今年もやって参りましたノーベル賞シーズン!
前哨戦としてこの時期には毎年、ジョーク版として名高いイグノーベル賞が発表になります。受賞対象は”first make people LAUGH, and then make them THINK”――すなわち、まず笑わせ、そして考えさせてくれる研究。ユーモアたっぷりであるのはもちろんのこと、一方では実におおっと唸らされる研究でもあるわけです。
日本人が常連受賞していることもあってすっかり有名になった賞ですが、今年も邦人が「音響学賞」を受賞!なんとこれで6年連続受賞だそうです。ある意味とてつもない国ニッポン!と胸を張れる成果(?)を上げ続けているわけですから、ただただ舌を巻くほかありません。この邦人受賞のニュースは既にあちこちで報じられましたので、ここでは横に置いておきましょう。
この「つぶやき」では化学ブログらしく、イグノーベル化学賞に絞って解説してみようと思います(写真:ctpost.com)。
さてさて、その受賞研究やいかに・・・?
【受賞者】
ヨハン・パターソン (Johan Pettersson)
スウェーデン・ルワンダの環境衛生工学者【受賞理由】
スウェーデンのとある町のとある家に住むと、髪の毛が緑色に変わっていく現象のナゾを解明
・・・
落ち着いてください読者の皆さん。日本では何ら珍しくないヘアスタイルですよ?
その証拠に、まずは我が国を代表するお子様の意見をどうぞ。
・・・冗談はこれぐらいにして、どんないきさつがあったのかご紹介しましょう。
住居者の髪の毛を変色させる”とある家”は、スウェーデンの南方、アンダースレフ(Anderslöv)という街にありました。彼らからの不満を受けて調査を行ったのが、今回の受賞者・パターソン氏。
「飲み水に原因があるだろう」との推測に基づき水質調査を行った結果、”とある家”の飲み水には通常の4倍の濃度で銅が含まれることが分かりました。
銅はご存知の通り、緑色に呈色する金属の代表格。また、人間は体内に取り込んだ重金属を、毛髪から排出する生理機構を備えてもいます。高濃度に含まれる銅を飲み水から摂取する内に、それが髪の毛に蓄積され、住居者を緑髪に変えていった・・・というわけです。
この調査過程で、もう一つ面白い事実が明らかとなりました。”とある家”と同じ水源を使用しているはずの普通の家からは、問題となる濃度での銅が検出されなかったそうなのです。つまり、「水源には問題がない」ということ。
ではどこに原因があったか?というと、実は配管に有りました。
髪を変色させる”とある家”は複数あったのですが、それらは全て新築であり、またいずれの水道管にも銅が使われていました。シャワー時に使用する熱湯が長時間にわたって配管に滞留することで、銅が溶け出していたのだそうです。実際、シャワーを浴びる頻度の高い若者や女性が、被害に遭う程度が大きかったのだとか。
この事実を見事突き止めたパターソン氏は、きわめて科学的な立場から合理的解決法を提案しています。
それは、“引っ越す”もしくは“冷たいシャワーを使う”ということ!(笑)
一連の調査は全くマジメに行われたようですが、調査対象がそもそも怪奇びっくりハウスと形容するほか無く、被害状況もオカルティックそのもの。まったく面白おかしいですね・・・毎度のことながら授賞のセンスが抜群です。
その後、イグノーベル賞を受賞したパターソン氏は、自らのひげを緑色に染めあげ、セレモニーに出席したということです。銅は使わず、ホーレン草をつかってですが・・・。
受賞セレモニーの様子
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