本化学会 第100春季年会 市民公開講座 夢をかなえる科学
  10. 嘘か真かヒトも重水素化合物をかぎわける

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年11月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP