ケムステをいつもご覧になっている方であれば、もうお馴染みのSciFinder Future Leaders プログラム(こちらは2019年の応募情報 )です。ケムステの過去記事 にもあるように、このプログラムはCASが主催し、様々な施設の見学に加え、ACS Fall meetingに無料で招待(航空券、宿泊費等はすべてCAS持ち) されます。しかもプログラムに参加する前後に、アメリカの気になる研究室を訪問したい等の要望にもある程度、柔軟に対応してくれるとのことです。
ACS Fall meetingは参加費無料かつホテル付です。
応募に必要なのは、①博士課程の学生かポスドクであること、②500-1000語のエッセイ(自身の研究と目標とSciFinder をはじめとする情報をどのように研究に役立てているか?)、③履歴書、④指導教官の推薦状だけです。例年通りであれば締め切りは3月末~4月初旬ですので、今から準備すれば来年の応募には十分に間に合います。特に自身の研究について書くエッセイでは、既に論文として公開している内容と関連付けて書くことで審査員に対してアピール出来るため、ぜひ今から頑張って論文を書いてください。
昨年は慶應義塾大の高橋芳人さんが参加され、プログラム様子はこちらのインタビュー からご覧いただけます。高橋さんを含め例年「ケムステの記事がきっかけで応募し参加した! 」という方が多く、大変うれしいかぎりです。来年度もケムステを見た方の中から選ばれるよう、昨年プログラムに参加された高橋さんに「エッセイの書き方 」と、選ばれた場合「どのような準備が必要か 」についてお伺いしました。
どうやってエッセイを書けばいいのか?
Q.エッセイ(英語)を書く際に心がけた点は何でしょうか?
とにかく、人と違った事を書こうと意識しました。 ありふれた内容を書いてしまうと、 他のエッセイに埋もれてしまうと思い、 審査員の記憶に残るよう工夫しました。文章も単調で堅苦しいものでなく、言い回しやフレーズを工夫し、 読んでいて楽しくなる文章を心がけました。エッセイは各段落の構成や様式が重要ですが、 私の場合文章の推敲具合はあまり高くなかったので、 オリジナリティで評価してもらえたのかと思います。
Q .どのようなエッセイを書かれたのか教えて頂けないでしょうか?
今回の題目は、『1.自分の研究、2. SciFinderを自分の研究にどう活かしているか』 というものでした。『1.自分の研究』600文字、『2. SciFinderを自分の研究にどう活かしているか』 400文字の割合で書きました。自分の研究については、Introduction、 Result1~4、Conclusionで章立てし、 目的や意義に重点をおいて書きました。 PDFでの提出であったため、 適宜Chemdrawで描いた図を載せました。SciFinderを普段どう使っているかについては、 4つのパラグラフで書きました。 SciFinderの長所や短所について具体例を挙げ、 自分の意見を交えてエッセイを書きました。
どんな準備が必要?
Q.もう一度参加するなら準備したいこと・ものはありますか?
自分が専門とする有機合成以外の知識を幅広くつけることです。 高分子化学、材料化学、化学工学、環境化学、理論物理学等、 多岐に渡る分野の方が参加されていたので、 これらの分野に明るければもっと研究についての会話を楽しめたと 思います。
参加者の国籍やバックグラウンドがあまり被らないよう配慮されいるようです。
Q.実際に参加してみて、参加前の想像と違っていたことはありますか?
まず、想像の数倍楽しい プログラムだったことです。 色々な分野の科学者と友達になり、 毎日イベントが盛り沢山のプログラムでした。ディスカッション、 レクチャー、学会、食事、飲み会、 プログラムと遊びのメリハリがありとても充実していました。
サプライズという点では、 空の上で誕生日を祝ってもらったことがとても嬉しかったです。 移動日が誕生日だったため、 飛行中の飛行機の中で乗客全員に祝ってもらいました。 他にも宿泊したホテルや夕飯がかなり豪華で、 嬉しい予想外が沢山ありました。
機内での誕生パーティー
多くの参加者の方が、 日本に興味をもっていたことも想像外でした。日本の文化や食事、 アニメや漫画について雑談をしました。また、 自分以外の博士学生(とポスドク) が給料をもらって研究していることに驚きました。 自分の研究環境や研究時間について話したら、 皆さんかなり驚いていました(笑)。
「参加しようかな」と思っているケムステ読者にメッセージをお願いします。
「参加しようかな」と思った時点で申し込んでください。 世界中の優秀な若手の化学者と友達になれるこれ以上の機会はない と思います。また、 学会では中々出会えない専門外の化学者と知り合える点が大きいと 思います。
今でも参加者の方々とは、友好関係が続いています。 学会や共同研究で日本に来てくださった方と観光に行ったりもしま した。専門外の知識や海外のポスドク先についての相談や、 雑談ができるとても良い友人をつくることができました。
ディスカッション以外にも様々なアクティビティがあるので仲良くなるのは簡単です。
直接話すことで知れる世界
“Publish with pride.” という言葉が印象に残っています。
CAS本部で、 とあるジャーナルのエディターと話す機会がありました。彼に「 日本人の多くは第一言語が英語ではなく、 文章力の点でネイティブには劣ってしまう。 問題点や改善点があったら教えてください。」と聞きました。 すると、彼は日本の論文はわかりやすくて素晴らしいから、 特に問題点や改善点はないと教えてくれました。 本文だけでなくサポーティングインフォメーションも信用性が高く 、 マイナーチェンジで論文を量産しない点も良いと仰っていました。 10年後の自分が見ても恥ずかしくなく、 良い論文を書いたなと思える様、 誇りをもって論文を投稿しなさいと教えてもらいました。
申し込みは来年3月末頃~4月初旬
いかがでしょうか?参加すると世界各国から集まった優秀な若手研究者たちと、貴重な体験が出来ることは間違いありません!締切は例年通りだと来年3月末ですが、CVやエッセイでアピールできるよう論文をどんどん書いて応募に備えましょう!!
最後に、大変お忙しい中コメント頂きました高橋芳人さんにこの場を借りて御礼申し上げます。
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