大学の授業で習う有機化学のあんなことやこんなこと。
分子軌道やDiels-Alder反応生成物の立体化学、アキシャルアタック。今でも説明できますか?
研究が専門的になるにつれて、徐々に専門外の分野の知識は忘れていってしまうもの。また、専門分野であってもあまり使わない知識は曖昧になっているかもしれません。
今回は大学院の有機化学の授業でおそらく習うであろう「アノマー効果」について取り上げてみたいと思います。
2位に電気陰性置換基Xを有するテトラヒドロピラン化合物は、その2位の置換基Xがアキシャル型となる立体配座が熱化学的に安定となります。この効果はアノマー効果と呼ばれています。
この効果は以下の2通りの説明がなされます。
A 酸素原子上の孤立電子対が、C-X結合の反結合性軌道に超共役して非局在化され安定化されるという説明。
B 双極子反発が小さくなるために安定化されるという説明。
Aの説明の方がよく使われているでしょうか。少なくとも私はAの説明で習った気がします。しかしながら最近では、計算化学によりBの説明の方が適切なのではないかという報告もなされております。
一つ一つの現象を解明するのも化学の面白さの一つ。大学の授業のノートをもう一度引っ張り出してみると、新しいアイディアが湧いてくるかもしれませんね。