3月26日から29日まで、日本の化学で最大のイベントである日本化学会年会 が開催されます。もちろん何度も足を運んでいる方はご存知だと思いますが、関東、関東、関西と3年周期で行われ、今年は関西、近畿大学 で行われます。この学会は化学の発表をするというだけでなく、1年に一回多くの「同士」が集まるため交流をするという目的の方が強いと思われます。
さて、年会デビューの方、関西近辺がはじめての方、行くけれども全く調べていない方、それぞれいると思いますが、そんな年会ビギナーのあなたのために、年会を楽しむ10の方法 をお伝え致します。
iphoneなどをお持ちの方はEvernote を入れてWebクリップ等でこのページを持ち歩いていただけると便利だと思いますよ。
1.場所を確かよう
場所は正直言って不便なところも有りますが、焼き肉で有名な鶴橋が近く、なんばやJR大阪駅から30分以内、京都からも1時間ほどでいけるので、関西近辺の方は日帰りでアクセスすることができます。宿泊はもう決めている方がほとんどだと思いますが、飲みにいく事などをかんがえると近畿大学近辺ではなく、大阪に近い方がオススメです。
近畿大学 | アクセスマップ
〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1
TEL(06)6721-2332 FAX.(06)6721-2353
近鉄大阪線・長瀬駅下車、徒歩約10分 近鉄奈良線・八戸ノ里駅下車、徒歩約20分
2.帰りの切符を買う
ほとんどの方が近鉄鶴橋駅 を経由してアクセスすると思われます。余談ですが、鶴橋駅の焼肉の臭いはたまりませんね。時刻表によれば、だいたい10分間隔で電車は走っているようです。なお、各日終了後、お帰りの際には「必ず」切符販売機が込み合います。ICOCA やPiTaPa を持っている方は安心ですが、それ以外の方は到着後、必ず帰りの切符を買いましょう 。
電車に降りてから10分ほど歩きます。ここからの道のりは正直言って覚える必要は有りません。なぜなら、同じ格好をした、同じニオイする方々が一心不乱に同じ方向に向かって歩いているからです(笑) 。彼らについていきましょう。自動的に会場についているはずです。
3.年会で重要な場所を確認!
キャンパスに着いた後、重要な場所は以下の通りです。
1. 発表する場合自分の会場
2. 興味のある分野の会場
3. クローク
4. 印刷、試写会場
5. ポスター、展示会会場
6. 食堂、コンビニ
7. 喫煙場所
これらの場所は最初から決まっていますので、キャンパスマップ で確認しましょう。11月ホール というところがはじめの受付になっています。ここで受付をすれば、日本化学会のバックと資料、抽選券、コーヒー引換券などがもらえます。大きな荷物を持っている方は必ずクローク(20号館)に荷物を預けると思います。例年ですと200円前後で荷物を預ける事ができます。これも終了前には込み合いますので預けているひとは注意しましょう。 17号館と21号館にある印刷/LANコーナーや試写会場ではインターネットが出来たり、年会の予稿集を持っていない人がそれらを印刷することができます。さらに発表のスライドも確認できますよ。食堂、コンビニの場所も重要ですので確認しておきましょう。一部の人には喫煙場所も重要ですね。
4.お得な展示会会場!
キャンパス一番奥にある記念会館(P)ではポスター/付設展示会 が行われています。最終日以外は行われているようですが、なるべくはやめにいくことをオススメ します。ちなみにここで、受付でもらった抽選券をつかって抽選が出来たり、コーヒー引換券でコーヒーがもらえます。例年、多くの関連企業の展示会が行われていて、いろいろなプレゼントがいただけます。特製のペンや消しゴム、付箋紙、バックから始まり、時にはUSBメモリや、分子模型をもらえたりする時もあります。さらにNMRチューブや試薬検索CD、雑誌など研究に役立つ物ももらえます。早い者勝ちなときもあるのでお早めに(笑)。先生といくと対応がよく奮発してくれることもありますよ(と大学の教官がいってもいいのだろうか…)、化学関連の書籍も10%以上の割引で購入できます。特に英語の本などはここでしか現物を見れない物が多いのでぜひ確認してみてくださいね。
ちなみに余談ですが、アメリカでは”プレゼント”がないと誰も集まりません。ですので、食べ物でいえばドーナツ、アイスから始まり、中華丼までもらえるところがあります。一番びっくりしたのが、簡易真空ライン を配っていた企業がいました。文化の違いですね。
5.昼ご飯の場所を確かめる
お腹が減っては戦はできぬといえますが、研究室の皆と食べるもよし、久々にあった友達と
食べるもよしです。但し、食堂はかなり込み合いますのでまたご注意を。コンビニ等もキャンパス内にあるようですが、簡単なものはカバンに常備しておくとよいかもしれません。
学生食堂は食堂KUREと食堂Cafeteria Novemberとうところが有るようです。近場ではこちらをご覧ください。 近畿大学周辺の飲食店 学食でも関東の人は関西のうどんと味が違うので食べてみるとよいですね。
下記に記したのはGoogleマップで調べた近畿大学まわりの飲食店。ものすごく少なくはないですが、多くはありません。
6.プログラムの見方
もう10回ほど参加している年会ですが、意外に気にしていない物です(著者だけ?)。知り合いと話しているうちに過ぎてしまう事は数えきれません。特にはじめてのあなたに気をつけておいてほしいプログラム番号の見方を今一度確認しておきましょう(特別会場Sだけは別物です)。
特にいろいろな会場に行っている、休んでいる午後がわからなくなります。基本的には
番号/6 = 答え+9 時 (余-1)×10 分
ですぐに計算できます(わかりにくい…)。
例えば44番の発表でしたら、44/6=7 余2 ですので7+9=16時、(余-1)×10 =10分からです。
7.特別企画、学会賞講演、特別講演を聴く
さてそろそろ学会の内容を。とはいってもそれぞれ分野によって聞きたい講演、発表は異なるでしょう。ただし、特別企画や学会賞講演だけは分野間を超えて聴いておきたいものです。特に海外から来ている特別講演は、他で呼ばれてそのついでに日本化学会でも発表しているわけですが、なかなか聞けない講演も多いのでぜひどうぞ。
26日
13:00 1S6-01 金ナノ粒子の新しい触媒作用(首都大都市環境)春田 正毅
14:10 1S6-02 固液界面におけるナノ構造のその場決定と機能性物質相の構築(北大院理・NIMS MANA)魚崎 浩平
27日
10:00 2S6-01 金属内包フラーレンとナノピーポッドの創製と評価(名大院理・名大高等研究院)篠原 久典
11:10 2S6-02 協同現象を利用した新しい光機能材料の創出(東工大資源研)池田 富樹
28日
10:00 3 S6-01 電子的に新規なポルフィリノイドの開発と展開(京大院理)大須賀 篤弘
11:10 3S6-02 協奏機能分子触媒の開拓と応用(東工大院理工)碇屋 隆雄
26日
11:00 1F5-13 キラルブレンステッド酸を用いた不斉合成反応(学習院大理)秋山 隆彦
11:20 1F2-15 ヘテロ元素の特性を利用する精密ラジカル反応の開発(京大化研)山子 茂
27日
11:00 2C1-13 多彩な電子・水素相の創出と固体プロトニクス材料への展開(京大院理・九大院理)北川 宏
11:10 2G5-14 ハイブリッド系有機・高分子ナノ結晶の創製とその集積化高機能光材料への展開(東北大多元研)及川 英俊
11:20 2H6-15 多価イオンを伝導する新規固体電解質の創成に関する研究(阪大院工)今中 信人
28日
11:20 3B3-15 非天然補欠分子の合成を基盤とする機能性ヘムタンパク質の創製(阪大院工)林 高史
11:20 3E2-15 金クラスターの精密合成とサイズ特異的機能(北大触セ)佃 達哉
11;30 3C5-16 固液界面における少数原子・分子系の構造制御と機能化(北大院理)村越 敬
【オススメ特別講演・特別企画】
26日
10:10 1H9-08 Quantitative measurement of non-covalent interactions: The issues and implications(Indian Institute of Chemical Technology, India)G. Narahari Sastry
9:30~12:35 新薬創製のための化学的アプローチとその展望
13:00~17:30 天然物および生物有機化学に関する ナカニシシンポジウム 2010
13:30~17:15 超分子金属錯体 -超分子構造から機能への展開-
27日
11:00
2S2-01 β-Peptides from Chemistry to Biology(Organische Chemie / Eidgenossische Technische Hochschule, Switzerland)
Dieter Seebach
13:40
2C2-29 One step Synthesis of a Perchlorinated Cyclohexasilane from Trichlorosilane: A Route to New Materials for Flexible Electronics(North Dakota State Univ., USA)
Philip Boudjouk
13:30~17:00 天然有機化合物の全合成: 効率的分子構築のための新しい反応と戦略
13:50
2E5-30 Adjustable Molecular Capsules(The Scripps Research Institute, USA)
Dariush AJAMI
28日
11:00
3A3-13 Taxol: Synthesis and Metathesis(Univ. of Glasgow, Scotland)
Joelle Prunet
11:10
3F5-14 Designing Chiral Auxiliaries for Asymmetric Synthesis(The Univ. of Oxford, UK)
Stephen G. Davies
13:30~16:35 二酸化炭素固定化反応の新展開: 基礎科学からのアプローチ
29日
9:00~12:30 細胞生物学のケミカルバイオロジー
8. 進歩賞講演、若い世代の講演会を聴く
これからPI(研究責任者、研究室を持つこと)を持つ、進歩賞を受賞した化学者や、学位を得てから数年の活躍している若い化学者の講演を聴きたいのならば、進歩賞受賞講演や若い世代の講演会をきいてみてください。元気でやる気のある講演を聴いて、モチベーションがあがること間違い無しです。
26日
11:20 1C1-15 金属錯体ナノ空間内での高分子合成(京大院工)植村 卓史
13:40 1F6-29 炭素同位体キラル化合物による不斉誘導現象の発見と超高感度不斉認識(東理大総合研究機構)川崎 常臣
16:00 1E5-43 自己組織化による電子活性ナノ材料の創成(科学技術振興機構 ERATO-SORST)山本 洋平
27日
11:00 2G3-14 新規な機能・物性発現を指向した高周期典型元素π電子系化合物の創製(京大化研)笹森 貴裕
11:20 2C6-15 フラーレンへのアルキル基導入による超分子ソフトマテリアルの創出(物材機構・マックスプランク研コロイド界面・JSTさきがけ)中西 尚志
11:40 2F2-17 炭素-酸素、炭素またはケイ素結合の切断を経る触媒的置換反応の開発(阪大院工)鳶巣 守
28日
13:00 3A3-25 複雑な構造を有する海洋天然有機化合物の効率的全合成(東北大院生命科学)不破 春彦
13:10 3F6-26 進歩賞受賞講演 デザイン型アミン有機触媒を用いた高選択的合成手法の開発(京大院理)加納 太一
【若い世代の特別講演会】(一番わからないと思うので各研究者にリンクをつけました。)
26日
13:10
1F6-26 過酸化水素水を酸化剤に用いた不斉エポキシ化反応の開発(九大院理)
松本 和弘
13:30
1B2-28 窒素原子で架橋された多核金属錯体の合成と機能開発(東工大院理工)
桑田 繁樹
14:10
1F1-32 分子置換型環化付加反応による複素環新規合成法の開発(京大院工)
倉橋 拓也
14:50
1E6-36 超短パルスを用いた分子振動の瞬時周波数変化測定による反応遷移状態の直接観測(JSTさきがけ)
岩倉 いずみ
15:30
1E1-40 実用的に興味ある固気・固液界面プロセスの原子・分子レベル観察と機構解明(北大触セ)
高草木 達
16:20
1B4-45 放射光真空紫外円二色性による蛋白質の精密構造解析(広島大HiSOR)
松尾 光一
17:40
1C6-53 ポリイオンコンプレックスの精緻な構造・物性制御とその動的挙動の解明(東大院工)
岸村 顕広
17:40
1E5-53 機能性超分子ゲルを構築するトリスウレア化合物の開発(静岡大理)
山中 正道
27日
11:10
2D3-14 紫外線や放射線をトリガーとして機能発現する生体関連材料の開発(京大院工)
田邉 一仁
11:40
2D3-17 次世代のRNAテクノロジーを支える革新的核酸合成法の開発(東工大院生命理工)
大窪 章寛
11:40
2G3-17 典型元素間相互作用の構築に基づいて光で誘起される特性発現の制御(東大院理)
狩野 直和
12:40
2E6-23 構造の明確な巨大ポルフィリンアレイの構築(京大院理・JSTさきがけ)
荒谷 直樹
13:10
2E4-26 カーボンナノチューブの化学修飾による光機能化(京大院工)
梅山 有和
13:20
2G5-27 構造制御された有機高分子をテンプレートに用いる有機/無機複合体の開発(東大院工)
西村 達也
13:30
2G4-28 後期遷移金属錯体触媒による新しい高分子合成(東工大資源研)
竹内 大介
14:40
2E1-35 生きたままの細胞を観察するための赤外超解像顕微鏡の開発(東工大資源研)
酒井 誠
14:40
2F1-35 ボーダーライン金属触媒による炭素-炭素多重結合の官能基化(広島大院工)
米山 公啓
28日
10:20
3C5-09 構造規制された有機分子-金属界面におけるプラズモニックな光エネルギー利用(北大院理・NIMS-MANA)○
池田 勝佳 ・魚崎 浩平
10:40
3H1-11 結晶中における有機分子のペダル運動(東大院総合文化)
原田 潤
11:40
3E3-17 光反応をトリガーとする分子内・分子間での動きの変換と伝達(東北大多元研)
村岡 貴博
13:30
3E6-28 C3対称バッキーボウルの液相合成法の開発(分子研)
東林 修平
14:10
3A3-32 腫瘍細胞増殖阻害マクロライド ハテルマライドNA, Bの全合成と構造活性相関(筑波大院数理物質)
早川 一郎
14:10
3F2-32 新しい修飾手法による高活性均一系分子触媒の創製(京大院工)
藤原 哲晶
13:30
3G8-34 クリック型反応によるドナーアクセプター型共役高分子の合成(東工大グローバルエッジ)
道信 剛志
17:00
3C2-49 ルテニウム錯体上でのNO分子の動的挙動(長崎大院生産科学)
有川 康弘
29日
11:20 4G7-15 薬物送達システムへの応用を目的とした機能性デンドリマーの作製(阪府大ナノ科学材料セ)
児島 千恵
11:30 4E4-16 ナノ分子デバイスの創成(阪大産研・JST-さきがけ)
谷口 正輝
13:30 4A3-28 哺乳動物由来の神経毒に関する生物有機化学的研究(筑波大院数理物質)
北 将樹
9.終わったら….
だいたい18:00〜17:00ぐらいにお目当ての講演・発表は終わりますね。それが終わったらどうするのでしょう。そうです。ここからが本番の”交流会”ですね。研究室内で飲むのもよし、他の友達と飲むのもよし、年に一回の同じ化学を研究している仲間ですので楽しく語らいましょう。分野ごとに前日入りして、前日に若手の会やその他を行っているところもありますが、どこにいけばよいのでしょうか。
おそらく、鶴橋で焼肉を食べる、なんばや心斎橋付近まででて飲むという人がほとんどだと思われます。終電過ぎてタクシーでお帰りになる方も多いと思います。
タクシー料金シミュレーション などで料金を確認してもよいですが、まあ気にせず年に一回ですので楽しみましょう。ただし、次の日もありますのでお気をつけて。
10.ツイッターで楽しむ
年会に行けない方は残念ながら雰囲気を味わう事ができません。そんな人の為にツイッターでハッシュタグ
がありますので、そちらに日本化学会に参加しているツイッターユーザーの方がつぶやいてくれるでしょう(人頼み)。むしろ気になる方は期間中にこのハッシュタグをつけてつぶやいてみてはいかがでしょうか。
と、強引に日本化学会年会を楽しむ10の方法を記しましたが、特にいままで参加した事のない方々には非常に楽しみな1年に一度の「お祭」だと思います。何度もいいますが、若い方は研究している人に会えるいい機会ですので、積極的に質問してお知り合い、お友達になることをオススメします。発表中に聴けなければセッションが終わった後にアタックしてみるのも手ですよ。人とのつながりこそ変な意味ではなくて財産 ですから。
【追記】日本化学会からのメールによると、3月27日11:10から2010 TCR Lectureという講演会が17号館201教室で行われます。そこで、シカゴ大学の
山本尚 先生が講演されるそうなのでぜひ参加してみてください!
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