[スポンサーリンク]

一般的な話題

書物から学ぶ有機化学 3

[スポンサーリンク]

Book.gif

 もう7月ですね。どうりで暑いわけです。熱中症には気をつけましょう。

 

さて、「書物から学ぶ有機化学」の3回目を書かせていただきます。あらかじめ言い訳させていただきますが、「書物から有機化学を学ぶ」のがテーマです。必ずしも有機化学の本を紹介しません。

化学の教科書等は、Chem Stationの「化学の本棚」で紹介されていますので参考にしてみてください。

 Book3-1.gif

緋色の研究」 コナン・ドイル

 

推理小説です。推理小説は化学の宝庫。化学は犯罪者に利用されることも数多くありますが、犯罪捜査にも役立ちます。

主人公シャーロック・ホームズは、自身の化学研究室を持っているほど化学研究に熱心な人物なようです。

「発見したよ。とうとう発見したよ!」

ホームズは一本のピペットを手に、走り出てきながら叫んだ。

「血色素では沈澱するけれど、血色素以外のものでは絶対に沈殿しない試薬を発見したよ。」

たとえ金鉱を発見したって、これほど嬉しそうな顔はできなかろう。

文章中で、既存の血液検出法として「グアヤック・チンキ試験」という名前が挙げられています。

グアヤック試験というのは実際に存在する試験で、グアヤック、過酸化水素、血液の3つが化学反応を起こして発色することを利用した試験です。すなわち、血色素のペルオキシダーゼ様作用により過酸化水素から活性酸素が生じ、グアヤックが酸化されます。グアヤックは酸化によって色が変化するため、色の変化を観察することで血液が含まれているかどうか判断できるというわけです。便潜血の検査に用いられるようですが、犯罪捜査に利用されているのかどうかは私にはわかりません。

 

テレビドラマなどでは、警察は血痕を探すためにルミノール反応を利用します(現実世界で利用されている方法なのかどうかはわかりません)。

ここでも、過酸化水素を用いて、ルミノールが酸化されるかどうかで、血液が含まれているかどうか判断します。ルミノールが酸化されて生じるのは、3-アミノフタル酸の励起一重項状態で、これは発光するため、ルミノールが酸化されたかどうかわかります。

Book3-2.gif

 

なお、今回紹介した血液検出法は、ペルオキシダーゼ様の触媒作用に着目したもので、同様の作用を持っていれば血液でなくても同様の反応が観測されるということを補足しておきます。

 

今回もかなりまとまりのない話になってしまいましたが、少し本を広げてみると、意外なところに面白い化学が詰まっているような気がします。

Avatar photo

らぱ

投稿者の記事一覧

現在、博士課程にて有機合成化学を学んでいます。 特に、生体分子を模倣した超分子化合物に興味があります。よろしくお願いします。

関連記事

  1. タウリン捕まえた!カゴの中の鳥にパイ電子雲がタッチ
  2. MOFを用いることでポリアセンの合成に成功!
  3. NMR化学シフト予測機能も!化学徒の便利モバイルアプリ
  4. 化学素人の化学読本
  5. ウランガラス
  6. アメリカで Ph.D. を取る –エッセイを書くの巻– (後編)…
  7. スタニルリチウム調製の新手法
  8. 構造式から選ぶ花粉症のOTC医薬品

注目情報

ピックアップ記事

  1. 遷移金属の不斉触媒作用を強化するキラルカウンターイオン法
  2. 高選択的なアルカンC–H酸化触媒の開発
  3. 硫黄化合物で新めっき 岩手大工学部
  4. 分子形状初期化法「T・レックス」の実現~いつでもどこでも誰でも狙った場所だけ狙ったタイミングで~
  5. Reaxys体験レポート反応検索編
  6. 沖縄科学技術大学院大学(OIST) 教員公募
  7. 服用で意識不明6件、抗生剤に厚労省が注意呼びかけ
  8. ホウ素アート錯体の1,2-メタレート転位 1,2-Metallate Rearrangement
  9. ライトケミカル工業2025卒採用情報
  10. 3-ベンジル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムクロリド / 3-Benzyl-5-(2-hydroxyethyl)-4-methylthiazolium Chloride

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年7月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

新発想の分子モーター ―分子機械の新たなパラダイム―

第646回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機反応論研究室 助教の …

大人気の超純水製造装置を組み立ててみた

化学・生物系の研究室に欠かせない超純水装置。その中でも最も知名度が高いのは、やはりメルクの Mill…

Carl Boschの人生 その11

Tshozoです。間が空きましたが前回の続きです。時系列が前後しますが窒素固定の開発を始めたころ、B…

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

一塩基違いの DNA の迅速な単離: 対照実験がどのように Nature への出版につながったか

第645回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科相田研究室の龚浩 (Gong Hao…

アキラル色素分子にキラル光学特性を付与するミセルを開発

第644回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 総合研究院 応用化学系 化学生命科学研究所 吉沢…

有機合成化学協会誌2025年2月号:C–H結合変換反応・脱炭酸・ベンゾジアゼピン系医薬品・ベンザイン・超分子ポリマー

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年2月号がオンライン公開されています。…

草津温泉の強酸性硫黄泉で痺れてきました【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい!  というわけで、硫黄系の温泉であり、日本でも最大の自然温泉湧出量を誇る草津温泉…

ディストニックラジカルによる多様なアンモニウム塩の合成法

第643回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の木之下 拓海(きのした …

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP