油を作り出す不思議な藻類、オーランチオキトリウム
どうも、センター試験で大恥をかいたPDのどくたけです。たまにはネタ記事ではなくて、まじめな科学ニュースをお伝えしようと思います。ちょっと古いニュースになるかもしれませんが、昨年暮れに、効率よく油を作り出す藻類が、筑波大学の彼谷邦光特任教授、渡邉信教授らのグループによって発見されました。
冒頭の写真は、オーランチオキトリウムが重油に相当する炭化水素(本記事内では分かりやすく石油と称することにします。)を作り出しているところの写真です。これまで、ボツリオコッカス・ブラウニーなどの藻類が、わずかに石油を生産する能力があることは知られていましたが、今回新たに見つかった株は、その10-12倍の石油生産能力があるそうです。また、石油の回収や処理を含む生産コストは、1Lあたり800円程度かかるのが難点だったようですが、オーランチオキトリウムはその10分の1以下のコストで生産できるとも言われています。(出典:生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見)
このニュースは新聞でも取り上げられました
渡邉、彼谷両教授によれば、深さ1mのプールでこの株を培養すれば、面積1 haあたり、年間約1万トンの石油を作り出すことが可能になるそう。国内の耕作放棄地などをうまく利用して、石油生産施設を約2万haにすれば、日本の年間石油輸入量(約2億トン)に匹敵する生産量になります。現在日本には、約40万haの休耕田があるそうなので、その20分の1を使うだけで、日本の年間石油消費量を賄えることになりますね。ちなみに、世界最大の石油生産国であるロシアは、年間約5億トン、ついで世界第二位のサウジアラビアが約4.6億トンもの石油を生産しています。年間消費量の大部分を輸入に頼る日本にとって、このニュースはとても価値あるものではないでしょうか?
さて、合成屋さんが日々実験に使用する基質や溶媒の中には、遥か遠くの国から船便で届けられるものも幾つかあります。石油資源の枯渇が進めば、原料費、燃料費は高騰することは必須。試薬メーカーのカタログを見て、「なんだ、やっすいじゃん。買え買え!」なんて、気軽に口に出せなくなる日が来るかも分かりません。今でこそ試算ですが、研究が進めば、株の改良によって石油の生産量も増えるかもしれませんし、生産コストを下げる技術が生まれるかもしれません。将来、日本が産油国の仲間入りを果たすのも夢ではないかもしれませんね。
ヘキサンがなくてカラムができないかもしれない現場(笑)から、どくたけがお送りしました!
関連リンク
- 石油産出量の出典:BP「Statistical Review of World Energy 2010」