エーザイのスイス子会社「エーザイ・ファルマ・アーゲー」は、自社開発の新規抗癌剤「E7389」(一般名エリブリン)について、世界で初めてスイスで承認申請を行った。癌領域を強化するエーザイは、2009年度中に「E7839」の日欧米同時申請を目指しているが、難治性乳癌を対象に行われた第II相試験「211試験」のデータをもとに、世界に先駆けてスイスで申請することになった。 「E7389」は、癌細胞の分裂などに関与する微小管の伸長を阻害し、細胞周期を停止させる微小管伸長阻害剤。 スイスでの申請は、第II相試験「211試験」のデータをもとに行ったもので、今年度中には、難治性乳癌を対象に進行中の欧米第III相試験「305試験」、国内第II相試験「221試験」の結果を得て、日米欧同時申請を行う予定だ。 また、「E7839」の適応拡大を目指した第II相試験が、米国で非小細胞肺癌、前立腺癌、欧州で前立腺癌、肉腫を対象に行われている(引用:薬事日報)。
ついにエリブリン上市が近づいてきました。とはいっても読者の皆様はなんのことやらわからない人もいるかもしれません。エリブリンは一般名でコードネームはE7389であり、さらに言えば、ハリコンドリンBという化合物の右半分部位の構造を有しています。ここまで述べて、構造を見れば合成化学者はほとんど感づいているかもしれません。そうです、このエリプリンは名古屋大学名誉教授であり現慶応大学の
上村大輔教授が単離した巨大天然有機化合物由来の医薬品なのです(わからない人はごめんなさい)。この化合物が医薬品になることは、売上云々ではなく合成化学者にとって喜ばしい事です。
このお話は過去のケムステニュースで説明しています。(参照:エーザイ 巨大市場、抗ガン剤開発でライバルに先行)
天然からほんの微量しか得られないため、ハーバード大学の
岸義人教授とエーザイが共同研究をして効率的な合成法を開発しました。エーザイが臨床研究のためにその合成法を用いて大量合成していました。現在、ニュースにあるように日本と米国では抗がん剤としてフェーズIIのまっただ中です。これが上市されれば、これだけ複雑な化合物が完全不斉合成により医薬品として供給されることになります。また、天然物の単離、それをリード化合物とした医薬品の開発、全合成、医薬品と産学共同で進めた研究がサクセスストーリーとしてできあがるわけです。
最終結果はもう少しかかりそうですが、今後も見守っていきたいと考えています。