化合物を精製後スペクトルを測定し構造を決定するという作業は,有機合成化学者にとって日常茶飯事だと思います.ところが「構造決定のためにきれいなNMRスペクトルを測定したいのに目的物を単離することができない!!」という経験をしたことはありませんか?また,「化合物が不安定であるため単離精製ができない!!」なんてことで悩んだことありませんか?そのような時はDOSY法が役に立ちます.
DOSY法は(Three Dimensional-Diffusion-Ordered NMR Spectroscopy)の略で,複数の分子種からなる混合試料を各分子種の自己拡散係数の差を利用してスペクトルを分離することができる手法として知られています.要するに混合試料を測定すると,それぞれの化合物のスペクトルが得られるのです.得られるプロトンNMRスペクトルの積分比には完全な定量性はありませんが,目的物が得られたかどうかを判断するには十分だと思います.また,各化合物の自己拡散係数が一致する事は稀であり,それゆえ適用範囲の広い測定法だと言えます.そのDOSY法には,COSYやHMQC,HMBCといった3D-DOSYも存在し,ゲスト包接解析などへの応用もあるそうです.
著者は有機合成化学者の視点でDOSY法について記事を書きましたが,他分野でご活躍の方々はDOSY法をどのように活用していますか?近年,測定法や処理法の確立によって実用的になりつつあるDOSY法は,混合物であっても各NMR成分の信号を分離できるため,様々な分野へ応用されると思われます.
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反応経路解析へのDOSY法の適用
DOSY法の応用?ゲスト包接解析?
NMRによる混合試料の解析(DOSYとGPC-NMR)