[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ニコラウ祭り

[スポンサーリンク]

最近では論文誌もASAPのRSS配信を行っており、更新するとすぐにわかるので非常に便利ですね。それはそうと、先日、今週号のAngew. Chem. Int. Edをオンラインで見ていたら、すごいことになっていました。

34のコミュニケーションのうち、4つがK.C. Nicolaou教授(The Scripps Research institute)からの報告だったのです。さらに表紙まで飾っていました。まさにニコラウ祭りですね。

ご存じない方のために簡単に説明しておくと、彼は天然物合成研究の第一人者で、ほとんどすべての有力賞を総なめ(ノーベル賞以外)にしています。膨大な研究費で多数のポスドクをやとい、力技(もちろんきれいな合成だと思いますが)で数々の天然物全合成を行っています。

日本からも、企業・大学共に多くのニコラウ研ポスドク経験者が居ます。日本人は働くから好まれるのかもしれません。そのせいかわからないですが、親日家としても知られています。

彼の作るような複雑な巨大化合物だと2~3連報での報告は当たり前、昔もJ. Am. Chem. Soc.に確か7連報という離れ業をやってのけていたことがあります。彼はヨーロッパ人でもあるため、アメリカ化学会のJ. Am. Chem. SocよりもドイツのAngew. Chem.の方が好みらしく、毎月最低1報はここに報告しています。

 

さて、今回同じ雑誌にハーバード大のEvans教授もAzaspiracidの全合成を連報で報告しています。しかしニコラウ教授はすでにこれを合成しており、3連報2回を含め十数報の論文を書いています。さすがにびっくりしました。

 

そんなニコラウ教授ですが、さすがに最近は「複雑な化合物を合成する」という目的だけでは予算がとれなくなっているようです。合成するだけでなく、合成天然物の生物活性を調べたり、誘導体を合成したりというアプローチにも取り組んでいます。また最近ではシンガポールが多くの資金を投入して彼を招聘し、アメリカ・シンガポールに2つの研究室を運営し、全合成研究を行っているようです。

 

彼が合成化学者としての集大成と考えているのはマイトトキシン(すみません、さすがに描く気がおこりませんでした・・・)。見ればわかる通り、信じられないほど大きな天然物です。一般の人から見たらムカデか、芋虫にしかみえないでしょう。現在、多数のポスドクを投入し、この全合成研究を行っています。

マイトトキシン(出展:Wikipedia)

マイトトキシン(出展:Wikipedia)

もしマイトトキシンが合成できた暁には、どんなことが待っているのでしょうか?1冊すべてNicolaouの論文が見れそうですね!?

関連リンク

マイトトキシン- Wikipedia

K.C. Nicolaou Laboratory

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 「人工タンパク質ケージを操る」スイス連邦工科大学チューリヒ校・H…
  2. 2007年度ノーベル化学賞を予想!(2)
  3. シリカゲルの小ネタを集めてみた
  4. 和製マスコミの科学報道へ不平不満が絶えないのはなぜか
  5. Macユーザーに朗報!ChemDrawとWordが相互貼付可能に…
  6. なんだこの黒さは!光触媒効率改善に向け「進撃のチタン」
  7. 砂糖水からモルヒネ?
  8. 【マイクロ波化学(株)医薬分野向けウェビナー】 #ペプチド #核…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 金属容器いろいろ
  2. 【Q&Aシリーズ❷ 技術者・事業担当者向け】 マイクロ波による焼成・乾燥プロセス
  3. 旭化成ファーマ、北海道に「コエンザイムQ10」の生産拠点を新設
  4. 化学者のためのエレクトロニクス入門③ ~半導体業界で活躍する化学メーカー編~
  5. 「二酸化炭素の資源化」を実現する新たな反応系をデザイン
  6. ファイトスルフォカイン (phytosulfokine)
  7. ペプチドのらせんフォールディングを経る多孔性配位高分子の創製
  8. 3Dプリンタとシェールガスとポリ乳酸と
  9. 化学における特許権侵害訴訟~特許の真価が問われる時~
  10. 在宅となった化学者がすべきこと

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年6月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

植物由来アルカロイドライブラリーから新たな不斉有機触媒の発見

第632回のスポットライトリサーチは、千葉大学大学院医学薬学府(中分子化学研究室)博士課程後期3年の…

MEDCHEM NEWS 33-4 号「創薬人育成事業の活動報告」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化する化学」を開催します!

第49回ケムステVシンポの会告を致します。2年前(32回)・昨年(41回)に引き続き、今年も…

【日産化学】新卒採用情報(2026卒)

―研究で未来を創る。こんな世界にしたいと理想の姿を描き、実現のために必要なものをうみだす。…

硫黄と別れてもリンカーが束縛する!曲がったπ共役分子の構築

紫外光による脱硫反応を利用することで、本来は平面であるはずのペリレンビスイミド骨格を歪ませることに成…

有機合成化学協会誌2024年11月号:英文特集号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年11月号がオンライン公開されています。…

小型でも妥協なし!幅広い化合物をサチレーションフリーのELSDで検出

UV吸収のない化合物を精製する際、一定量でフラクションをすべて収集し、TLCで呈色試…

第48回ケムステVシンポ「ペプチド創薬のフロントランナーズ」を開催します!

いよいよ本年もあと僅かとなって参りましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。冬…

3つのラジカルを自由自在!アルケンのアリール–アルキル化反応

アルケンの位置選択的なアリール–アルキル化反応が報告された。ラジカルソーティングを用いた三種類のラジ…

【日産化学 26卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で10領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP