低分子医薬とも、抗体医薬とも違う次世代の医薬として期待されている核酸医薬。自然そのものの仕組みを明らかにする生物学に対して、ひとの手で自然にあるものを改良し不可能を可能に変える化学のアプローチは、核酸医薬にどのような魅力と可能性をもたらすのでしょうか。
化学と生物学が交差するとき物語は始まる
目次
- 核酸医薬の物語1「化学と生物学が交差するとき」(本記事)
- 核酸医薬の物語2「アンチセンス核酸とRNA干渉薬」
- 核酸医薬の物語3「核酸アプタマーとデコイ核酸」
自分Greenは、以前に「抗体医薬」の記事(参照:低分子医薬の代わりに抗体医薬がトップに?)を書かせていただきました。今度は、次世代医薬もうひとつの巨塔「核酸医薬」について書いていきたいと思います。核酸医薬は、抗体医薬よりも背景知識が広範に必要なため、上手くスッキリ書けるか分かりませんが、ぜひともご容赦ください。
いわゆる核酸医薬の原理は、ウイルスを運び屋とした遺伝子治療とは、まったく異なります。遺伝子治療では、細胞に導入したDNAの塩基配列が、やがてアミノ酸配列に変換されタンパク質を作ることで、効果を発揮します。これに対して、核酸医薬では、体の中で起こる現象を、核酸自体が調節することで、効果を発揮します。核酸医薬の場合、遺伝子治療のように細胞核の中にあるゲノムDNAの配列を書き換えることはありません。
核酸自体が生命現象を調節する主役であるため、核酸医薬の原理を理解する上で、まず大切なことは核酸自体の化学性質です。ここで言う核酸とは、具体的に言うと、RNAであったりDNAであったりのことです。核酸はヌクレオチドと呼ばれるユニットがたくさん連なった高分子です。ビーズをつなげてネックレスを作るように、ヌクレオチドの配列には多彩なパターンがあります。この多様な配列により、核酸はそれぞれ複雑な立体構造を取ります。二重らせんだけでなく、自分の鎖の中で塩基対を形成すればより込み入った構造を取ります。
核酸に多彩な機能を持たせることが可能な一方で、核酸はこのように似たようなユニットのつながりで成り立っているため、核酸医薬は安定して大量合成が可能です。例えば、ゼロからタキソールのように複雑な構造の化合物を作ろうとすればあの手この手で化学反応を使い分ける必要があります。また、抗体医薬ならば鶏卵なり培養細胞なり生き物を用意してそこから手間をかけて抗体タンパク質を精製しなければなりません。当然、製造コストにこれらの事情は大きく響きます。一方、核酸医薬ならば、材料を用意して、同じような反応を何回か繰り返すだけで、目的の産物を手にすることができます。
また、核酸医薬は化学合成できるからこそ、人工の改変核酸をはじめ自然にあったものを改良して不可能を可能に変える化学の立場から貢献できる場面がたくさんあります。そのままのRNAやDNAには限界があり、どうしても天然のままのかたちでは薬として不都合があります。
ではでは、具体例をあげて、核酸医薬の仕組みを詳しく解説していきましょうか。
戦略1.RNAと相互作用して遺伝子の発現を調節するタイプ
戦略2.タンパク質など標的分子と相互作用して機能そのものを調節するタイプ
……と言いたいところですが、すみません。まだまだまったく本題までたどり着けていないため、何が面白いのかさっぱりかもしれませんが、いっぺんに説明してしまうと、とても長くなってしまうため、分割することにしました。もとの草稿はもうあるのですが、推敲してぼちぼち公開していきたいと思います。
化学と生物学が交差するとき物語は始まる
ぼやき「ふたつが交差するところまで書こうとするから記事が長くなるのだけれども……」
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