Stabilization of Labile Carbonyl Addition Intermediates by a Synthetic Receptor, Iwasawa, T.; Hooley, R. J.; Rebek, Jr, J.Science,2007,317, 493.
スクリプス研究所のRebek, Jrらによる報告です。Rebekは分子認識の世界的権威でありカリックスアレーンカプセルの合成や、それを反応場として様々な研究を行っています。 今回彼らはかご状の分子を利用して不安定な中間体を確認できる方法を開発しました。
有機化合物を用いた反応には、原料から生成物に至るまで多くの中間体が存在します。それらを確認することは、反応のメカニズムを考え、反応を最適化する、そこからまた新しい反応を発見するため非常に重要です。しかし、その反応中間体は現在の技術では確認できないものが多くあり、それらを確認するために多くの研究がなされています。たとえば、第一級アミンとアルデヒドを反応させると、ヘミアミナール中間体(RNH2CH(OH)R’)を通り、イミンができるわけですが(図1参照)、このヘミアミナール中間体特別な場合を除いて、確認することはできません。それは、原料とヘミアミナール中間体、ヘミアミナール中間体と生成物の間に平衡が存在し、それぞれ原料と、生成物に平衡が偏っているため、確認できないのです。
そこで彼らは、自身らで合成したかご型分子2を用いて、ジアルデヒドと縮合させ、1を合成しました。 模式図で書くと以下のような、かご状の分子の中にアルデヒドがすっぽりとおさまったような感じになります(図2)。
この状態でアミン(イソプロピルアミン)を反応させたところ、初めの図のように、ヘミアミナールのイプソ位(根元)のプロトンが観測され、Mec‘,Mecもそれぞれ確認することができました(1H-NMRより、詳細は文献参照)。
それではなぜ、この分子のなかでは不安定であるヘミアミナール中間体が確認できたのでしょう?
答えは、論文を読んでみてください(笑)。考察がなされています。正直、化合物によってはまわりの水素結合などによってヘミアミナールの状態で安定なものもあり、他の不安定な中間体が捕捉できるか?ということにはかなりの疑問がありますが、アイデアはとてもおもしろいですね。
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カリックスアレン・変幻自在の分子の杯(有機化学美術館) カリックスアレーンについて美しい分子を用いて説明されている。
カリックスアレン・変幻自在の分子の杯(2)(有機化学美術館) 上記と同様
Person: 岩澤 哲郎 第一著者の岩澤先生(現徳島大学助教)の紹介