小さいころに遊ばれた方も多いと思います、レゴ。
レゴ街シリーズなんて見てるだけでもワクワクしますし、公式サイトでの多数の作品、芸術といっても過言ではない作品、戦艦大和なども作られています。
レゴと同じように、ビルディングブロックを組み合わせ、必要なだけ繰り返し、創造性を最大限に発揮して自在に分子を合成する-そのようなアプローチを目指したパデュー大学根岸先生がレビューされています。(J. Org. Chem. 2010, 75, 3151-3182.DOI: 10.1021/jo1003218)
フラグメントを連結させるレゴゲームアプローチというコンセプトもすごいですが、置換オレフィンの位置選択的な合成にクロスカップリング、ポリエン・エンインの効率的な合成がレビューされた、根岸先生の研究の濃密な内容となっています。所々にどういった方向性を目指して研究を行ってきたかというコンセプトが散りばめられており、反応例や過去の仕事の総括だけではない面白さになっていますので、一部コンセプトを抜き出して紹介させて頂きます。
y(es)2 manner
有機合成の究極の目標として、
(a) in high Yeilds (高収率)
(b) Efficiently (高効率)
(c) Selectively preferably all in ≧98%-99%(高選択的)
(d) Economically(経済的)
(e) Safely (安全)
を挙げられ、頭文字をとってy(es)2手法を提唱されています。合成の第一の目標がファーストから、ultimately satisfactory or “the last synthesis”にシフトという文章が印象に残りました。
supercarbenoidal
遷移金属元素がカルベン類似の反応性を示す一方で、熱的な安定性・TONの高さなどから、supercarbenoidalという呼称をしているとのこと。遷移金属と低原子価元素の類似に関して、最近注目のテーマになっていますが、遷移金属をカルベンと反応性類似を見ていたとのこと。逆もまた真なりとは言え、そのような見方は言われるまで凡人の筆者には思い当たりませんでした。最近ではなく、安定カルベンが出始めたときから、その性質に着目していたとしたら、人名反応になるほどの伝説的な先生はやはり一線を画していると思います。
クロスカップリングになぜPdが適しているのか?
筆者が覚えているだけですが、鈴木章先生、Hartwigの講演で出ていた質問です。おそらくクロスカップリングに関する講演でしょっちゅう聞かれる質問なのではないでしょうか。Pdがどうして多様な反応に適しているのか?根岸先生はNiやPtとの比較で、還元的脱離のしやすさ、0→Ⅱの酸化状態の取りやすさ、反応性をあげて説明されていました。
反応の形式別のカテゴライズ
カテゴライズすることはかなり役立つことが多く、筆者の経験でもミニレビューを書く機会を大学院の先生から頂いた際に、カテゴライズする必要に迫られました。このケースはできていないとか、やられていないということが明らかになって役立ちますし、企業に入ってからは特許状況や、複数案件の進捗状況などカテゴリ分類する状況が多いです。根岸先生のテーブルはいろいろな切り口から作成されており、全体を通じ、ある手法では何が可能で、何ができないか?それぞれの優位点・欠点は何か?がカテゴライズ・比較されているところやネックになっている部分が明らかにされていて参考になりました。
全体を通じて、色々な発見のあるレビューで、人名反応になるほどの伝説的な先生はやはりスゴイと思わされます。