タイトルには「化学の資格」と記載しましたが、医師や弁護士などと違い、化学者になるのに特に必要な国家資格はありません。
とはいえ、世の中には種々の目的で設けられている化学系の資格があり、化学系企業で働いているとそれらの資格を取る取らされる機会があります。今回は研究関係で取得を迫られる化学系の資格についていくつか紹介します。
筆者の働く職場(研究系)で取得者の多い資格ベスト3です(職場や企業形態によってかなり違うと思います)。
1位.危険物取扱者
2位.高圧ガス製造保安責任者
3位.公害防止管理者
上記3つは、化学物質を製造する一定規模以上の工場では有資格者を置かないといけない資格です。今回はまず第1位である.危険物取扱者について現場でどのように使われるのか説明したいと思います。
危険物取扱者
消防法に基づく危険物を取り扱い、またその取り扱いに立ち会うために必要となる国家資格で
「一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う化学工場、ガソリンスタンド、石油貯蔵タンク、タンクローリー等の施設には、危険物を取り扱うために必ず危険物取扱者を置かなければいけません。(消防試験研究センターHPより引用)」
とあります。
有機溶媒の多くは危険物に含まれますし、その取扱いの資格ですからChem-stationでもコーナーがある(古いコンテンツですが)ように、読者の方も持っている人が比較的多いのではないでしょうか?筆者の働く企業では、技術系ならまず取るように言われる資格で、他の資格はなくてもこれだけはっていう人も多いです。
筆者は学生時代に取りましたが、先に化学系会社に就職した同級生と試験会場で偶然会いました。やはり職場で取るように言われたそうです。
さて、資格をどう仕事に活かすかですが、有資格者が必要なのは職場全体で1人だったりするので、筆者の場合は資格そのものよりもその資格取得に必要な知識や法令知識などを使うことの方が多いです。
例えば、研究所や工場など危険物を貯蔵したり取り扱ったりする施設では、設備によって扱える危険物の量が決められています。危険性の違いにより危険物ごとに「指定数量」というものが決められており、指定数量の何倍まで貯蔵できるといった決め方があります。そこで、
「ジエチルエーテルを3kg発注して実験室に置いておきたいけど、指定数量が50kgのジエチルエーテルを実験室に置くと指定数量の倍数をオーバーしてしまうので、まだ余裕がある倉庫に置かないといけないな」
といった感じです。
あとは、溶媒の引火点や発火点、沸点なども出題され覚えることになるので、
「あの溶媒は発火点が低いから高温のオイルバス近くで使わないようにしよう」
などと意識するきっかけになります。
試験の内容については割愛しますが、全種類の危険物を扱うことができる甲種では特に法令をナメていると不合格になると思います。(筆者も1回落ちました…)