[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

未来のノーベル化学賞候補者(2)

[スポンサーリンク]

前回にひき続き、さらにあと2人、未来のノーベル化学賞候補者をあげましょう!

Nadrian C. Seeman (DNAナノ構造体研究)

Ned_Seeman.gif

ニューヨーク大のシーマン教授は結晶学が専門ですが、高分子を結晶化する困難を身をもって感じたことで、分岐DNAを結晶づくりに利用する手法を考え出しました。

ナノ構造内部に別の分子を規則的に並べたり、電子素子を組み込んだりすることで、既存の材料群では不可能な機能付与も期待できます。

具体的に彼は、立方体(シーマンの立方体)や切頂八面体と呼ばれる構造をDNA鎖で作りました。また、2種類のDNA分子をブロックのように組み合わせて,特定のパターンを持つ2次元の結晶を作り出だすことにも成功しました。最近では構造変化の制御に成功した「DNAナノロボット」を開発しています。

彼の究極的な目標は、生命のカギであるDNAを、生物学的にではなく機能性材料として利用し、極小サイズの「ナノマシン」を作ることです。

DNAを基盤とするテクノロジーの創始者として、今後分子レベルのマシンが次々とできあがりそれが実用化されればノーベル賞の受賞も可能性がでてきます。

自己組織化研究で有名なホワイトサイズや、ストッダートらと若干かぶりますが、最近特に注目されている研究です。

W.C. Still (コンビナトリアルケミストリー)

WC_Stille.jpg

組み合わせを利用しての多種類の化合物群(ライブラリー)を効率的に合成し、それらを様々な目的に応じて活用していく技術のことをコンビナトリアルケミストリーといいます。理論的には組み合わせの分だけ多量の化合物を一挙に生み出すことができます。このため、創薬化学、つまり製薬会社等で生物活性の高い化合物を簡単に見出すために使われました。

その考えをはじめて主張したのが元コロンビア大学のスティル教授です。現在では、研究よりもビジネスが楽しいということでアカデミックからリタイアしていますが・・・。

ただし、最近は元の骨格以上のものは生み出すことができず、天然から単離されてきた新規構造を有する化合物のようなものは合成できないため、類似の化合物を合成するコンビナトリアル合成よりも、ダイバーシティー(多様性)に富む合成が求められているのも事実です。この技術は失敗であったという声も聞こえてきます。しかし、ほぼ化合物の骨格が決まった薬のリードをスクリーニングするためには非常に効果的であるのも確かです。実際には、材料工学や触媒化学の分野においても応用され、現在もすばらしい製品を沢山生み出している考え方です。

コンビナトリアルケミストリーでノーベル賞を受賞できる可能性は低いかもしれませんが、重要な概念、技術であることには疑いはありません。

この中でノーベル化学賞を受賞する人がいるのか、いないのか?未来に期待です。

関連書籍

[amazonjs asin=”4480071032″ locale=”JP” title=”ノーベル賞の舞台裏 (ちくま新書)”][amazonjs asin=”4634151235″ locale=”JP” title=”ノーベル賞116年の記録”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 熱化学電池の蘊奥を開く-熱を電気に変える電解液の予測設計に道-
  2. 水が決め手!構造が変わる超分子ケージ
  3. 祝100周年!ー同位体ー
  4. 窒素固定をめぐって-1
  5. シアノヒドリンをカルボン酸アミドで触媒的に水和する
  6. 電子豊富芳香環に対する触媒的芳香族求核置換反応
  7. 先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科…
  8. 硫黄の化学状態を高分解能で捉える計測技術を確立-リチウム硫黄電池…

注目情報

ピックアップ記事

  1. MFCA -環境調和の指標、負のコストの見える化-
  2. 眞鍋 史乃 Manabe Shino
  3. Newton別冊「注目のスーパーマテリアル」が熱い!
  4. カリカリベーコンはどうして美味しいにおいなの?
  5. β,β-ジフルオロホモアリルアルコールの合成
  6. 太陽ホールディングスってどんな会社?
  7. チャールズ・クリスギ Charles T. Kresge
  8. 材料適合性 Material compatibility
  9. 革新的医薬品の科学 薬理・薬物動態・代謝・安全性から合成まで
  10. R・スモーリー氏死去 米国のノーベル賞化学者

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP