[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ちょっとした悩み

[スポンサーリンク]

周りに日本人がいないので、なかなかいう機会がないのですが、最近の悩みの1つに共同研究者のD君(博士2年)があります。とってもいいやつでいつもディスカッションしているのだが、1つだけ大きな問題が。

彼は原料合成を全くしないのです。

天然物合成を行う場合、最も先に進んでいる化合物に対して次の反応を進めるために、様々な検討を行いながら、裏でその原料を合成するというのが通例です。ボスに対して「今原料合成をしています。」とは合成化学者としていいたくありません。なので、最先端の化合物がなくなる前に、隠れて(別に悪いことではないですが)原料を合成して、原料を切らせないようにするべきなのです。

今、彼が自分のルートがなくなってしまったので、私のルートを手伝ってもらっているわけですが、彼は最先端の反応しかやりたがらず、私と違う条件でその化合物の反応をせっせとかけています。実は彼は他の人の最先端の反応もしかけているため、いまいちどういう立場なのか理解できず、なんともいいがたいのですが、その使い方が目に余ります。

例えばある最先端のAという化合物が200~300mgしかなくとも、10~20mgで5~6個並べて、ちょっとだけ条件を変えて検討し始めるのです。あまりにも的が外れている場合は、事前にいいますが、自分の性格上まあいいだろうと思えば、やってみれば?といってしまいます。だからすぐになくなってしまい、またその条件も経験が足りないのか、いまいち勘違い条件が多く、ほとんどよい結果が得られないだけでなく、悪い結果としても「壊れた」「目的物は得られなかった」のみ。

ただ、全く悪気がないのがさらに問題で、非常に常にフレンドリーなD君。

私自身、Aを2~5mgつかって検討しているため、ちょっとさすがに問題だと思って、

「2=5mgで検討してくれないか?」ちらっといってみました。すると彼は、

「原料が取れたら次の反応もかけたいので、それじゃ無理だよ。」といい、さらに

「原料どんどんつくればいいんじゃない?」といいました。さすがに、その言葉に悪意がなくても私はキレてしまい、「いいか、それだけつくりたかったらお前が全部作れ!」といってしまいました。

彼もちょっと反省したらしく、5mgで仕込むよといってきましたが、彼らアメリカ人にはそういう感覚がないのでしょうか?

経験上、反応にもよりますが、この反応は2mgあれば、次の反応もできるし、次も問題ありません。副生成物も同定したいならば5mg使います。あまりの文化の違い?なのか経験の少なさ?なのかわからないですが、ちょっと愚痴のようになってしまいました(苦笑)。まあ、それでも彼とは毎日仲良くやってます。貴重な共同研究者ですから(笑)。

 

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 有機合成化学協会誌2024年1月号:マイクロリアクター・官能基選…
  2. アンモニアを用いた環境調和型2級アミド合成
  3. 優れた研究者は優れた指導者
  4. ゾウががんになりにくい本当の理由
  5. Ph.D. Comics – Piled Highe…
  6. アメリカ大学院留学:研究者キャリアとライフイベント
  7. C70の中に水分子を閉じ込める
  8. 光で形を変える結晶

注目情報

ピックアップ記事

  1. 茅幸二、鈴木昭憲、田中郁三ら文化功労者に
  2. 1,3-ジヨード-5,5-ジメチルヒダントイン:1,3-Diiodo-5,5-dimethylhydantoin
  3. 【6月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 題目:有機金属化合物 オルガチックスを用いた架橋剤としての利用(溶剤系)
  4. 元素に恋して: マンガで出会う不思議なelementsの世界
  5. プラナーボラン - 有機エレクトロニクス界に期待の新化合物
  6. 「Python in Excel」が機能リリースされたときのメリットを解説します
  7. 第二回 水中で超分子化学を探る-Bruce Gibb教授-
  8. 進化するCAS SciFinderⁿ
  9. 第162回―「天然物の合成から作用機序の解明まで」Karl Gademann教授
  10. N-ヨードサッカリン:N-Iodosaccharin

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年6月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

先端の質量分析:GC-MSおよびLC-MSデータ処理における機械学習の応用

キャラクタライゼーションの機械学習応用は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)およびラボオートメ…

原子半径・電気陰性度・中間体の安定性に起因する課題を打破〜担持Niナノ粒子触媒の協奏的触媒作用〜

第648回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科(山口研究室)博士課程後期2年の松山…

リビングラジカル重合ガイドブック -材料設計のための反応制御-

概要高機能高分子材料の合成法として必須となったリビングラジカル重合を、ラジカル重合の基礎から、各…

高硬度なのに高速に生分解する超分子バイオプラスチックのはなし

Tshozoです。これまでプラスチックの選別の話やマイクロプラスチックの話、およびナノプラスチッ…

新発想の分子モーター ―分子機械の新たなパラダイム―

第646回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機反応論研究室 助教の …

大人気の超純水製造装置を組み立ててみた

化学・生物系の研究室に欠かせない超純水装置。その中でも最も知名度が高いのは、やはりメルクの Mill…

Carl Boschの人生 その11

Tshozoです。間が空きましたが前回の続きです。時系列が前後しますが窒素固定の開発を始めたころ、B…

PythonとChatGPTを活用するスペクトル解析実践ガイド

概要ケモメトリクスと機械学習によるスペクトル解析を、Pythonの使い方と数学の基礎から実践…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー