[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

2007年度ノーベル医学・生理学賞決定!

[スポンサーリンク]

2007年度のノーベル医学・生理学賞が決定しました!化学のブログですが、簡単にお伝えしたいと思います。詳しくはケムステニュースにて。

受賞概要: 胚(はい)性幹細胞を利用し、マウスの特定の遺伝子を改変する基本原理の発見

(哺乳類の遺伝子解明に革命をもたらし、人間の遺伝疾患の直接治療(体細胞遺伝子治療)の希望を抱かせる、「遺伝子標的法」として知られる相同組み換え技術への貢献に対して)

受賞者:Mario R. Capecchi, Sir Martin Evans, Oliver Smithies の3名

 

この3名は胚性幹細胞(ES細胞)と呼ばれる特定の標的遺伝子を選択的に機能停止させることによって史上初の「ノックアウトマウス」を作製しました。

ノックアウトマウスは遺伝子の働きを調べたり、新薬の効果を調べたりするのに利用されています。例えば、機能のわからない遺伝子が見つかった場合、遺伝子操作によって、その遺伝子を働かなく(ノックアウト)したマウスを作り、正常なマウスと比較すれば、その機能の異常が見つかることになります。

その異常の起こった原因がその遺伝子にあることが推測され、遺伝子の機能の解明に結びつくことになります。また、生まれつき高血圧になるようなノックアウトマウスを作り、新薬の高血圧への効果の有無の判定などにも利用するなど、様々な医学的な貢献があげられます。

 

Mario R. Capecchi

nobel

Distinguished Professor of Biology and Human Genetics and Co-Chairman
Eccles Institute of Human Genetics, University of Utah
Salt Lake City, UT
Howard Hughes Medical Investigator (米国)

カペッキ氏(70歳)はユタ大学教授。生物学において世界で広く用いられているES細胞を応用したジーンターゲティング法(標的組み換え法)を開発し、任意の遺伝子の機能を欠いたマウス、いわゆるノックアウトマウスを作成して、その遺伝子の働きを研究する道を確立しました。

Mario Capecchi Laboratory at the University of Utah

 

Sir Martin Evans, FRS

nobel

Director of the School of Biosciences and Professor of Mammalian Genetics
Cardiff University
Cardiff, Wales, UK (イギリス)

エバンス教授らは1981年に受精3.5日目のマウス胚盤胞の内部細胞塊の細胞を in vitro で培養に移し、細胞塊の解離と継代を繰り返すことにより、多分化能(pluripotency)を保持し、正常核を維持したまま無制限に増殖しつづける幹細胞を樹立することに成功しました。これはES細胞(Embryonic Stem cells)とよばれ、再生医療への応用に注目されています。

 

Genetics Research Group

 

Oliver Smithies

nobel

Excellence Professor, Department of Pathology and Laboratory Medicine, University of North Carolina School of Medicine
Chapel Hill, NC (米国)

1985 年にジーンターゲティング法という、現在の分子生物学を支える根幹的な技術を発明した、世界的に有名な科学者です(Smithies, O. et al. Nature 317 :230―234).

 

トムソンの2006年ノーベル生理・医学賞予想でも挙げられていましたように、ノーベル賞候補者として常に知られてきた3人は他のウルフ賞やガーナー賞、京都賞などの国際賞を受賞しており、今回のノーベル賞は待ちに待った受賞でした。

ちなみに他のノーベル医学・生理学賞を受賞予想としては

転写(Ptashne)、オンコジーン(Knudsen Vogelstein Weinberg) 、GFP (Shimomura Tsien) 、細胞接着(Hynes Ruoslahti Edelman Takeichi) 、情報伝達(Berridge Nishizuka)などでした。

おめでとうございます!

 

関連リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. Carl Boschの人生 その10
  2. クラリベイト・アナリティクスが「引用栄誉賞2020」を発表!
  3. Merck Compound Challengeに挑戦!【エント…
  4. スチレンにCoのHATをかぶせれば、インドールを不斉アルキル化
  5. Post-Itのはなし ~吸盤ではない 2~
  6. 日米の研究観/技術観の違い
  7. タンパクの骨格を改変する、新たなスプライシング機構の発見
  8. アルキン来ぬと目にはさやかに見えねども

注目情報

ピックアップ記事

  1. 安全なジアゾ供与試薬
  2. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」①(解答編)
  3. 有機合成化学協会誌2019年2月号:触媒的脱水素化・官能性第三級アルキル基導入・コンプラナジン・アライン化学・糖鎖クラスター・サリチルアルデヒド型イネいもち病菌毒素
  4. すべてがFになる
  5. ついにシリーズ10巻目!化学探偵Mr.キュリー10
  6. 硫黄―炭素二重結合の直接ラジカル重合~さまざまなビニルポリマーに分解性などを付与~
  7. 官能基選択的な 5 員環ブロック連結反応を利用したステモアミド系アルカロイドの網羅的全合成
  8. オルトチタン酸テトライソプロピル:Tetraisopropyl Orthotitanate
  9. マスクの効果を実験的に証明した動画がYoutubeに公開
  10. 近年の量子ドットディスプレイ業界の動向

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP