先日Prof.David Y. Gin(Sloan-Kettering Institute )の講演がありました。 題名は”Synthesis of Carbohydrate Immunostimulants and Bioactive Alkaloids” 実は1年ほど前に日本で聴いたことがあり、彼はスローンー・ケッタリング癌研究所に移ったばかりなので、あんまり変わってなさそうだなと思いましたが、やっぱりあんまり変わっていなかった(苦笑)。
彼は現在40歳のまだまだ若手の教授。A.G. MyersのところでPh.Dを取得し、E. J. Coreyのところで海洋アルカロイドエクチナサイジン743をほぼ一人で全合成し、イリノイ大学でポストをとり、その後、現在のMemorial Sloan?Kettering Cancer Centerに大抜擢された新進気鋭の化学者です。同研究所は合成化学では非常に著名なSamuel Danishefsky, PhDも所属し、彼の後釜ではないかといわれています。
どうでもよい話ですが、彼の奥さんもMary. S. Ginも研究者でよく一緒に講演旅行に行っています。夫婦でいろんなところにいけてよいですね。
さて、彼の研究は、基本的には生理活性のある天然物の全合成研究。題名からもわかるようにシュガーからアルカロイドと彼のバックグラウンドそのままの幅広い全合成研究を展開しています。
さて彼の講演ですが、主にここ2,3年ほどで合成した天然物の話をしていました。ひとつは、 QS-21Aの合成。鍵反応はやはりグリコシル化反応です。アグリゴンへの導入はその鍵反応が使えず、違う反応で試みていました。もうひとつは、Nominineの合成。鍵反応はOxidoisoquinolinium-1,3-Dipolar and Dienamine-Diels-Alder Cycloadditionsです。選択性は悪いですがそれぞれのジアステレオマーを単離後、いらない方を再び反応条件にかけることで熱力学的に安定な目的の生成物をまた同じジアステレオマー比で得ることができるそうです。ひとつひとつの鍵反応を非常に長い時間をかけて丁寧に説明してくれました。
現在はおそらくセットアップに時間がかかっていてあまり仕事ができていないようですが、2,3年すればまた、面白い結果をばしばし出してくるのではないかと思います。
関連文献
・Corey, E. J.; Gin, D. Y.; Kania, R. S.J. Am. Chem. Soc,1996,118,9202. DOI:10.1021/ja962480t
・ Wang, P.; Kim, Y.-J.; Navarro-Villalobos, M.; Rohde, B. D.; Gin, D. Y. J. Am. Chem. Soc.; 2005,127,3256.DOI:10.1021/ja0422007.
・Kim, Y.-J.; Wang, P.; Navarro-Villalobos, M.; Rohde, B. D.; DerryBerry, J. M.; Gin, D. Y. J. Am. Chem. Soc.2006,128,11906. DOI:10.1021/ja062364i
・Peese, K. M.; Gin, D. Y.J. Am. Chem. Soc.,2006,128,8734DOI: 10.1021/ja0625430
関連リンク
Memorial Sloan-Kettering Cancer Center