海堂尊、浅倉卓弥、中山七里、柚月裕子、高橋由太、七尾与史などを輩出してきたミステリー新人賞『このミステリーがすごい!』大賞。創設10周年を記念して、原稿用紙10枚の、オール書き下ろしミステリーをお届けします。1編10分で楽しめてしまうベスト・ショート・ミステリー、28本! 謎解きあり、ユーモアあり、サスペンスありのお得な一冊。前述の作家をはじめ、『このミス』大賞作家が勢ぞろいです。
ん?なんでこの本をここで?と疑問に感じた方が多いと思われますが、「。化学者の”つぶやき”なんで大丈夫だ、問題ない。」
…といいたいところですが、今回は少しだけ関係があるのです。2011年の化学系小説ベストセラー、喜多 喜久氏の「ラブ・ケミストリー」(略して「ラブケミ」)を覚えていますでしょうか。化学描写が頻出する、いや、でまくりの恋愛ミステリー小説ということで、ケムステでも盛大に応援させていただきました。ついでに、果敢にも著者に連絡をさせていただき、独占インタビューを行いました(過去記事:「ラブ・ケミストリー」の著者にインタビューしました。)。この作品に登場する「化学界のフェルマーの定理」と呼ばれる架空の天然物プランクスタリンが、筆者が合成に携わっていたパラウアミンがモデルになっていたということもありまして、とってもうれしかった記憶があります。
その喜多氏から先日連絡がありまして、書き下ろしの短編が掲載された短編集が出版されることのこと、さらにできたての短編小説をメールにて添付していただきました。そういうわけで、この短篇集「10分間ミステリー」の紹介に至ったわけです。ついでに、前回インタビューでも続編期待!ということで〆ましたが、しつこく聞いたところ近々出版される続編情報も入手しましたのでケムステ読者のみなさまにいち早くお知らせしたいと思います(ちゃんと許可はとっております)。
「…お父さん、お父さんってば!」
ー誰かが私の体を揺すっている
さて、今回の「10分間ミステリー」そんな一文から入る「父のスピーチ」という題名の短編です。タイトル通り10分で読める…どころか5分でも読めてしまうのですが(そういうわけで中身の紹介はやめておきます)、そんな中にもちょっとした化学描写レベルを超え、またまた有機化学の人名反応までできます。化学の観点からみたら喜多氏の短編がもちろん一押しですが、そもそもこの本の短編小説は、ミステリー新人賞『このミステリーがすごい!』の歴代受賞者が今回のために書き下ろしています。有名なところでは、「バチスタ」シリーズ海堂尊や『さよならドビュッシー』中山七里、「オサキ」シリーズ高橋由太などが執筆者です。ほんの少しの時間で読むことができるので、とってもオススメだと思いますよ。
が、氏いわく、「立ち読みで済ませるのがベスト」(苦笑)ということです。「立ち読み程度でもサラっと読める」という意味で解釈しまして、ゆっくり買って読む、立ち読みで済ませるはまかせますが、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。ちなみに本日(2月8日)発売でAmazonでも人気のようです。
『このミステリーがすごい!』大賞10周年記念 10分間ミステリー (宝島SUGOI文庫)
さて、気になる「ラブケミ」の続編のお話ですが、すでに校了したとのこと。ここからの話はあくまでも予定ですが、どうやら今年の4月上旬に発売されるということです。そのタイトルは….
『猫色ケミストリー』(仮題)
(*画像はイメージです。転載:http://bit.ly/y9lm4H)
猫?cat?ケミストリー?…..かなりアレがアレの内容なのか題名からは想像できませんが、いろんな意味でとっても期待されます!『ラブケミ』の続編で、再び東大農学部を舞台にしているようです。とはいえど繋がりを感じさせる描写はありますが、登場人物の重複はないそうです。またかわいい秘書さんが登場するようで、研究室の秘書さんイメージを再び向上させるような作品となっているのでしょうか。また、様々な現場の学生や研究者を頷かせるような化学系描写が満載なのでしょうか。
予想はつきないですが、期待して今春を待ちましょう!また出版の際には書籍紹介をしたいと思っています。
最後に、作者の喜多喜久さん、再びご連絡頂きまして、この場を借りて御礼申し上げます。益々のご活躍を期待しつつ、化学系の研究者皆さんで応援しましょう!
P.S. 『ラブケミ』の文庫版が3月下旬に発売されるようです。文庫版『ラブケミ』は大幅に手が入っているようで修正箇所は500近いということです。まだ読んでいない方は文庫版も同時に手に入れてはいかがでしょうか。
- 関連書籍