[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

Ph.D.化学者が今年のセンター試験(化学)を解いてみた

[スポンサーリンク]

 

先週末に行われました、センター試験。

筆者自身コレを受験したのはもう10年以上前のことなんで、高校化学かいやはや懐かしいなぁ、なんてことを思いながらニュースを見ておりました。

・・・ふと魔が差したのでしょう。この10年で自分の知識はどこまで違ったものになったんだろう、なーんてことを大人げなくも知りたくなってしまいました。

で、受験終了以来まったく意識の外にあったはずの、センター試験を解くという暴挙にでてしまうことに。さてさて・・・


時間を測って実際やってみたところ、見直し含めて40分で終了(制限時間60分)。
まぁ知識も増えてるハズだし、化学量変換なんて毎日嫌というほどやってる。スピード自体上がってるのは納得。うむ。でも計算は意外と大変だったけど。

で、解答速報を見ながら採点してみると・・・・ナニ!?83点・・・だと??

「わぁオマエ化学の専門家失格!」という声が真っ先に聞こえてきそうなのですが、いえいえ自分の専門は有機化学であって他分野の化学なんかではないのです、うんたらかんたら・・・と専門家たるものちゃんと逃げ道も用意できているのです、大丈夫大丈夫・・・でも有機化学で一つ間違ってるじゃないか!・・・うわぁこりゃもうすんませんすんませんとしか言いようがないぜ。

いやでも問題もアレなんですよちょっと言い訳聞いてくださいよそこの奥さん。

「2-プロパノールの構造異性体はそれを含めていくつあるか選べ」

みたいな問なんですよ。

現場レベルで有機化学に親しんでしまってると、官能基分類するクセがついてしまってて、もうこれは脊髄反射レベルで「1-プロパノールと2-プロパノールだろ!?」なんて思うわけですよ。

でも正解は3つで、エチルメチルエーテルもカウントしないといけないらしいと。

「マジで?ありえねぇ!」と思って構造異性体の定義をWikipediaで調べることまでしてしまいましたよ。うーむこの定義だと確かにそうなるのか・・・高校化学侮れない。っていうかエチルメチルエーテル試薬なんて見たことねぇよ!使える形で存在してんのかそんなもん!?

そして、”2-プロパノール”の部分にしても最初から明示されてるわけではなく、化合物の示性式と化学的性質から穴埋め推定してこなければいけないというシロモノ。それ以前の問が出来てないと後続問題は芋づる式にダメになるわけで・・・確かに解けるようには作られてますが、少々大変なんじゃないのですかこりは・・・予備校の分析でもやはり難問扱いだった模様。

あとこういう問題も。(東進解答速報のページより転載)

center_1.gif こんなの知らねぇ!ぶっちゃけ必要ない知識なんてもう忘れたよ!!金属元素分析にはICPEDXなんかを使うもんなんだよ現代では!確かに高校で習った記憶はあるけどさぁ・・・こんなだから化学は暗記モノでつまんねーとか言われちゃうんじゃねーのか・・・

・・・などと全く大人気ないことを0.5秒で思いましたが、出題されてしまったからには如何ともしがたいワケで。

「そんな理不尽に耐えてこそ、大学入学という栄光は勝ち取れる」ということなのでしょう。まぁ大学卒業したら、こんなのとは比べもようもない「人間社会の理不尽さ」が待っているんですけどね(笑)

今年のセンター化学は著しく難化したという話ですが、先端の現場にいる化学者でもこんな体たらくになるほどと思えば、納得いただけるでしょうか・・・それが受験問題の恐ろしさというものよ!・・・いやほんとヘタレですんません。

まぁ、ぶっちゃけマーク試験ってボクの肌には合わないんですよね!・・・くそぅ。

ちなみにほかの科目は怖くて手をつけてません・・・といいながらアイデンティティにまで関わる「化学」だけ解くのは自爆行為そのものですが。完璧に解けてもそれは当然なので良いこと無いし、解けなくてももっと良いこと無ぇ・・・

・・・まぁ今回の記事のネタになったから、そんで良しとしましょう。

こんなんでも化学の先端でナントカカントカやっていけてるんで、化学を志す若者の皆さんは、センターの点数なんて気にせず、安心して勉強続けてくださいね!(笑)

受験生の皆さんお疲れ様でした!

  • 関連リンク

センター試験解答速報 (東進ハイスクール)

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 化学に関係ある国旗を集めてみた
  2. 有機触媒によるトリフルオロボレート塩の不斉共役付加
  3. 陶磁器釉の構造入門-ケイ酸、アルカリ金属に注目-
  4. 有機合成化学協会誌2017年12月号:四ヨウ化チタン・高機能金属…
  5. JSRとはどんな会社?-1
  6. Amazonを上手く使って書籍代を節約する方法
  7. ノルゾアンタミンの全合成
  8. 化学者のためのエレクトロニクス講座~代表的な半導体素子編

注目情報

ピックアップ記事

  1. 私がケムステスタッフになったワケ(5)
  2. 第143回―「単分子エレクトロニクスと化学センサーの研究」Nongjian (NJ) Tao 教授
  3. 提唱から60年。温和な条件下で反芳香族イソフロリンの合成に成功
  4. 論文投稿・出版に役立つ! 10の記事
  5. メカノクロミズムの空間分解能の定量的測定に成功
  6. 企業の組織と各部署の役割
  7. 134回日本薬学会年会ケムステ付設展示会キャンペーン!
  8. ローゼンムント・フォンブラウン反応 Rosenmund-von Braun Reaction
  9. 安全性・耐久性・高活性を兼ね備えた次世代型スマート触媒の開発
  10. 開発者が語る試薬の使い方セミナー 2022 主催:同仁化学研究所

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー