[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

米国版・歯痛の応急薬

[スポンサーリンク]

たまには小難しい話はやめて、日常のお話を書いてみましょう。

最近、どうにも奥歯が痛みます。

このブログでも何度か書いてますが、筆者はアメリカ在住です。

アメリカでは歯医者にかかるとたいへん高く付く(万単位は軽くかかる)ともっぱらの評判。それを予め聞いていたので、当然ながら渡米前に、全ての虫歯を治療していきました。

その後も、虫歯の再発だけは避けようと思い、電動歯ブラシと歯間フロスで、虫歯予防に努めていました。しかしそんな努力も虚しく、またもや歯が痛くなってしまった・・・うーん、磨き方が下手なんだろうか?

歯痛といえど侮ってはいけません。あまりに痛いと偏頭痛にまで発展してきます。そりゃもう、どうにも仕事になりませぬ。

ともかく歯痛を抑えるべく、ドラッグストアに行って薬を買うことにしました。


アメリカにも歯痛を抑える大衆薬は、いくつか種類があるようです。

ひとまず応急的なものが置いてあるコーナーを当たってみると、Pain Relief,Oral Anesthetic Gel, Maximum Strengthと書かれたチューブを発見。痛むところに塗って使うゲルタイプのようです。

へーこんなのあるのか。日本にも今治水なんてもんがあるし、ゲルタイプがあってもおかしくないのかもな・・・まあ効けば何でもいいや。

と勇んで試してみたところ・・・おや、なんだかおかしいぞ?塗った箇所と舐めた舌の感覚が部分的になくなっているような・・・痛みは薄れているようだけど、予想とは全然違った効き方。何だか、麻痺してる感じが・・・

再びよくよくラベルを見てみるとそこには「Benzocaine 20%」という表示が。

ベンゾカイン・・・だと?? おいおいこれって局所麻酔薬じゃないのか!?

benzocaine.gifそうなのです。どうやらアメリカの人達は、歯が痛いときには局所麻酔薬をつかって、痛みをごまかしているようなのです。

パッケージのAnesthetic(麻酔の)が文字通りの意味だったとは・・・うーん豪快だ・・・こんなところまで大雑把なのかよこの国はまったく・・・。

歯痛の薬と言えば、アスピリンとかイブプロフェンよろしく、抗炎症鎮痛剤なものを想像してたというのもあって、これにはまったく面食らいました。

既にそれなりの期間アメリカに居る身ですが、こんなカルチャーショックは未だにあるもんです。いやはや飽きないなぁ、あははは♪

ところで話は変わりますが、歯科医療の方から以前聞いた話。

虫歯の原因菌は、現在までに完全に特定されてて、虫歯のメカニズムもかなりクリアに分かっているそうです。しかしどういうわけか、虫歯菌をターゲットとした薬物開発というのは、現在までになされてないのだとか。

虫歯の患者数自体は、とても多いハズなんですけどねー。子供の頃から歯医者のお世話になることの多かった自分にとって、これは意外な話でした。

虫歯治療では、歯を削った後、残留菌を殺すべく、穴に薬物を詰めてしばらく置いたりします。その際古くは、アマルガムやヒ素、水酸化ナトリウムといった、いかにも毒物でドギツイものが使われていたのだとか。うえぇ・・・。

現在では、抗生物質などを使うもっとマイルドな手法ができたのだそうですが、これにしても「虫歯菌選択的」というわけではないようです。普通の抗生物質・抗菌剤の場合、口内にいる善玉菌まで殺してしまうのが少しばかり問題なんだとか。

このブログをご覧になっている読者の方には、製薬業界の方もいらっしゃるでしょう。

ヒマな時に、どんな薬が虫歯に効くのか考えてみてはいかがでしょう? 意外と知られざる市場かも知れませんぜ。

と、こんな提案しておいて何ですが、「既存の抗生物質で事足りる」「開発の苦労に比して儲からなそう」ってのは何となく想像尽きますがね・・・。

関連商品

[amazonjs asin=”B00N5EMWJK” locale=”JP” title=”ソニッケアー 電動歯ブラシ(ホワイト)PHILIPS sonicare ダイヤモンドクリーン HX9303/06″][amazonjs asin=”B0010Y5D8E” locale=”JP” title=”【第2類医薬品】新今治水 4mL”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 産官学の深耕ー社会への発信+若い力への後押しー第1回CSJ化学フ…
  2. 【書籍】研究者の仕事術~プロフェッショナル根性論~
  3. 【10月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開…
  4. 周期表の歴史を振り返る【周期表生誕 150 周年特別企画】
  5. 結晶学分野に女性研究者が多いのは何故か?
  6. 乙卯研究所 研究員募集 2022年度
  7. ガラスのように透明で曲げられるエアロゲル ―高性能透明断熱材とし…
  8. 近況報告Part V

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第140回―「製薬企業のプロセス化学研究を追究する」Ed Grabowski博士
  2. 甲種危険物取扱者・合格体験記~Webmaster編
  3. 化学者のためのエレクトロニクス講座~電解パラジウムめっき編~
  4. 春の褒章2010-林民生教授紫綬褒章
  5. ポンコツ博士の海外奮闘録XXII ~博士,海外学会を視察する~
  6. ガッターマン アルデヒド合成 Gattermann Aldehyde Synthesis
  7. 身近なカガクを説明した記事まとめ
  8. 有機合成のための新触媒反応101
  9. クネーフェナーゲル ピリジン合成 Knoevenagel Pyridine Synthesis
  10. 炭素を1つスズに置き換えてみたらどうなる?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年11月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

注目情報

最新記事

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー