僕はブラウザを閉じて、局所排気装置(ドラフト)に向かった。
ドラフトのガラス戸を持ち上げ、反応を行なっているフラスコのガラス栓を外す。ガラス製のキャピラリーを反応溶液にちょんと浸け、ほんの少しだけ中身を吸い取る。急いで実験台に戻り、薄層クロマトグラフィー(TLC)用のガラス板に、反応溶液をスポットする….
??となっている読者様が大半だと思います。
有機化学者特に合成化学者にとって、”日常の行為”であるこの文章は上記の「ラブ・ケミストリー」という本の中から引用しました。そう、実はこの本、明日発売される
「有機化学者による有機化学者のラブストーリー小説」
なのです!!有機合成化学者必見!!
え?これって?本当?メジャー?
実は、作者の喜多 喜久さんは東京大学薬学部薬学研究科修士課程修了で現在大手製薬会社の研究員として勤務しています。てゆうか同い年だし(笑)。
それはよいとして、そんな作者も東大で有機合成化学者の卵として天然物合成を行っていたようで、それを元に
有機化学者のラブコメミステリー
を書いてしまったようです。
なんじゃそりゃ?どうせ自費出版?奇特な出版社もあるもんだと思っているそこの諸君。
驚くなかれ、
この作品、第9回「このミステリーがすごい!」大賞(宝島社)優秀賞作品なのです。
このミスって何?
まだ、ピンと来られない方のためにまずは「このミステリーがすごい!」(略して「このミス」)という今回の”大賞”と関連するランキングについて解説します。「秘密」「容疑者Xの献身」や「白夜行」などで有名な東野圭吾はご存知ですよね。彼はこのランキングの常連です。その他にも「模倣犯」や「ホワイトアウト」「新宿鮫」「不夜城」などなど多数の作品がが皆さんご存知の映画として公開されている、超有名なランキングなんです。今回の「このミステリーがすごい!」大賞(略して「このミス大賞」)はそれとはちょっと違って、同じ宝島社が主に、2002年から新人作家中心に作品を募集した賞で、今回で第9回。いわゆる「新人賞」ですね。とはいっても、「チーム・バチスタの栄光」や「四日間の奇蹟」など映画化、ドラマ化されているものもあり、とっても有名な賞なのです。
テンション上がってきましたか?そんなメジャーな賞を受賞したこの書籍の主人公、天才大学院生藤村圭一郎が全合成研究を行っている化合物が…. これ↓↓
合成化学界の「フェルマーの最終定理」
50年以上合成がされておらず合成化学界の「フェルマーの最終定理」と呼ばれるまでになっているこのプランクスタリンが随所にでてきます。
いやいや、完全に有機化学だし。
その他にも逆合成、ウッドワード、NMRなどの専門の人からしなければわからない言葉や、ニコライや神崎先生などなにかを連想させるような仮想人物まで登場!これ以上話してしまうとネタバレして怒られそうなのでこの程度にしておきます。
あとはこの化合物といい、結構筆者が共感することが多くあり、なんだかそれだけで興奮してしまいました。
あ、肝心のラブ・ストーリーはというと…ぜひ読んでみてください!!!!もう一度いいますが、有機合成化学者必見!化学全体でこの本盛り上げていきましょう。ついでに腕のたつ合成化学者の皆様この化合物を合成ターゲットにしてみてはいかがでしょうか。
発売日は3月4日です!!!