りん脂質構造を有する生体適合性ポリマー
りん酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチル(MPC)は陽イオンと陰イオンを同一分子内に持つ両イオン性メタクリル酸で,生体細胞膜のりん脂質部位に似たホスフォリルコリン構造を有しています。MPCは従来のリビングラジカル重合法によってポリマー化が可能です。金属やセラミック,ガラスなどの表面修飾に応用され、これらはホスフォリルコリン構造を有するため生体適合性・血液適合性が高い素材として注目されています。一例として,石原らはシランを含む表面添着開始剤を介して,シリコンウエハー表面にMPCを重合させ、修飾しています。その表面はMPCポリマーのブラシ構造になっており,高い親水性と抗タンパク質非特異吸着性があることが判明しています。すでに応用されている医療デバイスだけに限らず,バイオセンサーなどの他の分野への利用が期待されています。
K. Ishihara, Y. Inoue, Advances in Science and Technology 2010, 76, 1.