[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

室温、中性条件での二トリルの加水分解

[スポンサーリンク]

RhI-Catalyzed Hydration of Organonitriles under Ambient Conditions, Goto, A. ; Endo, K. ; Saito, S. ; Angew. Chem. Int. Ed., 2008, 47, 3607 DOI: 10.1002/anie.200800366

ニトリルをアミドヘ加水分解する。意外と簡単にできると思いませんか?この単純な変換は古くから研究されており、工業的にもアクリロニトリルの加水分解によるアクリルアミドの合成が行われています。しかし、ニトリルを加水分解するために多くの均一系、不均一系触媒が報告されていますが、一部のコバルトと白金系の触媒用いた場合を除いて、どれも高い温度(80~180oC)や高い圧力を要する場合がほとんどでした。
私自身も昔、全合成研究の途中にニトリルを加水分解しなければならず、分子内の水酸基を用いると、シリカゲル上でも簡単に加水分解されるのに、外からの加水分解は全く進行せず、さらに強い条件で行うと基質の分解が優先して目的の化合物が得られなかった思い出があります。その当時は大阪大学の村橋先生が報告されていたRh、Ru触媒(忘れました)で水で100℃で2日間熱するという条件がもっともよく、もっと温和な触媒があったらなあと考えていました。

今回、名古屋大学の斉藤らは1mol%の[{Rh(OMe)(cod)}2]に配位子として4mol%のPCy3を用いることで、ニトリルの加水分解を室温で進行させることに成功しました。どれも多少時間はかかりますが、非常に高い単離収率でアミド得られています。

意外と単純ですけれどもこういう既存の反応を温和な条件で進行させることのできる反応性の高い触媒というのはいつの時代になっても重宝されると思います。

 

外部リンク

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 「anti-マルコフニコフ型水和反応を室温で進行させる触媒」エー…
  2. 有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号
  3. 色素・樹脂材料処方設計におけるマテリアルズ・インフォマティクスの…
  4. 産学それぞれの立場におけるマテリアルズ・インフォマティクス技術活…
  5. 東北地方太平洋沖地震に募金してみませんか。
  6. 第4回「YUGOKAFe」に参加しました!
  7. HTML vs PDF ~化学者と電子書籍(ジャーナル)
  8. 水晶振動子マイクロバランス(QCM)とは~表面分析・生化学研究の…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第170回―「化学のジョブマーケットをブログで綴る」Chemjobber
  2. セントラル硝子、工程ノウハウも発明報奨制度対象に
  3. 有機合成化学協会誌2023年5月号:特集号「日本の誇るハロゲン資源: ハロゲンの反応と機能」
  4. チェーンウォーキングを活用し、ホウ素2つを離れた位置へ導入する!
  5. アブラナ科植物の自家不和合性をタンパク質複合体の観点から解明:天然でも希少なSP11タンパク質の立体構造予測を踏まえて
  6. 有機合成化学協会誌2024年7月号:イミン類縁体・縮環アズレン・C–O結合ホモリシス・ハロカルビン・触媒的バイオマス分解
  7. ホウ素と窒素固定のおはなし
  8. シスプラチン しすぷらちん cisplatin
  9. サクセナ・エヴァンス還元 Saksena-Evans Reduction
  10. まっすぐなペプチドがつまらないなら「さあ輪になって踊ろ!」

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2008年5月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

野々山 貴行 Takayuki NONOYAMA

野々山 貴行 (NONOYAMA Takayuki)は、高分子材料科学、ゲル、ソフトマテリアル、ソフ…

城﨑 由紀 Yuki SHIROSAKI

城﨑 由紀(Yuki SHIROSAKI)は、生体無機材料を専門とする日本の化学者である。2025年…

中村 真紀 Maki NAKAMURA

中村真紀(Maki NAKAMURA 産業技術総合研究所)は、日本の化学者である。産業技術総合研究所…

フッ素が実現する高効率なレアメタルフリー水電解酸素生成触媒

第638回のスポットライトリサーチは、東京工業大学(現 東京科学大学) 理学院化学系 (前田研究室)…

【四国化成ホールディングス】新卒採用情報(2026卒)

◆求める人財像:『使命感にあふれ、自ら考え挑戦する人財』私たちが社員に求めるのは、「独創力」…

マイクロ波に少しでもご興味のある方へ まるっとマイクロ波セミナー 〜マイクロ波技術の基本からできることまで〜

プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーとして注目されている、電子レンジでおなじみの”マイクロ…

世界の技術進歩を支える四国化成の「独創力」

「独創力」を体現する四国化成の研究開発四国化成の開発部隊は、長年蓄積してきた有機…

四国化成ってどんな会社?

私たち四国化成ホールディングス株式会社は、企業理念「独創力」を掲げ、「有機合成技術」…

アザボリンはニ度異性化するっ!

1,2-アザボリンの光異性化により、ホウ素・窒素原子を含むベンズバレンの合成が達成された。本異性化は…

マティアス・クリストマン Mathias Christmann

マティアス・クリストマン(Mathias Christmann, 1972年10…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー