[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

Reaxys体験レポート:ログイン~物質検索編

[スポンサーリンク]

皆さんReaxys(リアクシス)というデータベースを知っていますか?多分ご存知の方はまだ少ないと思います。そういう筆者も全く知らず、話を聞き興味を持ちました。

Reaxysは学術雑誌出版社エルゼビアが今年1月にリリースした合成データベースです。有機化合物データベースCrossFire Beilstein(クロスファイア・バイルシュタイン)、無機化合物データベースCrossFire Gmelin(クロスファイア・グメリン)、特許を情報源とするデータベースPatent Chemistry Databaseという3つのデータベースが今回統合され、検索機能を刷新して新しいデータベースとして生まれ変わりました。とはいってもSciFinderなどと同様、個人レベル・研究室レベルで導入できる価格ではありません(実際は機関単位でお申し込みくださいとのことです)。今回特別に個別でトライアルIDをいただいたので早速ログイン。読者の皆様に、できるだけ利用者としての研究者目線からReaxysの利用体験レポートをお伝えしたいと思います。

Reaxys(リアクシス)の最大の特徴は、SciFinderなどのように専用ソフトを導入してログインするのではなく、すべてがWebベースで作られていることです。インターネットにアクセスできる環境にあるPCならばどこからでもログインが可能です。またログイン数制限がないことも一つの特徴としてあげられます。とりあえず体験ということで、ログインのためにReaxys(リアクシス)のサイトを訪れてみました。

Reaxysへログイン

Reaxys (URL: https://www.reaxys.com/) へアクセスしました。下記のようなログイン画面が現れるので、与えられたトライアルIDとパスワードを入れログインしました*。

*もちろんID・パスワードがないとログインできません。前述しましたが個人や研究室レベルで購入できるデータベースではないので、お問い合わせ後、大学もしくは企業単位で申し込んでください。

reaxys1.png

ログイン画面

ログインは比較的スムーズで、ログイン後の画面がすぐに表示されました。著者はMacを使っていますが、Windowsでも問題なく利用できます。ブラウザはIE、Safari、Firefoxどれでも利用できるようでした。システムは最新バージョンのJavaScriptが要求されます。

Reaxysへログイン後 ~メイン画面~

ログイン後、メイン画面が表示されました。赤いメニュータブの【Register】でユーザー登録する(下記の画面には表示されていません)と、ログイン後の自動切断が6時間まで伸びるようです。またその間ならば、履歴が有効となっているので、前回検索した内容を確認する事ができます。

reaxys2.png
検索画面

物質名で化合物を検索してみる

折角ログインしたのでなにか検索してみることにしました。検索画面中の【Generate structure from name】ボタンを押すと、Ajaxっぽい検索画面がポップアップで立ち上がりました。ふと思いついた化合物ciguatoxinで物質名検索をかけてみました。すると、図のように白色の部分に化合物が自動的に描かれました。その後、この物質に関して検索を行うのですが、SciFinderなどと同様、かなり詳細に検索条件を設定できるようです。

 

reaxys3.png

化合物名:ciguatoxinで検索してみた

reaxys10.png

reaxys11.png

検索条件は上記のように山ほど設定できる

まずはなにも検索条件を絞らず化合物検索を行ってみました。【Structure and Properties】タブに変えて、そのままの化合物(as drawn)にヒットするよう検索しました。その結果、1件がヒットし図のような画面が表示されました。検索時間は8秒ほとでした。実際にはもうちょっと件数があってよい気がするのですが、信頼性の高いデータのみが抽出されるのでしょうか。

とりあえず中身を見てみると、構造(structure)、化合物名(Chemical name)と、データ(Available data)、引用している文献数(N0 of ref.)、引用している文献の種類(N0 of prep.)、沸点(boiling point)が表示されていました。

reaxys12.png

はじめに表示された検索結果

Available Dataには

Identification
Physical Data (1)
Spectra (4)
Bioactivity/Ecotox (14)
Use/Application (1)

と記されており、それぞれをクリックするとデータを見る事ができます。それらが掲載されている文献名も見る事ができ、文献名をクリックするとCrossRefを通じてオンラインジャーナルにアクセスできます。これは便利だという印象を受けました。先の疑問であるヒット件数が少ない件についてですが、1つにつき1件とまとめられているために少ないということがわかりました。また、NMRデータも文字データでは有りますが、測定溶媒も含めてきれいに登録・記載されており、文献の中でわざわざ探す手間も省けるかもしれません。

さらに面白いと思ったところは、その化合物が生物活性を有している場合Bioactivity/Ecotoxをクリックすれば、下記のように表にまとめられた生物活性試験データを見る事ができるところです。もちろん元文献も引かれており、化合物の生物活性を確認したい方にとってはかなり有用なのではないでしょうか。

reaxys14.png

生物活性をまとめて閲覧する事ができる

 

というわけで今回はログインから物質検索を行ってみましたが、スムーズに検索ができ、インターフェイスも綺麗で使いやすかったです。特筆すべきは信頼できるデータを「一覧」として得る事ができるということ。この点で他のデータベースとは一線を画している印象を受けました。それぞれのデータはPDFやWord、エクセル形式等様々な形式でダウンロード可能なようで、化合物のデータを調べるには非常に便利でしょう。

次回のレポートでは合成反応データベースの本領発揮、反応検索を試みて見たいと思います。

関連動画

 

関連リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. Carl Boschの人生 その7
  2. CSJジャーナルフォーラム「ジャーナルの将来像を考える」
  3. エステルからエステルをつくる
  4. 可視光レドックス触媒と有機蓄光の融合 〜大気安定かつ高性能な有機…
  5. 三角形ラジカルを使って発光性2次元ハニカムスピン格子構造を組み立…
  6. Impact Factorかh-indexか、それとも・・・
  7. 理化学機器のリユースマーケット「ZAI」
  8. 不安定試薬の保管に!フードシーラーを活用してみよう

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第66回「物質の宇宙:未知の化合物を追い求めて」山本 隆文 准教授
  2. 第7回ImPACT記者懇親会が開催
  3. [12]シクロパラフェニレン : [12]Cycloparaphenylene
  4. 松本・早大教授の論文、学会は「捏造の事実無し」
  5. 農工大で爆発事故発生―だが毎度のフォローアップは適切か?
  6. 緑膿菌の代謝産物をヒトの薬剤に
  7. 工程フローからみた「どんな会社が?」~タイヤ編 その3
  8. 電池材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用
  9. ナノ孔に吸い込まれていく分子の様子をスナップショット撮影!
  10. アルコールをアルキル化剤に!ヘテロ芳香環のC-Hアルキル化

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー