For the Bright Future – Bulk Heterojunction Polymer Solar Cells with Power Conversion Efficiency of 7.4%
Liang, L.; Xu, Z.; Xia, J.; Tsai, S.-T.; Wu, Y.; Li, G.; Ray, C.; Yu, L. Adv. Matter. 2010, ASAP. doi:10.1002/adma.200903528
ものすごい題名ですが、論文の題名をほぼそのまま直訳したもので、著者等のものすごい自信が感じられます。
昨年12月にアメリカで行なわれていたMRSで発表された7.9%と同じ内容だと思われますが、これまで6%程度であった有機薄膜太陽電池の最高変換効率から、大幅に高くなっていて驚きです。
ポリマーの構造は以前から6%を越える電池性能を報告してきたPTBシリーズで、thieno[3,4-b]thiopheneがキノリド構造を安定化することで低バンドギャップポリマーとなっています。更にフッ素の導入によりHOMOを深くすることで高いVocを実現しています。
PTB7ではエステル部位とベンゾジチオフェン部位両方に枝分かれの側鎖を導入することで溶解性を高めています。またPTB7は枝分かれの側鎖を導入しているにも関わらずホール移動度が高く性能向上の条件を満たしています。
PTB7は550~750nmに強い吸収を持ち、PC71BM(フラーレンC70誘導体)と複合膜にすることで可視光全域に吸収を持つことになります。
電池性能は、オルトジクロロベンゼン(ODCB)を溶媒にPTB7/PC71BMを1:1.5の重量比でスピンコートした場合6.22%で、これに添加剤として溶媒に1,8-ジヨードオクタン(DIO)を3%混ぜることで曲率因子が向上し、7%を越える変換効率が達成されたようです。
7.4%の電池はクロロベンゼン(CB)とDIOを溶媒にスピンコートしたものでJsc=14.50mA/cm2, Voc=0.74V, FF=68.97%, PCE=7.40%と高い性能になっています。
CBだけ用いた場合、性能は良くありません。
DIOを加えたものとの比較として、膜のTEM像の観察を行なっています。DIOを加えない場合は100-200nmの大きなドメイン構造になっているのに対し、DIOを添加した場合はドメイン構造が観測されず、きれいなナノ構造ができていると考えられます。このため励起子発生から電荷分離、また電荷輸送が効率よく行なわれ、高い性能になったようです。
内部量子収率は420nm-660nmの範囲で90%を超えており、このポリマーの能力の高さを伺わせます。
これまで色素増感太陽電池では10%を越える変換効率が報告されてきていましたが、最近になり有機薄膜太陽電池も着実に高い性能が報告されるようになってきました。
このグループはアメリカのSolarmerという大学内ベンチャー企業であり、製品化に向けての開発を行なっているようです。
安価な太陽電池が普及しあたりまえに使われる世界も、そう遠くない未来かもしれません。