“The Catalytic Cross-Coupling of Unactivated Arenes.”
Stuart, D.R.; Fagnou, K. Science 2007, 316, 1172. doi:10.1126/science.1141956
Science誌によって報告されたパラジウム触媒を用いる酸化的クロスカップリング反応をご紹介します。
クロスカップリング反応は近年特に進展が著しく、反応性の低い基質や、ぱっと見ムリそうな基質でも反応させるような触媒系が続々と報告されています。
今回の報告はその中でも最先端を行くものと言えるでしょう。
クロスカップリング反応を行うには、sp2炭素にハロゲンや金属元素がついた基質(活性化型基質)を使わなくてはならないとされてきました。
Fagnouらはそのような活性化基を持たない、非活性化型基質を用いる反応を今回報告しています。このような直接的カップリング反応を行おうとすると、大抵はたくさんあるC-H結合間の位置選択性や、ホモカップリング体の副生などが問題となってくるものです。
彼らは酸化反応に活性の高いインドール誘導体と、過剰のベンゼン誘導体を用いてこの問題を(とりあえずは、ですが)解決しています。
このような直接的Pdカップリングでは、カルボキシレート系・カーボネート系の塩基を用いるのがポイントのようです。このような塩基は分子内プロトン引き抜き機構をとれ、アリールPdが生成しやすくなる、という説が提唱されています(関連文献[1][2]参照)。
本論文の責任著者であるKeith Fagnouは、2002年にPh.Dを取得してオタワ大学でポストを獲得した若手研究者です。直接的クロスカップリング反応の研究で、JACSをはじめとした高インパクトファクターのジャーナルにどんどん論文を出しており、売り出し中の要注目研究者です。
【追記】2009年11月11日、Keith Fagnou教授はこの世を去りました。突然の出来事で非常に残念でなりません。30半ばという若さで分野の第一人者であっただけに、彼の死は大変惜しまれています。ご冥福をお祈りいたします。
関連文献
[1] Lafrance, M.; Rowley, C. N.; Woo, T. K.; Fagnou, K. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8754. doi:10.1021/ja062509l [2] Lafrance, M.; Fagnou, K. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 16494. doi:10.1021/ja067144j
関連リンク
- Fagnou Group
- Pd触媒を必要としない(!?)鈴木カップリング反応(Chem-Station:有機って面白いよね!)
- 最近の論文から~ピロールの直接的カップリング(Chem-Station:有機って面白いよね!)