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文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり : ① 「ほんとスタンド」 の巻

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実験化学者ならば、「ベンチに向かってひたすら手を動かすことが至上」と考えて止まない人も多いかもしれません。「実験しないと何もはじまらない」というのは確かに真理です。しかし一方で研究というのは知的労働でもあるのです。

筆者は、デスクワークを実験と同じぐらい重要視しています。
「人海戦術で何とかできないようなインパクトあるテーマ設定をしたいなら、勉強して戦略を立てないといけない。行き当たりばったりでは探索範囲が広すぎて、当たりを引くのなんてまず無理だろ」と考えるためです。
思考過程では、文章書いたり論文読んだりPC眺めたり、なんてことを実にたくさん行います。デスクに向かっている時間は意外にも短くありません。

こうなってくると「デスク周りを快適にしたい!」という欲求が芽生えて来ます。これは自然な成り行きだと、少なくとも筆者には思われます。

文具カタログやオフィス用品のレビューをいろいろ眺めていると、この世界も日進月歩であることがわかります。10年前にはとても無かった「これは凄い!」と思える逸品も少なくありません。

本シリーズでは、「こんなちょっとしたもので意外なほどデスクワークが便利になる!」と筆者が感じた、優れたオフィス用品・文具類をレビューしてみたいと思います。

化学者に限らず、広く「知的労働者」に役立つものとなれば幸いです。

モノ書き必見:書見台の逸品「ほんとスタンド」

研究職の生態は、多くの人にとって想像が及ばないところでしょう。「狭い空間にこもってずっとなんかよく解らんコトをしてる」というイメージでしょうか(笑)。もちろんそんなコトばかりではありません。

意外に思われるかも知れませんが研究職は、文章を書く機会がとても多い職種のひとつです。

アカデミックの研究者ならそれなりの地位になると、論文や研究費申請、解説文、寄稿文などで、文章を日常的に書く必要に迫られます。筆者のようなペーペーだとそこまで忙しくありませんが、こんなブログを更新してたりなんかもするので、文章を書く時間自体はやはり普通の人より多くなるようです。

しかし手元で文献や専門書を参照しつつキーボードを打つのは、なかなか難しい。
デスクにおかれた文献は真上を向いてるので、文字を読むには机上に顔を乗り出さなくてはいけない。無理な姿勢になりがちで、疲れます。さらに眺めている間、タイピングがどうしても中断してしまいます。何より、ただでさえ狭いデスクスペースが書類で埋まってしまうので、狭いのが大嫌いな筆者には、ストレスそのものでした。

そういう数多の問題を解決してくれたのがこの書見台―要するに書籍専用のスタンドです。

今回紹介したいのはエジソン社の「ほんとスタンド」という製品です。

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携帯用書見台「ほんたった」にクランプ式のデスク固定用スタンドがセットになった製品です。向きが自然なので、パソコンの画面と見比べつつ、椅子にもたれたままでタイピングできます。本来何も無いはずの空中スペースを有効活用でき、デスクが塞がらないのも最高です。

SとWの二種類があり、Wバージョンは可動域が広く、より柔軟な固定が可能になっています。寝ながら本を読むことも出来るそうです。読書家にはたまりませんね!

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(画像:エジソン社公式ページより)

筆者はSバージョンを買いましたが、これは「買って良かった!!!」と心底思えた逸品です。

ヘヴィな本を使いたい人にもおすすめ

筆者は専門書を広げる機会が少なくありません。「どこまで大きな本が使えるのか?」ということだけ入手直後まで不明で、気になった点でした。
そこで有機人名反応のバイブル「Strategic Applications of Named Reactions in Organic Synthesis」を試しに乗せて広げてみました。当該本をお持ちでない方に一応説明しておくと、これは750ページの専門書で、荷重2kg強、開くとだいたいW50cm×H30cmにもなる、かなりの大物書籍です。
chem_stationary_5.jpg
さすがにこれは商品の想定加重限界を超えてるだろ・・・と思っていましたが、実際乗せてみると、意外にしっかりと固定されます。取り付ける時に若干グラグラし、プラスチックがもげそうで怖かったですが、しかし値段相応の強度があって至極ちゃんとしている、という印象です。無理に激しく揺らしたりしなければ、これほどのへヴィ本でも問題なく使える感じです。なんともすばらしい!

さらにこれ、iPadとコンボさせて、大変能率的な使い方をしてる方までいらっしゃいます。とても優れたアイデアなので、将来電子書籍を買ったときにはぜひ実行してみたいですね。

簡易版データホルダー

「書籍は別に固定しなくて良い、数枚の書類が邪魔にならず参照できればそれでよい」という人なら、データホルダーでもよいでしょう。翻訳家やプログラマー御用達のアイテムですが、もちろん研究者にも役立ちます。
筆者はデスクを占有したくないので、アーム式を愛用しています。こちらは値段もお手頃です。もっと安価な1000円程度のものも売られています(ただ、作りは若干チャチくなる感じですが)。

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日本には「文具に凝れるインフラ」が整っている!

筆者はアメリカに2年ほどいたのですが、少なからず不満だったのが他でもない文具類でした。 使用に十分なものはもちろん揃えられますが、何と言うかどうにも「無骨」なものが多い。よく言えば大量消費向きの合理的形状であって、悪く言えば細かい点までは作りこまれていない。「どういうわけか、どことなく使いにくいなぁ・・・」と感じることも少なくありませんでした。

その一方で日本には、優れた文具類が実にバリエーション豊富に存在しています。
デザインも美しく、細かいところまで凝りに凝ったものが沢山あります。使っていて実に楽しく、仕事をとても快適にしてくれます。実用性以上の機能美を追求する、日本人ならではの凝り性と繊細さと遊び心が、如実に現れるプロダクトといえるでしょう。

かつて筆者は、パソコンの内部環境についていろいろ工夫を凝らしてきました(その過程の蓄積が数多のケムステ記事に反映されています)。しかしもっとアナログな位置づけたる「文具・オフィス用品」については、そこまでの充実度を実現できていませんでした。理由は簡単で、お金がなくて欲しい物が買えなかったからです。

しかし筆者自身、こういった「凝った文具」というものが昔から大好きなのです。地元のちょっとシャレた大きな文具屋さんに入りびたり、ウィンドウショッピングを楽しむなど、高校時代はよくしていたものです。

今は給料取りの身分になったので、お金が比較的自由に使えるようになりました。そんなこともあって、「イケてる文具・オフィス用品」の探索意欲が再燃し、それに再び凝りはじめています。

文具一つ一つは本当に些細に見えますが、使ってみると「良いものは明らかに良い」とすぐわかります。チリも積もれば山となる。少しずつ買い揃えて快適にしていくのは、本当に気持ちが良い。

秘蔵っ子たる便利文具たちを、筆者は他にも持ってます。今後とも不定期連載的に紹介してみようと思いますので、ご期待下さい!

関連書籍

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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