LDBBA: Kim, M. S.; Choi, Y. M.; An, D. K. Tetrahedron Lett. 2007, 48, 5061. doi:10.1016/j.tetlet.2007.05.091
SDBBA: Song, J. I.; An, D. K. Chem. Lett. 2007, 36, 886. doi:10.1246/cl.2007.886
PDBBA: Chae, M. J.; Song, J. I.; An, D. K. Bull. Korean Chem. Soc. 2007, 28, 2517.
エステルのアルデヒドへの部分還元反応は、精密有機合成において非常に重宝される反応です。しかし、基本的な変換のようでいて、使える方法はかなり限られているのが実情です。
この変換目的には、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL)[1]を用いるのがスタンダードです。しかしながら、極低温(-78℃)で行う必要があり、Over Reductionが起こり収率が上がらないこともままあり、万能ではありません。
Anらは、アルカリ金属t-ブトキシド塩とDIBALを1:1の量比で混合して調製される還元剤、Metal diisobutyl-t-butoxyaluminum hydride (MDBBA)がこの部分還元反応に効果的であることを2007年に報告しています。カウンターカチオンはLi,Na,Kそれぞれが別個に報告されていますが、反応性・と調製の簡便さを考慮すると、Naを用いるのが無難なようです。
脂肪族/芳香族エステルを問わず適用でき、氷冷下(0℃)に簡便な操作で行えるのが特徴です。また、ニトロ基やシアノ基などは還元されないようです。しかしながら、なぜアルデヒドでストップするのか、などについての考察は論文中ではなされていません。
本法はエステルの部分還元反応における、新たなスタンダードとなりうる手法かもしれません。利便性が高そうな手法なので、Chem. Lett.の実験項を以下に引用しておくことにします。
<SDBBAの調製法>
To a solution of sodium t-butoxide (5.05 g, 52.5 mmol) in THF (25 mL) was added dropwise DIBALH (50 mL, 1.0M in hexane, 50 mmol) at 0 ℃ and the mixture was stirred for 2 h at room temperature to give a colorless homogeneous solution.<SDBBAを用いる部分還元>
To a solution of ethyl benzoate (0.07 mL, 0.5 mmol) in THF (5 mL) containing naphthalene as an internal standard was added SDBBA (1.2 mL, 0.5M in THF.hexane) at 0 ℃. After 6 h, the reaction mixture was hydrolyzed with 5mL of 1M HCl (aq) and the product was extracted with 10mL of diethyl ether. The ether layer was dried over anhydrous magnesium sulfate. GC analysis showed an 84% yield of benzaldehyde.
関連文献
- Zakharkin, L. I.; Khorlina, I. M. Tetrahedron Lett. 1962, 3, 619. doi:10.1016/S0040-4039(00)70918-X