[スポンサーリンク]

一般的な話題

科学史上最悪のスキャンダル?! “Climategate”

[スポンサーリンク]

 

既に海外のメディアでは大きく取り上げられており、日本でも数々のサイトで取り上げられていることなのでご存知の方も多いかと思いますが、去る11月に起きた、「Climategate事件」についてのつぶやきです。(*筆者が尊敬する科学者H.M氏より情報提供・ご協力を得ての執筆です)

長いので先に簡単にまとめると、

・地球温暖化に関する大御所研究者のこれまでのデータとemail等が流出
・そのデータから、研究の不正・印象操作が発覚(地球温暖化はCO2が主要因ではない&そもそも温暖化してない?!)

とのこと。なんてこった。。

これまでのエコ運動はなんだったのでしょう??
京都議定書はなんの意味があったのでしょう?!

一体誰が得をし、誰が損をしてきた(いる)のか。

以下詳細です

地球温暖化研究の世界的権威Philip Jones教授(イギリスのEast Anglia大学・気象研究所(CRU)所長)の千通を越すe-mailや研究データ・プログラムが外部に漏れ、世界中のメディアに取り上げられています。 大問題に発展したのは、このリークされた情報が発端となって地球温暖化を巡る世界規模の不正が発覚したため。

その問題となっているメールの要点は以下の通り

・CRUが行った世界各地の気温観測の結果を多数の科学者で不正操作し、温暖化を演出した。
・40人以上の著名な科学者で学会誌の査読班を作り、主要ジャーナルを乗っ取り、温暖化を否定する論文を却下していた。
・イギリス気象庁やBBCを味方に付け、国連IPCCすらコントロールしていた。

とのこと。

CRUの観測結果は国連IPCCで地球温暖化を示す最も重要なデータとして採用されていますが、Jones教授のメールによると、
「Pennsylvania州立大学のMichel Mann教授がNatureに載せた論文で使ったトリックを使い、私は1961年以降の平均気温の温度低下を隠した」とのこと。

メディアの追及に対し、渦中のMann教授は、
トリックとはうまい方法という意味で、不正を行ったわけではない」と弁明していますが、
調査しようにもCRUの原データは消去されてしまった模様です。
データの消去自体、情報公開法への重大な違反ですが、流出したプログラムから彼らがどんな”トリック”を使ったのか知ることが出来ます。

 yrloc=[1400,findgen(19)*5.+1904] valadj=[0.,0.,0.,0.,0.,-0.1,-0.25,-0.3,0.,-0.1,0.3,0.8,1.2,1.7,2.5,2.6,2.6,2.6,2.6,2.6]*0.75

これはCRUの副所長(Keith Briffa教授)が20世紀の気温をグラフ化する際に使ったスクリプトの核心部分。 1行目で1904~94年を5年ずつに区切り、各区間の気温(実測値)に2行目の数字を加算しています。即ち1904~24年は加算なし、1929~49年は(温暖期なので)温度を引いて低く見せ、その後は徐々に気温を底上げし1979年以降は1.95度(2.6×0.75)も加算しています。これ以外にも不正は他にも次々と見つかっています。

またIPCCではCRUの「急激な温暖化」ばかり注目されていますが、氷床コアや衛星を使った測定では有意な温暖化は観測されておらず、特に二酸化炭素による温室効果の一番の証拠となる”10 km上空の温度上昇”は気球観測によって明確に否定されています。

さらにClimategateに留まらず、最近世界中で地球温暖化に関する不正が見つかり始めています。

 

rei1.jpgグラフ(上)はニュージーランド水圏大気研究所(NIWA)が発表していたもので[1]、20世紀に急激に温暖化していますが、別の科学者がデータを再調査したところCRUと同種の不正が見つかり、実際の気温変化はグラフ(下)だったとこが発覚 。

またアメリカ海洋大気圏局(NOAA)は全米各地に気温観測ステーションを設置していますが、Anthony Watts氏の論文[2]によると、大平原や荒野に設置されているはずのステーションがいつの間にかアスファルトの駐車場やエアコンの排熱口の近くに移動されており(下の写真)、全米のステーションのなんと89%が不適切な場所に置かれていたそうです。

 

rei2-2.jpg                           (A. Watts氏の論文より引用)

さて、地球温暖化に対するCO2削減運動に関連して、12月7日にCopenhagenで会議(COP15(国連気候変動枠組条約会議))が始まっています。京都議定書やIPCCが最大の拠り所としたCRUの観測結果はもはや信憑性が無く、このような状況で一体何が議論されるのでしょうか?

現在、イギリス・アメリカの議会が調査に乗り出しており、Jones教授はCRU所長を辞任、Pennsylvania州立大学もMann教授の独自調査を開始しているそうです。またMann教授の盟友Al Gore元副大統領は、COP15への参加と特別公演をキャンセルしたとのこと。
今後、どのように事態は展開していくのでしょうか。

 

じゃあ地球温暖化って実際どーなの??

大気中の二酸化炭素濃度と地球温暖化の間に相関があることは古くから知られています。次の図は昨年の日本物理学会誌(vol.62)に掲載されたグラフで、寒冷期が終わり地球が温暖化した1970年代以降の二酸化炭素濃度と世界平均気温の変化を比較しています。

 

 

rei3.jpg

確かに相関はありますが、よく見てみると気温変化(赤)が二酸化炭素の濃度変化(黒)に1年くらい先行していることが分かります。 従って、二酸化炭素が地球の温暖化を引き起こしたのではなく
「地球の気候変動が大気中二酸化炭素の濃度変化を引き起こしている」が正しいのかもしれません。

海水中には大量の二酸化炭素が溶解しており、気温の上昇に伴って海水中の二酸化炭素が大気中に放出されたと理解すべきでしょうか。

ではこの気温上昇の起源についてなのですが、このような不正が起こっている手前、その他のデータや情報を鵜呑みにしていいものか難しいところですが、「太陽活動の影響」による説が現在有力な原因一つとみられているようです。

 

rei4.jpg

上図はOregon大学のグループによる論文[3]、過去100年間の日射量と北極の気温変化をプロットしたものですが、非常に良く一致していますね。

まーでも実際のところどうなのか、は正直誰にもわからないんじゃないかと感じています。環境技術・権力・お金を念頭に利益を得たい国・研究機関の思惑や、それらと強い結びつきのあるマスコミの前では、事実が大きく歪められてしまいますので。

(事業仕分けに対する反応や今後に関してもそうですが)だからこそ、科学や科学者のあり方が問われている時期なのかなとも感じています。

正直、科学に対する信頼を失うような記事を書くのは残念でしょうがないのですが、このような事件が表に出てこないまま揉み消されてしまうことの方がもっと残念というか、歪んだ科学の世界を作りかねないと感じての執筆です。

みなさんはこの問題、どう感じましたか?

【注意】

この記事では地球温暖化自体とその二酸化炭素の関係を否定しているものではありません。温暖化に関する懐疑論は以前からあった話であり、今回は最近起こった「Climategate事件」に関連してつぶやいたものです。事実だとすればハッキングは大きな犯罪であり(内部告発という案もあり)、さらにその真偽も未だわかりません(メールの内容については自身のものであると認めている)。今回は懐疑論を正当化するようなデータを示しましたが、科学の性質上すべてのデータの上で評価しなれば、それは整形(trimming)にあたりますので、文章中にもありますが、この内容の議論に関しては避けさせていただきます。

引用文献

  1.  http://www.climatescience.org.nz/images/PDFs/global_warming_nz2.pdf
  2. 「Is the U.S. Temperature Record Reliable?」By Anthony Watts, SurfaceStations.org,
  3. Chicago, IL: The Heartland Institute, 2009.
  4. http://www.jpands.org/vol12no3/robinson.pdf.

 

参考リンク

関連記事

  1. TLCと反応の追跡
  2. 一流科学者たちの経済的出自とその考察
  3. ポリマーを進化させる!機能性モノマーの力
  4. 少量の塩基だけでアルコールとアルキンをつなぐ
  5. 比色法の化学(前編)
  6. 有機合成化学協会誌2017年7月号:有機ヘテロ化合物・タンパク質…
  7. 深海の美しい怪物、魚竜
  8. 気になるあの会社~東京エレクトロン~

注目情報

ピックアップ記事

  1. U≡N結合、合成さる
  2. 布施 新一郎 Shinichiro Fuse
  3. 第44回「100%の効率を目指せば、誤魔化しのないサイエンスが見える」安達千波矢教授
  4. ゲノム編集CRISPRに新たな進歩!トランスポゾンを用いた遺伝子導入
  5. 新たなクリックケミストリーを拓く”SuFEx反応”
  6. フリーラジカルの祖は一体誰か?
  7. メソリティック開裂を経由するカルボカチオンの触媒的生成法
  8. ジョーンズ酸化 Jones Oxidation
  9. マンダー試薬 Mander’s Reagent
  10. 生きた細胞内のヘムを検出する蛍光プローブ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年12月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP