「 いつも研究室で何をしているの??」
いや、確かにこのような仕事に関わっていなければ疑問に思うかもしれません。というわけで、デスクワークに疲れてきたので暇つぶしにいつもどんな生活をしているのかを書き綴りたいと思います。研究室ってなに?大学教員は何してるの?学生はどんな感じ?などなど、 新しく大学の研究室に配属される学生の方、化学の研究をしたい!と夢見て大学に足を踏み入れる方、そんな時期に気になる質問を一問一答形式で答えます(いままで聞かれたことがある質問がほとんどです。)。
筆者はプロフィールにある通り、大学の教員をしているのですが、年齢的にも下から数えて何番目であるため走り立て若手化学者の日常とでも考えてください。今回は研究の内容にはあまり触れないようにしたいと思います。
Q1. いつも何時から何時まで働いているのですか?
働いているという感はないですが、だいたい毎日9時半前に研究室に来て、帰るのは2時から3時でしょうか。学生の頃は、朝9時厳守で、週2、3回は泊まっていました。今は一応既婚者なので、家には帰るようにしています(今日は学生につきあってお泊まりです、そのため暇つぶし?に書いています)。泊まっていたというより、朝方になるまで研究をして、もう起きてられない!と思ったらそのまま床に転がるといった感じでしょうか。効率よい方ではないですが、悪い方ではないと思います。時間と比例はしないが、やったほうが「結果」がでる、自分が納得することは間違いないと考えています。ひとつやってしまったら次が気になるんですよね。若手官僚の後輩は「国会議員のお仕事」を夜中まで必死にやっていることを考えると、自分の好きなことを好きなときにできる大学教員はとても恵まれている職業だと思います。
学生に関しては朝のみは9:30までに実験をできるような体制にしておくこと、帰りの時間は完全に自主性にまかせています。時間を決めてだらだら残っても効率があがらないという考えだからです。自分の場合は、強制されるのが嫌いであったので、コアタイムみたいな考えは嫌いでした。実際にはありましたが、実験の気分が乗らない時は即帰って遊びにいくというスタンスでやっていました(といってもめったにありませんでしたが)。
Q2.どんな人がいるのか?
研究室の構成はもちろん研究室によって異なりますが、通常、教授がいて、准教授、助教がスタッフであり、准教授や助教のいない講座もあります。逆に私立大学などは講師で研究室をもてる(PI:principle investigatorになれる)こともありますが、そういう場合は大抵はスタッフがその人のみです。その他に国立大学の場合はほぼ必ず研究室に事務補佐員(いわゆる秘書)がいます。秘書さんは研究費や事務的な作業をこなしてくれるので、事務的な作業が多い国立大学においては非常に重宝しています。学生ですが、数はこれももちろん研究室によって異なりますが、大きな研究室、長年の研究室ほど博士課程(ドクター見習い)の学生が多く見られ、修士課程、4年生と続きます。研究室によっては3年生も仮配属という形で研究をしているところもあるようです。日本でも最近は博士取得後のポスドク(博士研究員)という研究員が何人か所属しているのが、かなりの研究室で多くなってきました。それに加えて、大学のプログラムや、個人的な関係での留学生がいるところもあります。
Q3. どんなスケジュールで動いているの?
朝9時過ぎ来て、まずメールをチェックします。夜中までいるときはほとんど見ているので、時間がずれている海外からと学部や学科の事務からメールぐらいしか重要なメールはありません。夜まで確認しないとメールのチェック、返信だけで1時間はかかるメールの量がたまります。数日あけたら死亡です。コーヒーを飲んで一息ついた後に、実験を始めます。そのときによって異なりますが、学生がいろいろと聞いて来るので、快く答えます。学生さんは宝であり、わからないことを聞いてきてくれる学生の方が私は好みます。本当は忙しくてもできるだけ暇だ!という振る舞いをしています。忙しいと考えたら、普通の学生ならば一歩踏みとどまってしまうからです。とはいっても本当に忙しい時があり、素っ気ない態度をとっているときもあるかもしれませんが、それはご容赦を。
お昼は必ず定時に食べるようにしています。それを考えて実験のスケジュールもたてます。これも私の考えと経験ですが、お昼の時間も取れないような人はだいたい研究の計画性もありません。大抵、作ってもらったお弁当を食べるか、生協で購入して皆で食べます。長年いると同じ物ばかりなので結構開きます。土曜日はあまりレパートリは多くないですが外にでて食べるようにしています。
食事の後、実験を再び開始し、業者の対応や、学生のお世話、文献や読者(化学書)、メールやインターネットのチェックを挟みながら夜まで働いて、夜ご飯をカフェで食べた後にまた午前様まで働きます。この内容もお昼からと同様です。夜中は反応をまわしながら、実験計画を考えたり、このサイトの更新をしたりしているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。学生の時も比較的同じ感じでしたが、それよりもテーマの立案、進め方、方向性の指示が入ったためその関係にかなりの時間が使われています。また、学内業務や論文審査、論文執筆等のお仕事もあるため、時にはかなりの割合でデスクワークをしなければなりません。
Q4. 実験はどのくらいしているの?
教員になってからは異常に減りました。今年は400反応程度でした。しかもたいした内容ではありません。ポスドクのときは一番暇で結構遊んでいたり、考え事をしていた気がしますが、1年で1200反応ぐらいやりました。学生のときはだいたい600~700反応ぐらいです。反応開発が軌道に乗っていて、系が簡単であると3ヶ月で1000反応ぐらいも可能らしいですが、私は合成をメインとしていたのでその程度です。若手教員の人のなかでは忙しくて実験できない!という声も多く、なんだか悲しいですが、そういう状況もあるのかもしれません。もうすぐ退官の近い某教授はまだ普通に実験していて、その研究室にあるプレリミナリーな実験はかなりの割合でその教授自身の手で行ったということです。しっかりと学務もこなし、実験もこなしている某教授は本当にすばらしいと思います。私も40ぐらいまでは実験したいと考えています。
Q5. 大学教員、学生のお給料は?
先日も学生実験の学生に聞かれて、そんなの興味が有るのかと思いましたが、正直なところ、高くもなく、安くもないといったところです。国立なので公務員に準拠+各種手当です。筆者は配偶者がいますが、二人ならば普通に暮らしていけます(行けなかったら問題か)。家は宿舎はあまりきれいではなかったので、普通に借りていて多少なりとも家賃手当はでますが、かなり高いところなので、家にいる時間を考えるとあまり効率的ではないかもしれません。ボーナスも公務員と同じようにあります。基本的に若くして教授になってもほとんどあがらないので、教授だからといってたからないように(苦笑)。
残業代はもちろんありません。裁量労働制です。そうでなければ困ります。
学生に関しては、修士課程は収入としては奨学金とRAやTA(research assistant, teaching assistant; 学生実験や授業の手伝いなど)のみ、博士課程は日本学術振興会の特別研究員であれば月20万円ほどもらえます。筆者もそうでありましたが、家賃と学費と飲み代ですべて消え毎月マイナスでした。学部生の時がもっともつらく、バイトもできなかったので、助手(現在の助教)の家に週末はご飯をいただきにいっていました。それが本当にありがたかったし、今でも貧乏でしたがあの頃は楽しかったと思う時もあります。
というわけであまり長く書いても仕方がないのと、完全に朝になってしまったのでまた暇な時に書きたいと思います。完全に「化学者のつぶやき」でした。
関連書籍
[amazonjs asin=”475981597X” locale=”JP” title=”はじめての研究生活マニュアル”][amazonjs asin=”4062576716″ locale=”JP” title=”理系のための研究生活ガイド―テーマの選び方から留学の手続きまで 第2版 (ブルーバックス)”]外部リンク
P.S. 調べてみるとほとんど1~2年程度で更新がとまっているものがほとんどです。貴重な意見であると思うのにもったいないなあと思います。