フルオロキノロン抗菌剤エノキサシンによるRNA干渉(RNAi)の増強
RNA干渉(RNAi)の主要なタンパク質構成要素は同定されていますが,RNAiによる遺伝子発現の調節機構については依然としてほとんど明らかにされていません。この状況下,Shanらは低分子のフルオロキノロン系抗菌剤であるエノキサシンがRNAiを増強したこととその基本原理を報告しています。RNAiの活性をモニターするために,彼らは安定な細胞株(RNAi-293-EGFP)の緑色蛍光を検出するシステムを開発しました。この細胞株は緑色蛍光タンパク質(EGFP)の遺伝子を発現しているヒト細胞(293-EGFP)に,EGFPのmRNAを標的とした短鎖ヘアピンRNA(shRNA)を発現しているレンチウイルスを感染させることにより調製しています。この分析システムを用いて,彼らはEGFPに対するsiRNAによるEGFP遺伝子ノックダウンをエノキサシンが濃度依存的に促進することを見いだしました。彼らは,エノキサシンがトランス活性化応答性領域RNA結合タンパク質とRNAsの相互作用を促進していることを示しています。
G. Shan, Y. Li, J. Zhang, W. Li, K. E. Szulwach, R. Duan, M. A. Faghihi, A. M. Khalil, L. Lu, Z. Paroo, A. W. S. Chan, Z. Shi, Q. Liu, C. Wahlestedt, C. He, P. Jin, Nat. Biotechnol. 2008, 26, 933.