転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょうか?実は、転職活動がうまくいかない原因には共通する行動パターンがあります。転職を成功させるためには、単に応募するだけではなく、転職活動に対する「明確な軸」と「戦略」が必要です。今回は、転職活動で直面しやすい課題と、成功するためのステップについて詳しく解説します。
目次
研究職の求人数も増加傾向だが、思いつきで応募してもうまくいかない
転職活動を1年間しているけど決まらない
「なぜ転職したいのか(Why)」に応えられること
「転職先で何を実現したいのか(What)」を考える
これから増えていく転職のチャンスを掴むために
研究職の求人数も増加傾向だが、思いつきで応募してもうまくいかない
転職動向調査2024年版によると(*1)、2023年の転職者の数は過去最高水準とあります。年齢層は30代から50代の男性が多いのが特徴です。背景として、氷河期世代の採用抑制に伴う中堅層や、新規の事業領域を担う専門人材の不足などが影響していると考えられます。転職動向の調査で、(*2)例えば製薬業界では研究職求人も増加傾向にあり、創薬や診断薬関連の分野での採用が進んでいます。実際に、アカデミ出身者を積極的に受け入れる企業も増えています。同様に化学業界でも環境に配慮した製品開発や半導体関連技術への需要が高まり、経験豊富な研究職を求める企業が増えており、民間企業で新しいポストを得るチャンスは増えています。
ただ、求人が増えているからとは言え、思いつきで応募してもうまくいきません。年齢に関わらず、転職先がすぐに決まる人がいる一方、なかなか納得する転職先に出会えない人がいるのも事実です。うまく転職活動が進まない人は何が問題なのでしょうか。
転職活動を1年間しているけど決まらない
Iさんは40代前半の男性で、転職活動を始めて1年になります。なかなか思うように転職先が決まらず相談に来られました。これまでの活動をお聞きしたところ、大手の転職サイトに幾つか登録し、気になった求人があればとりあえずエントリーしているとのことでした。業界などにこだわりはなく、「大手企業で、家から通えそうな場所であれば選考を受けている」という状況でした。
このIさんのように、何となく転職活動を始める人はとても多いのですが、ほとんどの場合、上手くいきません。なぜなら、転職活動の目的が明確ではないため、面接に進んでもぼんやりとした話になりがちだからです。目的があるからこそ「この会社で何がしたい」「この経験を貴社で生かしたい」という想いを語ることができます。「特にうちの会社でやりたいこともなさそうだな」と感じる相手と一緒に働きたいと思う人はいるでしょうか。実際にIさんも何度か面接には進んでいるものの、お見送りが続いていました。企業も人手不足とはいえ、シビアに候補者を見極めています。転職理由や志望動機などの問いかけに対して、軸のない回答はすぐに見抜かれ、お見送りになります。
求人に応募することは、次のキャリアを実現するための1つの手段です。「自分の求めているキャリア」を明確にするためには、Why→What→Howの順番で考えることが大切です。まずは「Why(=なぜ自分は転職したいのか)」を明確にします。その次に「What(=転職先で何をしたいのか)」を考えると自然と「How(=どのような方法で転職活動を進めていくのか)」が見えてきます。
「なぜ転職したいのか(Why)」に応えられること
まず、「なぜ転職しようと思ったか」を振り返ってみましょう。転職サイトに登録したということは、「転職しようかな」と考えるきっかけがあったはずです。給与、人事評価、業務内容、人間関係など、転職を考えるきっかけは何だったのでしょうか。
例えば、先ほどのIさんの場合、公的研究機関の任期付き研究員として勤務されていました。研究テーマ自体は興味深いものの、遅くまで実験作業をする生活が続いており、「このまま続けられるのか」という漠然とした不安を感じていたそうです。そんなとき、学生時代の大手化学メーカーで研究職として働いている後輩と会い、「残業も少ないし、リモートワーク制度もあって働きやすい」という話を聞きました。プロジェクトも主幹として任されており、充実している様子だったそうです。それがきっかけでIさんは「制度が整った大手企業に行くのが良いかもしれない」と考えたそうです。
そこで改めてIさんと、「アカデミアではなく民間企業がよいのはなぜか」、「そもそもなぜその研究を続けているのか」という対話を進めていったところ、徐々に何に不満を感じているのか本音が明確になってきました。Iさんが転職を考えた一番の理由は、「残業時間が多いこと」ではなく、「アカデミアの主要ポストに付ける見通しが立たないこと」だと分かりました。大きなラボなので、複数のプロジェクトに携わっているものの、自分が主体となるプロジェクトは持っていません。業務量は多いものの、その苦労が自分の論文執筆や、評価に繋がるものでないため、「仕事が辛い」と感じていたそうです。まとめると、転職したい理由は「アカデミアでの主要ポストが得られていない」、「頑張っても評価に繋がらない」の2つであることが分かりました。
「転職先で何を実現したいのか(What)」を考える
Iさんとの対話で明確になった転職軸が「アカデミアではなく民間企業」、「自分の専門性や経験を求めていること」の2つでした。
1つ目の「アカデミアではなく民間企業」については、キャリアの方向性を見直すことにしました。10年以上研究生活を続けていましたが、インパクトのある論文実績がなく、このまま続けても研究員としての評価や給与は頭打ちになるのが目に見えていました。もともと教授などのポストは競争が激しいことは理解していたため、このタイミングで環境を変えることを決断されました。
2つ目の「自分の専門性や経験を求めていること」については、「ご自身の専門性や強みと感じる経験はどのような企業で生かせそうですか?」と問いかけたところ、「自分の携わるテーマを扱っている民間企業が複数あり、経験が役に立つかもしれない」というお話になりました。Iさんの携わる分野の研究は、ここ数年で国内外の論文数も増加し、民間企業との共同研究の話も増えていたそうです。アカデミアで新規技術を主に開発し、民間企業が技術応用やプロセス開発などを担当することが多く、Iさんは論文再現試験やプロトコルの開発や改良を担当していました。その民間企業でのポジションは実験経験が求められることが多く、「このような経験が生きる企業はありそうですね」というお話になりました。
この2つの転職軸を明確にすることで、「何がしたいか」が分かり、応募すべき求人もすぐに判断できるようになっていきました。選考企業からも「なぜアカデミアからキャリアチェンジをするのか気になっていたが、自分なりに考え抜いた理由であると分かった。入社後にやりたいことも明確であり、自社で活躍してくれるという具体的なイメージが持てた」というポジティブなフィードバックが増えてきました。その後、エントリー数自体は以前より減らしているにも関わらず、2か月程で内定を得ることができました。
これから増えていく転職のチャンスを掴むために
このように、「Why(=なぜ自分は転職したいのか)」と「What(=転職先で何をしたいのか)」を明確にすることで、「How(=どのような方法で転職活動を進めていくのか)」を適切に設定することができました。
今後、定年の延長などで働く期間が長くなっていく中で、一生のうちに何回か転職活動をする機会が訪れることが予測されます。望むキャリアを実現するために、転職活動の経験やスキルを磨いておくことは重要になってくるのではないでしょうか。今後転職を考える際に、参考になれば嬉しいです。
参考資料
*1)転職動向調査2024年版(2023年実績)株式会社マイナビ
https://www.mynavi.jp/news/2024/03/post_41173.html
*2)AnswersNews「 製薬業界 2024年上半期の転職市場トレンド予測―MR・研究・製造で求人件数増える見込み」
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/27185/
*本記事はLHH転職エージェントによる寄稿記事です。これまでの寄稿記事はこちら
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