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化学者のつぶやき

立体選択的なスピロ環の合成

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Development of a Nazarov Cyclization/Wagner-Meerwein Rearrangement Sequence for the Stereoselective Synthesis of Spirocycles, Huang, J.; Frontier, A. J.
J. Am. Chem. Soc.;2007, ASAP DOI:10.1021/ja0716148

 この間紹介した、Frontierらによる報告です。彼女らは以前にCu(OTf)2を触媒として用いた位置選択的なNazarov環化を報告していました[1]。その反応を利用した不斉Nazarov環化の開発を行っている際、不斉触媒を100mol%使ったところ、目的のNazarov環化生成物でない化合物が得られてきました。

 構造決定を行ったところNazarov環化の後、プロトンの脱離反応でなく、図のようにWagner-Meerwein転位が進行し、スピロ化合物が得られていることが明らかとなりました。path bはヒドリドシフト、path Cはsp2炭素シフトが起こっています。Rが立体的電子的な要因でカチオンを安定できない置換基の場合ヒドリドシフトが進行すると説明されています。

 ほぼ単一のジアステレオマーでスピロ化合物が得られていてなかなか面白いと思いますが、ルイス酸として用いる銅化合物を化学量論量用いなければならないこと、残念ながらエナンチオ選択性は最高40%ee程度しか出ていないようです。これから不斉反応に展開するようで、今後を期待しています。

 関連文献

[1] He, W.; Sun, X.; Frontier, A. J.J. Am. Chem. Soc. 2003,125, 14278. 2004, 126, 10493.(addition/correction).  DOI:10.1021/ja037910b

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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