[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

2007年度イグノーベル賞決定

[スポンサーリンク]

 2007年度のノーベル賞が決定しました!・・・といっても残念ながら実際のノーベル賞ではありません。イグノーベル賞です。イグノーベル賞 (Ig Nobel Prize) とは、、「卑劣な、あさましい」を意味する”ignoble”とNobel Prizeを掛け合わせた「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる賞です。

真面目なもので、意外に知られていてある意味役立つものから、かなり皮肉的なものまでありますが、授賞式はハーバード大学で行われ、ノーベル物理学賞受賞者の物理学者ロイ・グラウバーや化学賞受賞者のウィリアム・リプスコムも授賞式に参加している至って「真面目な」賞です。

意外ではないかもしれませんが、日本人もかなり受賞していて、たとえば、タカラが開発した犬としゃべれる「バウリンガル」や、一世を風靡した育成ゲームの元祖「たまごっち」、カラオケを開発した人、そしてあの日本の発明王であるドクター中松も受賞者に名を連ねています。

さて、本題の2007年度のイグノーベル賞はどなたに?化学のサイトなのでイグノーベル化学賞に絞ってお伝えします。今年のイグノーベル化学賞は日本人が受賞しました。

今年の化学賞は以下のとおりです。

化学賞:ウシの排泄物からバニラの香り成分「バニリン」を抽出した研究

山本麻由 (26歳、国立国際医療センター研究所研究員)

 

ウシの排泄物からバニラの香り成分「バニリン」を抽出した研究が対象。山本さんは「受賞は廃棄物の活用法を知ってもらえるよい機会。ただ、この方法で抽出したバニリンは食物には向かないかも」と語った。
山本さんは国立国際医療センター研究所の研究員だった04年に今回受賞した抽出方法を開発した。牛糞1グラムに水4ミリリットルを加え200度で60分間加熱すると、1グラムあたり約50マイクログラム(マイクロは100万分の1)のバニリンが抽出できた。
バニリンは樹木などの木質成分「リグニン」から生成するため、馬や山羊などの草食動物の排泄物も利用可能だという。抽出コストはバニラ豆を原材料にする方法に比べ「およそ半分」(山本さん)。シャンプーやロウソクの芳香添加物などの応用が考えられる(引用:毎日新聞)。

おっとこれはおもしろいですね。。。牛の糞からというところがクソ・・・・・ではなくミソですね。バニリン(vanillin)は名前や前述のとおり、バニラの香り成分で、もともとはバニラ、安息香、ペルーバルサム、チョウジ(クローブ)の精油などに含有されており、以下のような構造をしています。

 

vanillin

 それらの精油からとれるのは配糖体であるグルコバニリン(Glucovanillin)。それを抽出後、加水分解することによりバニリンを得るわけです。 それに比べて牛糞からバニリンを得る方がコストは半分。すばらしい。

ignobel

 

とはいっても、バニリンは工業的にグアイアコール(guaiacol)という化合物から、ライマー・チーマン反応(Reimer-Tiemann Reaction)などでホルミル化することによって合成的に作られており、そちらの方が格段にコストは安いのです。それにしても、とても面白い発想であると思います。

 

ignobel

最近、東京農工大澁澤栄教授が牛糞100グラムあたり約1.2グラムのガソリンがとれるということを発表されていました。本気で実用化しようとしているらしいですが、ガソリンもよいですが、糞からバニラ!の方が話のネタとして面白いですよね。

 

実は、そのバニリンを使って作ったアイスクリームをノーベル賞受賞者達を含む審査員、参加者達で食したそうな・・・。

 

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 実験メガネを15種類試してみた
  2. カルボン酸に気をつけろ! グルクロン酸抱合の驚異
  3. 有機反応を俯瞰する ー縮合反応
  4. 人工DNAを複製可能な生物ができた!
  5. 転職でチャンスを掴める人、掴めない人の違い
  6. Keith Fagnou Organic Chemistry S…
  7. 論文投稿・出版に役立つ! 10の記事
  8. クロスカップリング用Pd触媒 小ネタあれこれ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 光学活性有機ホウ素化合物のカップリング反応
  2. 化学物質恐怖症への処方箋
  3. 第70回「ケイ素はなぜ生体組織に必要なのか?」城﨑由紀准教授
  4. 7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!
  5. 化学五輪、「金」の高3連続出場 7月に東京開催
  6. 海外で働いている僕の体験談
  7. AgOTf/CuI共触媒によるN-イミノイソキノリニウムのタンデムアルキニル化環化反応
  8. 光触媒で抗菌・消臭 医療用制服、商品化へ 豊田通商 万博採用を機に
  9. 仙台の高校生だって負けてません!
  10. ボイランド・シムズ酸化 Boyland-Sims Oxidation

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP