[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

PACIFICHEM2010に参加してきました!③

[スポンサーリンク]

 

写真はハワイのワイキキビーチ。筆者は行ってません(涙)

読者の皆様。あけましておめでとうございます。2011年も宜しくお願い致します。
さて、前回前々回に続き、大好評の(?)どくたけによるPACIFICHEM2010の体験記です。そろそろ飽きてきたよ(苦笑)と思われる読者の方々もおられるかと思いますが、もうしばらくおつきあいくださいm(_ _)m

12/17日もハワイは快晴。きっとビーチは美しかったことでしょう(泣)
さて、この日のお目当てのセッションは”Asymmetric Orgnocatalysis”です。本セッションには、高名な日本人研究者の方がたくさんおられました。ニトロキシルラジカル型の酸化触媒、AZADOの開発で有名な岩渕好治先生、有機触媒の分野の注目の大井貴史先生、超原子価ヨウ素試薬を用いた反応で著名な北泰行先生、シカゴ大の山本尚先生です。
中でも今回は、北泰行先生のご講演について振り返ってみたいと思います。

北先生のご講演の内容は、主に超原子価ヨウ素試薬との出会いを踏まえて、その研究の経緯と現在立命館大で取り組まれておられる研究についてでした。(超原子価ヨウ素試薬を用いた反応については、ケムステの過去記事でも取り上げられたことがあるかと思いますので、そちらも併せてご参照ください。)近年では、この超原子価ヨウ素試薬を用いることで、遷移金属触媒を用いないカップリング反応等も新たに報告されています。
私事ですが、主に複素環骨格に対する反応開発が近年の主な研究テーマであった筆者にとっては、K. Fagnouらの報告(Sceince, 2007, 316, 1172 DOI:10.1126/science.1141956; ケムステ関連記事:アレーン類の直接的クロスカップリング)や北先生の報告(JACS, 2009, 131, 1668 DOI:10.1021/ja808940n )は非常にexcitingでした。中でも北先生のご報告は、ハロゲン化などの予備的官能基化を必要とせず、しかも遷移金属を必要としない反応ということで、有機合成化学的な興味・関心のみならず、環境科学的な視点からも非常に有用な反応であると言えるのではないかと思います。北先生らは、この反応の発見に端を発し、予備的官能基化を必要としない、ヘテロ芳香族化合物の直接的なカップリング反応を開発されています。本反応を用いることで、これまで達成が困難とされてきたチオフェン-ピロールクロスカップリング化合物の合成に成功されています。

 

hetArcoupling.jpg
本反応は、長瀬産業株式会社との共同研究によって導電性ポリマーとしての実用化を検討されているそうです。

北先生だけでなく、岩渕先生、大井先生、山本先生らに関しても、三者三様の独自のchemistryについて、緻密に、情熱的に、先駆的に研究が進められていると感じられました。筆者が考えるに、反応の力量とはこれすなわち、どれだけたくさんの人たちに自前の反応を使ってもらえるのか、ということではないかと思います。(反応に用いる試薬や条件が特殊ではなく)一般的であること、汎用性の高い反応であること、そしてやはり、簡便であること、これに尽きます。上記の先生方は、自らの基礎的な知見を磨かれ、高度なchemistryへとそれらを昇華されてこられました。筆者も、いつかは自分のchemistryが広く万人に用いられるような汎用性の高い反応になるよう、精進したいと改めて思いました。

どくたけはこの日、午後は別件で有機の会場にはあまりいられませんでしたが、この日は、Asymmetric Organocatalysisのみならず、Cooperative Catalysisと銘打った特別セッションが行われていました。筆者も聴講の合間を縫って何とか会場にいこうと思っていたのですが、例えばB.M.Trost先生などのご講演は会場から聴講者が溢れて立ち見が出る状況でした。しかも溢れた聴講者が廊下にはみ出して通行を妨げる始末。加えてVy.M.Dong(関連記事はこちら)、袖岡幹子先生、K.C.Nicolaou先生など、超豪華な講師陣がずら?っと名を連ねていて、聞きたい講演が目白押し!会場を行ったり来たりしていた筆者は十分には拝聴できませんでしたヽ(`Д’)ノウワァァァァン

 

さ?て、今回の記事はこの辺でおしまいです。どくたけによるPACIFICHEM体験記も残すところあと2回となりました。次回は、皆さんもよくご存知のJ.Y.氏が登場するかも知れません!煽るだけ煽っておいて登場するかは未定です(苦笑)

それでは、次回の記事にも乞うご期待ですm(_ _)mまだまだ続きます!!

 

Avatar photo

どくたけ

投稿者の記事一覧

HNのどくたけはdoctor Kの略語です。 chem stationを通して、化学の素晴らしさ面白さ等を 伝えていけたらいいなと思います。 宜しくお願いいたします。

関連記事

  1. 光で2-AGの量を制御する
  2. 元素のふしぎ展に行ってきました
  3. 暑いほどエコな太陽熱冷房
  4. あなたはどっち? 絶対立体配置
  5. 化学でもフェルミ推定
  6. 未踏の構造に魅せられて―ゲルセモキソニンの全合成
  7. 海外留学ってどうなんだろう? ~きっかけ編~
  8. 日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン P…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 東京化成工業より 春の学会年会に参加予定だったケムステ読者の皆様へ
  2. 第8回平田メモリアルレクチャー
  3. ラジカルの安定性を越えろ! ジルコノセン/可視光レドックス触媒を利用したエポキシドの開環反応
  4. ロジウム(II)アセタート (ダイマー):Rhodium(II) Acetate Dimer
  5. 大日本製薬と住友製薬が来年10月合併・国内6位に
  6. 三共と第一製薬が正式に合併契約締結
  7. チエナマイシン /thienamycin
  8. オルガネラ選択的な薬物送達法:②小胞体・ゴルジ体・エンドソーム・リソソームへの送達
  9. Carl Boschの人生 その2
  10. 熱を効率的に光に変換するデバイスを研究者が開発、太陽光発電の効率上昇に役立つ可能性

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年1月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

フッ素が実現する高効率なレアメタルフリー水電解酸素生成触媒

第638回のスポットライトリサーチは、東京工業大学(現 東京科学大学) 理学院化学系 (前田研究室)…

【四国化成ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)

◆求める人財像:『使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財』私たちが社員に求めるのは、「独創力」…

マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーとして注目されている、電子レンジでおなじみの”マイクロ…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

アザボリンはニ度異性化するっ!

1,2-アザボリンの光異性化により、ホウ素・窒素原子を含むベンズバレンの合成が達成された。本異性化は…

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

ケムステイブニングミキサー2025に参加しよう!

化学の研究者が1年に一度、一斉に集まる日本化学会春季年会。第105回となる今年は、3月26日(水…

有機合成化学協会誌2025年1月号:完全キャップ化メッセンジャーRNA・COVID-19経口治療薬・発光機能分子・感圧化学センサー・キュバンScaffold Editing

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年1月号がオンライン公開されています。…

配位子が酸化??触媒サイクルに参加!!

C(sp3)–Hヒドロキシ化に効果的に働く、ヘテロレプティックなルテニウム(II)触媒が報告された。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー