ケムステをご覧ということは皆さんはある程度化学に興味がおありなわけですよね。では皆さんが化学に興味を持たれたのはいつ頃ですか?はっきりとは答えられなくても、何らかのきっかけがあったんではないかと推察します。それは素晴らしい先生との出会いであったり、両親の影響であったり、もしかしたらマンガの影響だったりするかもしれません。何でもいいんです。
さて皆さんお待ちかね(待ってないって?あーあー聞こえないー) 今月の Nature Chemistry誌から、Bryn Mawr CollegeのMichelle Francl教授のthesisを紹介したいと思います。前回のはこちら
Homemade chemists
Francl, M. Nature Chem. 4, 687-688 (2012). doi:10.1038/nchem.1441
でも、もし、家庭で簡単にできる化学実験のキットのようなものがあったらどうでしょうか。何らかのきっかけで親の目に留まり、子に買い与えたとしたら。きっと少なくない子どもが化学に目覚めるんじゃないかと思います。そうですFrancl博士のthesisのタイトルにある、Homemade chemistsとは、家庭で化学者の卵を目覚めさせようということなんです。
These days, there is virtually nothing in a commercial chemistry set you couldn’t safely feed the family cat.
筆者が子供の頃、学研の科学という雑誌がありました。毎月ありとあらゆるジャンルの科学キットとその原理などを解説した冊子だったと思います。定期購読して毎月家庭に届けられる友達を垂涎の眼差しで見ていました。そうです、うちは貧乏だったので、いくらせがんでも買ってもらえなかったんです。残念ながら学研の科学は休刊になってしまいましたが、数年前に大人の科学マガジンというのが創刊されたのを機に大人買いをしたのはいい思い出です。
図は文献より引用 © CHEMICAL HERITAGE FOUNDATION COLLECTIONS
そんなキットが無かったとしても、Francl博士は幼い頃兄弟と秘密の実験めいたことを家庭でやられていたようで、そこでの興奮が化学への道を開いたということでした。発明王エジソンも学校外での実験に夢中になっていて、リンをこぼして火事を出したなんていうエピソードもありますから、内緒でやる実験というものが持つ魅力は計り知れないものがあります。
さて、今は無き学研の科学ですが、この雑誌が当時の子供たちに与えた影響はものすごかったのではないかと思います。ケムステ読者の方々にもきっと影響を受けた方がいるんじゃないでしょうか。ただ、この学研の科学にしろ大人の科学マガジンにしろ、化学は少なかったのではないかと思います。化学実験の場合はどうしても安全性や廃棄物の問題がついてくるので、面白い題材があったとしても、色々な物を作ることが難しくなります。頭の痛いジレンマです。
一度は休刊した学研の科学ですが、今年の七月になんと復活しておりました!その名も科学脳!そして復刊第一号は水よう液のセットでした!なんと嬉しいじゃありませんか化学が復刊第一号にとりあげられたというのは(残念ながら現在は品切れ中。Amazonマーケットプレイスなら現在入手可能です)。毎月の雑誌ではないのかもしれませんが、ぜひともこういった雑誌による科学の子供たちへの浸透というのをはかっていただきたいものです。
[amazonjs asin=”4057503722″ locale=”JP” title=”科学脳 水よう液”]最近では国民的スターであるドラえもんを題材にした科学雑誌も登場しており、これでまた夢が広がってくれますかね。ドラえもんは化学的な道具(?)は稀だったと思うので、どちっかと言うと工学の分野に子供たちを取られちゃうかも。
[amazonjs asin=”4091068111″ locale=”JP” title=”ドラえもん ふしぎのサイエンス 1 手回し発電タケコプター (小学館学習ムック)”]W杯の熱狂をテレビで視れば将来はサッカー選手になりたい、オリンピックの金メダルを視れば将来は体操選手になりたいなどと子供たちが思い描くことは容易に想像できます。未来の化学者を物理学や生物学に取られてしまうならともかく、スポーツ(Francl博士はX-gamesを挙げています)に取られてしまってませんか?私たちにできることとは一体・・・
関連サイト
- The Culture of Chemistry:Mischel Francl教授のBlogが大変面白かったので紹介いたします。