[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

標的指向、多様性指向合成を目指した反応

[スポンサーリンク]

先日、Ohyun Kwon, Ph.D. (Department of Chemistry and Biochemistry University of California, Los Angeles)の講演を聞きました。お題は”Phosphine Catalysis of Allenes in Target-Oriented Synthesis (TOS) and Diversity-Oriented Synthesis (DOS)”。ハーバード大のシュライバー(Schreiber, S. L)のところにいただけあって、TOS、DOSを思考した研究展開らしいということが題名をみてわかります。

 

彼女は韓国人で修士課程を韓国で修了した後に、米国へ渡り、コロンビア大学の天然物の全合成研究で世界的に有名なダニシェフスキー(Danishefsky, S. J)のところで学位を取得、その後、上述しましたが、シュライバーのところでポスドクを行い、2001年からUCLAで助教授として研究室を持ちました。院生時代にはCP-moleculeというかなり難しい構造で全世界で全合成を競っていた化合物の全合成研究を行っており、反応屋であり合成屋であるという感じです。

 

さて、今回の講演では、最近リン系化合物を触媒として使った反応の開発を研究の中心としており、その関連のお話でした。リン化合物は安価で、マイルドに進行する反応が多いことが利点だといっていました。 例えばリン化合物の代表格であるトリフェニルホスフィンは$122/kg とかなり安く、Wittig反応をはじめとして、森田-Baylis-Hillman反応Staudinger反応などなど様々な反応が知られています。もちろん多くの不斉配位子としても使われてますね。

 

まあそれはよいとして、今回は2003年に報告したホスフィン触媒を利用した[4+2]環化反応[1]から派生した研究[2][3]についてお話していました。

ちなみにこの反応2005年MITのFu, G. Cらによってキ不斉[4+3]反応として改良されています[4]

あんまり詳しく書くと、論文紹介になってしまうので(というより若干めんどくさい)、それよりも講演をきいたのですから人となりを簡単に。とにかく声が大きい、そしてこれらの反応をDOS,TOSに展開したいらしく、そこの部分のスライド1枚で10分以上語っておりました。興味がある方は下記の文献をどうぞ。

 

関連文献

  1. Zhu, X.-F.; Lan, J.; Kwon, O. J. Am. Chem. Soc. 2003125, 4716. DOI:10.1021/ja0344009
  2. Zhu, X.-F.; Henry, C. E.; Kwon, O. J. Am. Chem. Soc.2007,129, 6722. DOI:10.1021/ja071990s
  3. Castellano, S.; Fiji, H. D. G.; Kinderman, S. S.; Watanabe, M.; de Leon, P.; Tamanoi, F.; Kwon, O. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 5843.  DOI:10.1021/ja070274n
  4. Wurz, R. P.; Fu, G. C. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 12234.  DOI:10.1021/ja053277d

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. START your chemi-story あなたの化学を探す…
  2. シス型 ゲラニルゲラニル二リン酸?
  3. タンパクの「進化分子工学」とは
  4. 金属アルコキシドに新たなファミリー!Naでも切れない絆
  5. 【2/28・29開催ウェビナー】粒子分散がわかる2DAYS(三洋…
  6. 会社説明会で鋭い質問をしよう
  7. 高専シンポジウム in KOBE に参加しました –その 2: …
  8. Scifinderが実験項情報閲覧可能に!

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学研究で役に立つデータ解析入門:回帰分析の応用編
  2. 道修町ミュージアムストリート
  3. 専門用語豊富なシソーラス付き辞書!JAICI Science Dictionary
  4. 【6/26・27開催ウェビナー】バイオ分野の分析評価・試験~粒子径測定と吸入製剤試験の新技術~(三洋貿易株式会社)
  5. 三洋化成の新分野への挑戦
  6. 高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造
  7. クレブス回路代謝物と水素でエネルギー炭素資源を創出
  8. ドウド・ベックウィズ環拡大反応 Dowd-Beckwith Ring Expansion
  9. 材料開発の変革をリードするスタートアップのデータサイエンティストとは?
  10. デーリング・ラフラム アレン合成 Doering-LaFlamme Allene Synthesis

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年6月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

新たな有用活性天然物はどのように見つけてくるのか~新規抗真菌剤mandimycinの発見~

こんにちは!熊葛です.天然物は複雑な構造と有用な活性を有することから多くの化学者を魅了し,創薬に貢献…

創薬懇話会2025 in 大津

日時2025年6月19日(木)~6月20日(金)宿泊型セミナー会場ホテル…

理研の研究者が考える未来のバイオ技術とは?

bergです。昨今、環境問題や資源問題の関心の高まりから人工酵素や微生物を利用した化学合成やバイオテ…

水を含み湿度に応答するラメラ構造ポリマー材料の開発

第651回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院工学研究科(大内研究室)の堀池優貴 さんにお願い…

第57回有機金属若手の会 夏の学校

案内:今年度も、有機金属若手の会夏の学校を2泊3日の合宿形式で開催します。有機金…

高用量ビタミンB12がALSに治療効果を発揮する。しかし流通問題も。

2024年11月20日、エーザイ株式会社は、筋萎縮性側索硬化症用剤「ロゼバラミン…

第23回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

ペロブスカイト太陽電池開発におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用

持続可能な社会の実現に向けて、太陽電池は太陽光発電における中心的な要素として注目…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー