[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

化学研究ライフハック: Evernoteで論文PDFを一元管理!

[スポンサーリンク]

電子ジャーナルが発達した昨今、「論文を読む場所=図書館、論文の媒体=紙雑誌」というスタイルは過去のものとなりつつあります。 ほとんどの研究者はインターネットで論文検索をし、必要な論文をPDFファイルとしてダウンロードし、ラボで印刷するかPDFのままPC上で読む、というスタイルをとっているはずです。

ネットインフラが整ってきて、論文をどんどんダウンロードできるようになったのは素晴らしいことです。しかし、日々増え続けるPDFファイルを目の前に、一つ大きな懸案事項が持ち上がってきます。

つまり、入手した論文PDFをどうやって整理・管理すれば良いものか?ということです。

几帳面な人は、論文内容や発表年ごとにフォルダ分けして整理したりもするようです。しかし筆者のようなものぐさ君には、どうしてもそれができませんでした。加えてその方法では、フォルダを作って分類しても、内容やタイトルで論文を見つけ出してこれない、というのも辛いところでした。「あれ、数週間前ダウンロードした論文、どのフォルダに入れたっけ???」などと考え込み、そのあげく見つからず、同じPDFを再度ダウンロードし直す・・・などという二度手間も沢山あったのです。

しかしEvernoteというソフトを導入してから、こういった問題に悩まされることがほぼ無くなりました。

今回は「化学研究ライフハック」シリーズの一環として、Evernoteを使った論文PDF管理法を紹介してみたいと思います。


Evernote自体はクラウド保存型メモを作成するためのフリーソフトなのですが、未来指向型の機能が沢山搭載されています。上手く使えば簡単に論文管理ができます。

以下、具体的な論文管理法について述べたいと思います。Windows環境での方法を書いておきますが、基本的にはどのOSでも同様だと思います。

 ① 論文PDF用の新しいNotebookを作り、非同期設定にする

evernote_2.png

 

 

② 作ったNotebook内に新しいノートを作り、PDF をドラッグアンドドロップで貼り付ける

evernote_3.png

 

 

③ PDF添付ノートに、任意のタグ・コメント・タイトルetcを記入する

evernote_4.png

 

たったこれだけ!とても簡単です。①はソフト導入直後にやってしまえばよいので、毎回の作業は実質②③のみです。

注意としては非同期設定を忘れずに行うこと。デフォルトではWebストレージと同期する設定になっているため、非同期にしないと一アカウントあたりのアップロード制限をすぐに超えてしまうのです。

この管理方法では、論文に適切なタグ付けを施せるのも特長です。ゆるく分類できるのが便利です。

検索の利便性を考慮に入れ、筆者はジャーナル略称(JACS, ACIE, OLなど)をタグ付けしています。また、「あとで読む」「これはすごい」「くだらない」などの簡易感想タグも意外と役立ちます。PDF内のテキストも検索対象になるため、既に論文中にある情報(発行年やAuthor名など)はわざわざタグに書く必要はありません。

Evernoteに放り込んだPDFは、元ファイルとは別の独自フォルダにコピーされます。このため元のファイルを消してしまっても問題ありません。デスクトップに散らかっていたPDFファイルをEvernoteに放り込んで消してしまえば、綺麗なデスクトップ画面もすぐそこです。

Evernoteの検索機能は大変強力です。たとえば、筆者のEvernoteで“total synthesis baran review 2009”という検索ワードを入れてみると、200以上のPDFの中から、望みのAcc. Chem. Res.をすぐさま見つけ出すことができました。著者・タイトル・ジャーナル名・発行年月日などについての記憶があいまいでも、論文の内容さえ記憶にあればなんとか探し出してこれるのも強みです。

evernote_1

 以下にEvernoteで論文管理をするメリットをまとめてみます。

●基本的にPDFをEvernoteに放り込むだけでよく、超カンタン
●PDFの文字列も検索対象になるので、うまいキーワードを考えて登録する必要がない
●Supporting Informationや動画などの補助ファイルも、論文とセットにして保存可能
●感想・コメントをPDFの横に書いておけば、読後のインスピレーションを記しておくことができる
●紙文書をスキャンしてPDF化しても、自動文字認識機能(OCR)により検索可能にできる
●論文の中身をテキストで検索できるので、分類・配置に気を遣う必要がない
●情報が一元化され散逸しないので、管理とバックアップが簡単になる

 Endnoteなどの有名論文管理ソフトを筆者自身、使ってみたことがあるのですが使い勝手が良くなかった印象でした。Evernoteに無い機能もある一方で、論文へのタグ・コメント付けなどが上手く出来なかった記憶があります。PDFの中身で検索することもできませんでした。何より、Endnoteはお高い有料ソフトなんですよね・・・。貧乏学生時代の自分が敬遠してしまったとしても、致し方ないことかと・・・。

 その点、Evernoteは無料ですし、アイデアメモにも使えるソフトです。論文管理に使う気が無くとも、一度試してみるとよいでしょう。工夫次第でいろんな使い方ができます。一度その利便性を知ってしまえば、手放せなくなるでしょう!おススメです。

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 化学者のためのエレクトロニクス講座~無電解めっきの還元剤編~
  2. ポンコツ博士の海外奮闘録XXIV ~博士の危険地帯サバイバル 筒…
  3. \脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケ…
  4. 2022年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!
  5. 私がケムステスタッフになったワケ(5)
  6. クリスマス化学史 元素記号Hの発見
  7. U≡N結合、合成さる
  8. わずか6工程でストリキニーネを全合成!!

注目情報

ピックアップ記事

  1. NITEが化学品のSDS作成支援システムをNITE-Gmiccsにて運用開始
  2. 日本コンピュータ化学会2005秋季年会
  3. 喜多氏新作小説!『美少女教授・桐島統子の事件研究録』
  4. 製薬系企業研究者との懇談会
  5. 【Q&Aシリーズ❶ 技術者・事業担当者向け】 マイクロ波によるガス反応プロセス
  6. 米デュポン、高機能化学部門を分離へ
  7. 「ソーシャルメディアを活用したスタートアップの価値向上」 BlockbusterTOKYO 2020 第9回 研修プログラムを実施!
  8. 第51回「電流でDNAを検出する」佐藤しのぶ准教授
  9. クレアチン creatine 
  10. 1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート : 1-Fluoro-2,4,6-trimethylpyridinium Trifluoromethanesulfonate

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーとして注目されている、電子レンジでおなじみの”マイクロ…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

アザボリンはニ度異性化するっ!

1,2-アザボリンの光異性化により、ホウ素・窒素原子を含むベンズバレンの合成が達成された。本異性化は…

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

ケムステイブニングミキサー2025に参加しよう!

化学の研究者が1年に一度、一斉に集まる日本化学会春季年会。第105回となる今年は、3月26日(水…

有機合成化学協会誌2025年1月号:完全キャップ化メッセンジャーRNA・COVID-19経口治療薬・発光機能分子・感圧化学センサー・キュバンScaffold Editing

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年1月号がオンライン公開されています。…

配位子が酸化??触媒サイクルに参加!!

C(sp3)–Hヒドロキシ化に効果的に働く、ヘテロレプティックなルテニウム(II)触媒が報告された。…

精密質量計算の盲点:不正確なデータ提出を防ぐために

ご存じの通り、近年では化学の世界でもデータ駆動アプローチが重要視されています。高精度質量分析(HRM…

第71回「分子制御で楽しく固体化学を開拓する」林正太郎教授

第71回目の研究者インタビューです! 今回は第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」の講演者…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP