[スポンサーリンク]

一般的な話題

HTML vs PDF ~化学者と電子書籍(ジャーナル)

[スポンサーリンク]

 

皆さんが日常的に論文を閲覧する際、PDFをブラウザ上に表示して(あるいはそれをプリントアウトして)読み始める方がほとんどかと思います。私は自分なりの書き込みやハイライトをデータで保存して他の機器と同期させる事が便利だと思っているので、そのまま画面の上で読むことがほとんどです(常々紙を節約するようにと言われていますし)。いずれにせよPDFを読むわけです。ところが先日Nature Chemistryを眺めていて、ふと気がついた事がありました。

HTMLならではの機能(Nature Chemistryの場合)

Nature Chemistryに限らず、私はどんなジャーナルでもアブストラクトのページを開いたら迷わずにPDFを開くことが常でしたが、たまたま目に入ったチェックボタンをONにして感心。(下図)

htmlfunciton.png

図1 化合物がハイライトされる機能

一目瞭然、文中の化合物がハイライトされるのです。この機能はPDFでは利用できません。この機能、特に実験項を読む際には便利だと思うのですが(実際、私はよく化合物名だけマーカーでハイライトします)、ACSやWiley等のジャーナルでもこの機能を追加してくれたら良いな、と思うのは私だけでしょうか?

 

特に小さいスクリーンで読むならHTML?

大雑把に言ってしまえば、HTMLは今そのページを開いているデバイスによってレイアウトが最適化される(見難いこともありますが)一方、PDFはどんなデバイスで開いてもいつも同じレイアウトで表示されます。つまり、HTMLでは「文字の大きさ、改行位置が可変」なので小さいスクリーンでは小さいスクリーンなりに表示することができますが、PDFではこれらは変えられません

 

iphonehtml.jpg      iphonepdf.jpg

図2 iPhoneで論文を読んでみる

上図は左がHTML,右がPDF。HTMLでは改行位置が画面サイズに応じて変わっているのに対し、PDFは変化なし。また、HTMLではまっすぐ下へ降りれば続きが読める一方、PDFでは左段下部まで来たら右上までスクロールしなくてはいけません。文章を読みながら対応する図をあっちこっち探しまわるのは案外面倒臭いものです。また、HTMLでは本文中の引用文献番号からハイパーリンクが貼ってあったり、文末の引用文献リストからは該当ペーパーのページだけでなく多彩なリンク先(WileyのジャーナルではWeb of Knowledgeの該当ページへも飛べる)へも飛ぶことができます。これは(インターネットに接続された機器の)スクリーンで読んでいるからこそ利用できる機能です。

 

大きなスクリーンで読む、あるいはローカルに保存するのであればPDF

一方PDFにも当然利点はあります。文字や画像のレイアウトが変わらない、これはそもそもそういう風に作られたフォーマットで、紙のように書類を扱えるわけです。慣れ親しんだ見た目というものも、快適さを考えると決して侮れない要素だと私は思います。また、PDFにも機能はいろいろある中で、先述したように書き込みやハイライトが出来、それを保存できること、そしてレビューのような長いペーパーを読む際に重宝する「サムネイルやアウトラインを選択することによるスキップ機能」があります。

 

紙は消えるのか!?

ここまで煽っておいて何ですが、私はやっぱり紙の方が読みやすいと感じます。圧倒的に。紙は手にもって好きな体勢で読むことができます。体勢だけならiPadやKindleがこれを解決してくれましたが、紙に比べると画面が小さい。しかし大きな画面は重たくて自由な体勢で読むことができない。というわけでズバリ、折りたたみ可能な大画面タブレット(折り曲げが可能なら尚良し)が普及した時、紙を手放すことになるのかもしれませんね。

 

今まで問答無用でPDF派だった方も、ぜひHTMLを試してみてはいかがでしょうか。これからも各社、各協会、より機能が充実していく…かもしれません。

 

Avatar photo

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 酸で活性化された超原子価ヨウ素
  2. ここまでできる!?「DNA折り紙」の最先端 ③ ~立体を作ろう!…
  3. 技術セミナー参加体験談(Web開催)
  4. ベンゼン一つで緑色発光分子をつくる
  5. セルロースナノファイバーの真価
  6. ADC薬基礎編: 着想の歴史的背景と小分子薬・抗体薬との比較
  7. レジオネラ菌のはなし ~水回りにはご注意を~
  8. 有機合成化学協会誌2020年1月号:ドルテグラビルナトリウム・次…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 自動車排ガス浄化触媒って何?
  2. トリフルオロメタンスルホン酸すず(II) : Tin(II) Trifluoromethanesulfonate
  3. 第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!
  4. 「架橋ナノゲル」を応用したがんワクチンDDS
  5. 第20回 超分子から高分子へアプローチする ― Stuart Rowan教授
  6. 書籍「腐食抑制剤の基礎と応用」
  7. 「オープンソース・ラボウェア」が変える科学の未来
  8. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎
  9. 酸化反応を駆使した(-)-deoxoapodineの世界最短合成
  10. なぜ青色LEDがノーベル賞なのか?ー雑記編

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP