[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

メチレン架橋[6]シクロパラフェニレン

[スポンサーリンク]

2020年5月、東京化成工業(株)よりメチレン架橋[6]シクロパラフェニレンが発売されました。

特長

名古屋大学伊丹研究室によって2020年に化学合成された、初のメチレン架橋シクロパラフェニレン(Methylene-bridged Cycloparaphenylene: MCPP)[1]です。

近年の発展が目覚ましい「ナノベルト」と呼ばれる縮環環状芳香族分子の一つであり[2]、類似の環状分子である[6]CPPに比べて剛直な構造や小さなHOMO–LUMOギャップをもつことがわかっています。

(論文参考値:分子の直径の平均 7.6 Å、HOMO –4.40 eV、 LUMO –1.74 eV (at B3LYP/6-31G(d) level of theory))

Pillar[6]arene[3]を出発物質に用いて短段階で合成できるため、論文発表から短期間での販売に至りました。

ベンジル位のメチレン炭素の反応性を活かし、官能基を導入することも可能です。ナノベルトを多様な分野に応用する鍵となる分子であると期待しています。

試薬のURL

価格は、10 mg/¥16,000、50 mg/¥65,000となっています。詳細は以下のURLをご参照ください。

https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/M3419

日本語パンフレット:メチレン架橋 [6]CPP

参考文献

  1. Li, Y.; Segawa, Y.; Yagi, A.; Itami, K. J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 12850. DOI
  2. Guo, Q.-H.; Qiu, Y.; Wang, M.-X.; Stoddart, J. F. Aromatic hydrocarbon belts. Nat. Chem. 2021, 13, 402. DOI
  3. Ogoshi, T.; Kanai, S.; Fujinami, S.; Yamagishi, T.; Nakamoto, Y. J. Am. Chem. Soc. 2008130, 5022. DOI
TCI

TCI

投稿者の記事一覧

有機試薬メーカーです。

関連記事

  1. HTEで一挙に検討!ペプチドを基盤とした不斉触媒開発
  2. 計算化学を用いたスマートな天然物合成
  3. Google Scholarにプロフィールを登録しよう!
  4. 誰もが憧れる天空の化学研究室
  5. 芳香環シラノール
  6. 高機能な導電性ポリマーの精密合成法の開発
  7. 第19回次世代を担う有機化学シンポジウム
  8. イオンペアによるラジカルアニオン種の認識と立体制御法

注目情報

ピックアップ記事

  1. マイケル・クリシェー Michael J. Krische
  2. picoSpin世界最小NMRシステムの販売開始
  3. スイス連邦工科大ジーベーガー教授2007年ケーバー賞を受賞
  4. 計算化学:DFTって何? PartIII
  5. 幾何学の定理を活用したものづくり
  6. スティーヴンス転位 Stevens Rearrangement
  7. ポンコツ博士の海外奮闘録⑧〜博士,鍵反応を仕込む②〜
  8. 天然バナジウム化合物アマバジンの奇妙な冒険
  9. Pfizer JAK阻害薬tofacitinib承認勧告
  10. 化学工場で膀胱がん、20人に…労災認定議論へ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年6月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

MEDCHEM NEWS 34-1 号「創薬を支える計測・検出技術の最前線」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

医薬品設計における三次元性指標(Fsp³)の再評価

近年、医薬品開発において候補分子の三次元構造が注目されてきました。特に、2009年に発表された論文「…

AI分子生成の導入と基本手法の紹介

本記事では、AIや情報技術を用いた分子生成技術の有機分子設計における有用性や代表的手法について解説し…

第53回ケムステVシンポ「化学×イノベーション -女性研究者が拓く未来-」を開催します!

第53回ケムステVシンポの会告です!今回のVシンポは、若手女性研究者のコミュニティと起業支援…

Nature誌が発表!!2025年注目の7つの技術!!

こんにちは,熊葛です.毎年この時期にはNature誌で,その年注目の7つの技術について取り上げられま…

塩野義製薬:COVID-19治療薬”Ensitrelvir”の超特急製造開発秘話

新型コロナウイルス感染症は2023年5月に5類移行となり、昨年はこれまでの生活が…

コバルト触媒による多様な低分子骨格の構築を実現 –医薬品合成などへの応用に期待–

第 642回のスポットライトリサーチは、武蔵野大学薬学部薬化学研究室・講師の 重…

ヘム鉄を配位するシステイン残基を持たないシトクロムP450!?中には21番目のアミノ酸として知られるセレノシステインへと変異されているP450も発見!

こんにちは,熊葛です.今回は,一般的なP450で保存されているヘム鉄を配位するシステイン残基に,異な…

有機化学とタンパク質工学の知恵を駆使して、カリウムイオンが細胞内で赤く煌めくようにする

第 641 回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 生…

CO2 の排出はどのように削減できるか?【その1: CO2 の排出源について】

大気中の二酸化炭素を減らす取り組みとして、二酸化炭素回収·貯留 (CCS; Carbon dioxi…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー