[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

iPhone/iPodTouchで使える化学アプリケーション

[スポンサーリンク]

 近年ユーザ数を着実に増やしつつあるiPhone/iPodTouch。筆者も今更ながらに念願のiPodTouch(第二世代)を購入し、PDA(携帯情報端末)としてスケジュール管理などに活躍させています。モバイル機器の在り方を変えてしまったと言われるだけあって、確かに凄いアイテムな印象で、何より「触って楽しい」のが良い点ですね。

さて、こんなに便利で楽しいiPhone/iPodTouchを、化学研究に上手く活用できないか?と考え、iTunes Storeを漁ってみました。すると、いくつか面白そうなソフトウェアが見つかりました。

今回はそれらを紹介してみましょう。

 

Organic Chemistry Express Organic Chemistry Express

orgexp1.jpg

有機化学を専門とする院生3人が作成した、iPhone用有機化学データベースです。 ¥1200の有料ソフトですが、お金を取るだけあって相当な充実度です。およそ800の有機化合物・400の有機化学反応・200の反応機構が収められており、Wikipediaにすら載ってないハードコア事項まで載っている力作です。有機化学者にとっては便利に使えると思えます。
欲を言えばprimary referenceとそれへのリンクがついていて、ブラウザを介してWebジャーナルサイトへすぐ飛べると素晴らしいのに・・・と感じました。
【2009.03.27 追記】 当初表記していた¥230というのは発売当初のセールスプライスだったようで、実際の販売価格は¥1200が正しいようです。
現在は600円で入手可能。

 

orgexp2.png

Solutions Solutions

solutions_iPod1.png

化合物溶液を作りたい、という時に便利な濃度計算ソフトです。分子量・モル濃度・必要化合物量・体積の4パラメータのうち、3つを入れれば残りの1つを計算してくれます。有料(¥350)。

このソフトはちょっと優れており、入力された分子式から分子量の計算ができる機能も持っています。さらには、オンライン化合物データベースであるChebiPubChemから化合物を検索してくることもできます(分子名だけでなくCAS No.でも検索可能)。この機能によって、複雑な化合物でも簡単に分子量を取得できます。
とはいえこれだけでは、わざわざiPhoneを使わずとも、電卓一つで事足りる気がしてしまいます。上手く使えば意外に便利なのかも知れませんが、¥350払う価値があるかと言われれば・・・ちと微妙?

solutions_iPod.jpg

 

Molecules Molecules

molecules_iPod.png

 

 

Protein Data Bankなどからデータ取得してきて、分子の3D図をiPhone上で表示できるソフトウェアです。ぐりぐり回転させたり、拡大させたりも、タッチパネルだとお手の物。閲覧のみで編集出来ないので、いわゆる娯楽ソフトの部類に入るように思えます。
デフォルトで表示されるDNA分子は、なかなか綺麗で癒されますよ。無料。

molecules_iPod2.png

 

i-Clicker PowerPoint Remotei-Clickr PowerPoint Remote

iclicker.png

 

なんとiPhone/iPodTouchをパワーポイントのリモコンにしてしまえるソフト。化学に限らず、プレゼンテーション全般に役立ちそうです。無料バージョンのLiteはスライド15枚という使用制限があって、正直ちょっと使い物にならないのですが、¥1200払って有料バージョンを手に入れれば無制限になります。PC側でクライアントソフトをインストールした後、起動する必要があります。
ややお高いので使用頻度と相談ですね。

 

 

Powerpointに限らず全てを遠隔操作したい、という人は、iPhoneを無線マウス化してしまえるAirMouseProAir Mouse Proという有料ソフト(¥700)があります。
こちらのほうが場合によっては、汎用性が高くて便利そうに感じます。

 

Kindle for iPhone/iPodTouch Kindle for iPhone(US Store)

 
kindle_icon.png

Amazon.comがごく最近画面の大きなバージョンを売り出して話題の、電子ブックKindle(キンドル)。そのiPhone対応版です。Kindle筐体は$300以上するのですが、iPhone版はなんと無料
Amazon.comではKindleストアがオープンし、電子版の教科書・専門書も沢山発売されています。もちろん化学分野の書籍も多くあります。Kindle版の売上げは、いまや紙媒体の35%にまで上るというデータもあるほどで、電子ブック文化が米国ではかなり浸透しつつあるようです。
Kindle自体が日本未発売ゆえか、イマイチ日本国内での知名度に欠けるのが実情のようです。しかしAmazon.com自体は、日本にいても使おうと思えば使えますし、Kindle用書籍は電子データなので送料もかかりません。理屈の上では、日本からでも問題なく使用可能なソフトといえます。
しかし今のところ米国iTuneStoreからしかダウンロードできないので、ややトリッキーな手順が必要になるようです。どうしても導入したい人は、この辺この辺この辺の解説などを参考にして実行してみてはいかがでしょうか(あくまで自己責任で)。

筆者も最近、『Molecules of Murder: Criminal Molecules and Classic Cases』という洋書をKindleストアで購入し、このソフトを使って読んでいます。最初は「こんな小さな画面で読書なんてできるのか?」と先入観を持っていたのですが、実際使ってみると、意外にもかなり快適に読めることが分かりました。何より、かさばらずにポケット一つで持ち運べる点が大きく、言うことがありません。

あの重たく分厚い教科書・専門書にしても、必要なときにオンラインで購入・ダウンロードして、ポケットサイズの携帯デバイスに全てを入れて読み、保存もかさばらず便利・・・という未来像になってくるのかと思うと、何とも夢があるソフトではないでしょうか。是非日本での普及も期待したいのですが、出版業界の意向次第であることを考えると、まだまだ導入への道のりは長そうです。【2009.6.4 加筆修正】

 

筆者はiPodTouchを使い始めてまだ日が浅いですが、以上のアプリケーションは触ってみてなかなか良さそうに感じました。
ちなみに「超便利!人生変わった!」と思えるインパクトがあったのは、やはりKindleシステムですね。

今後も役立ちそうなソフトを見つけ次第、紹介してみたいと思います。他にも良いソフトをご存じの方は、是非コメント欄などで教えていただければ幸いです。

ところで、ケムステコンテンツの「ケムステニュース」「化学者のつぶやき」にもiPhone/iPodTouch版が最近出来ました。ブックマークを是非よろしくお願いします。
ケムステニュース(iPhone専用) URL http://www.chem-station.com/chemistenews/i/

化学者のつぶやき(iPhone専用) URL http://www.chem-station.com/blog/i/

関連商品

[amazonjs asin=”B00HPXERB8″ locale=”JP” title=”Apple iPod touch 64GB スペースグレイ ME979J/A”]

 

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. MEDCHEM NEWS 31-2号「2020年度医薬化学部会賞…
  2. 日本化学会 第103春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン P…
  3. ~祭りの後に~ アゴラ企画:有機合成化学カードゲーム【遊機王】
  4. 光を吸わないはずの重原子化合物でも光反応が進行するのはなぜか?
  5. 今年は国際周期表年!
  6. 放線菌が生産するアベナルミ酸生合成において、ジアゾ化とヒドリド転…
  7. 量子力学が予言した化学反応理論を実験で証明する
  8. マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎

注目情報

ピックアップ記事

  1. フリース転位 Fries Rearrangment
  2. デルフチバクチン (delftibactin)
  3. 2005年ノーベル化学賞『オレフィンメタセシス反応の開発』
  4. ユネスコ女性科学賞:小林教授を表彰
  5. デスソース
  6. 金と炭素がつくりだす新たな動的共有結合性を利用した新たな炭素ナノリングの合成法の確立
  7. 2つの結合回転を熱と光によって操る、ベンズアミド構造の新たな性質を発見
  8. ケムステイブニングミキサー2015を終えて
  9. 未解明のテルペン類の生合成経路を理論的に明らかに
  10. ヤンセン 新たな抗HIV薬の製造販売承認を取得

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー