[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ボリルアジドを用いる直接的アミノ化

[スポンサーリンク]

borylazide_1.gif

Metal-Free Conversion of Methane and Cycloalkanes to Amines and Amides By Employing a Borylnitrene
Bettinger, H. F.;  Filthaus, M.; Bornemann, H.; Oppel, I. M. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, Early View. doi:10.1002/anie.200705936

Ruhr大学BochumのBettingerらによる報告です。

ナイトレンやカルベンといった高反応性化学種は、不活性なC-H結合へ挿入反応を起こすことが知られています。

 

アジド化合物からナイトレン化学種が生成可能なことは、既に明らかにされています。しかしながら、求電子性の高いナイトレン種でないとその挿入反応は上手くいかず、合成的に有用なレベルの反応は達成されていませんでした。

 

Bettingerらは、ホウ素と共役させて求電子性を増したボリルナイトレン種[1]をボリルアジド化合物から生成させることで、様々なアルカンをアミノ化することに成功しました。生成物のN-B結合を切断することで、一級アミンへも容易に導けることも特徴です。

 

ホウ素の置換基をチューニングしたり、遷移金属触媒を用いることで、より穏和な条件でのアミノ化反応も可能ではないか、と論文は締めくくられています。新たなアミノ化反応として、今後大いに発展が期待できる化学だと思います。

 

  • 関連書籍
Handbook of C-H Transformations: Applications in Organic Synthesis
Vch Verlagsgesellschaft Mbh
Gerald Dyker(編集)
発売日:2005-11-30
  • 関連文献
[1] Bettinger, H. F. Inorg. Chem. 2007, 46, 5188. DOI:10.1021/ic0622104

  • 関連リンク

Du Boisアミノ化 (ODOOS)

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. SciFinder Future Leaders in Chem…
  2. 化学者のためのエレクトロニクス講座~化合物半導体編
  3. 光学迷彩をまとう海洋生物―その仕組みに迫る
  4. 計算化学者は見下されているのか? Part 1
  5. スケールアップで失敗しないために 反応前の注意点
  6. IASO R7の試薬データベースを構造式検索できるようにしてみた…
  7. ショウリョウバッタが吐くアレについて
  8. 11/16(土)Zoom開催 【10:30~博士課程×女性のキャ…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第99回日本化学会年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part III
  2. サラ・オコナー Sarah E. O’Connor
  3. 光薬理学 Photopharmacology
  4. 世界の「イケメン人工分子」① ~ 分子ボロミアンリング ~
  5. 第28回Vシンポ「電子顕微鏡で分子を見る!」を開催します!
  6. SciFinder Future Leaders in Chemistry参加のススメ
  7. 新たなクリックケミストリーを拓く”SuFEx反応”
  8. アメリカ化学留学 ”大まかな流れ 編”
  9. 島津製作所がケムステVシンポに協賛しました
  10. アルケンのエナンチオ選択的ヒドロアリール化反応

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2008年5月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー