[スポンサーリンク]

D

1,3-ジチアン 1,3-Dithiane

[スポンサーリンク]

 

概要

1,3-ジチアンの2位メチレン水素は酸性度が高く(pKa31.1)、アルキルリチウムなどの強塩基を作用させることでアルキルアニオン種を生成させることができる。チオアセタールは脱保護によりカルボニルへと変換されるので、1,3-ジチアンはアシルアニオンの等価体として利用できる(アシル基の極性転換)。すなわちハロゲン化アルキルなどの求核剤を反応させた後、生成物を加水分解することによって、ケトン・アルデヒドが得られる。また脱硫反応によってアルカンへと変換することもできる。

チオアセタールは、水銀などのソフトルイス酸もしくは超原子価ヨウ素で活性化しないと外れない(ブレンステッド酸によっては活性化されない)ので、選択的に脱保護可能なカルボニル基の保護基としても使われる。通常のO –アセタール保護基と区別できる。

より穏和な塩基で同様の変換が実施可能な試薬として、FAMSOMT-スルホンが知られている。

 

基本文献

1,3-ジチアンの合成

 

開発の歴史

1975年ハーバード大学のコーリーゼーバッハらが、1,3-ジチアン化合物がアシルアニオン等価体として利用できることを報告。このため本反応はCorey-Seebach反応とも呼ばれる。

コーリーとゼーバッハ

コーリーとゼーバッハ

反応機構

置換・付加など、有機リチウム化合物と同様の反応を行える。

 

反応例

s-on-11.gif
s-on-12.gif
シリル置換ジチアンをリチオ化し、エポキシドと反応させるとBrook転位を起こし、アルコールが保護された生成物がとれる。[1]
A.B.Smithらはこの一連の変換をAnion Relay Chemistryと名付けている。
dithiane_4.gif
Raneyニッケルで処理すると、脱硫生成物が得られる。カルボニル化合物をメチレンへと還元する方法の一つ(Wolff-Kischner還元Clemmensen還元などの代替)として捉えることもできる。詳しくは還元的脱硫の項目を参照。dithiane_5.gif

実験手順

  • 1,3-ジチアンを用いる環状ケトンの合成[2]

2014-08-27_16-03-28

実験のコツ・テクニック

参考文献

[1] Smith, A. B., III.; Kim, D.-S. Org. Lett. 20046, 1493. DOI: 10.1021/ol049601b
[2] Seebach, D.; Beck, A. K.  Org. Synth. 197151, 76 DOI: 10.15227/orgsyn.051.0076

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”B007PCGAGO” locale=”JP” title=”Progress in Heterocyclic Chemistry: 23″]

 

関連リンク

関連記事

  1. ウィルゲロット反応 Willgerodt Reaction
  2. ウィッティヒ転位 Wittig Rearrangement
  3. オレフィンメタセシス Olefin Metathesis
  4. 椎名マクロラクトン化 Shiina Macrolactoniza…
  5. ハネシアン・ヒュラー反応 Hanessian-Hullar Re…
  6. バルビエ・ウィーランド分解 Barbier-Wieland De…
  7. ビンゲル反応 Bingel Reaction
  8. フリース転位 Fries Rearrangment

注目情報

ピックアップ記事

  1. イソプロポキシボロン酸ピナコール:Isopropoxyboronic Acid Pinacol Ester
  2. 構造化学の研究を先導する100万件のビッグデータ
  3. 谷口 透 Tohru Taniguchi
  4. 化学コミュニケーション賞2022が発表
  5. 一重項励起子開裂を利用した世界初の有機EL素子
  6. 第三回ケムステVプレミアレクチャー「夢のある天然物創薬」を開催します!
  7. 逆電子要請型DAでレポーター分子を導入する
  8. エーテルがDiels–Alder反応?トリチルカチオンでin situ 酸化DA!
  9. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり ⑦:「はん蔵」でラクラク捺印の巻
  10. 第30回 弱い相互作用を活用した高分子材料創製―Marcus Weck教授

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2024年12月号:パラジウム-ヒドロキシ基含有ホスフィン触媒・元素多様化・縮環型天然物・求電子的シアノ化・オリゴペプチド合成

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年12月号がオンライン公開されています。…

「MI×データ科学」コース ~データ科学・AI・量子技術を利用した材料研究の新潮流~

 開講期間 2025年1月8日(水)、9日(木)、15日(水)、16日(木) 計4日間申込みはこ…

余裕でドラフトに収まるビュッヒ史上最小 ロータリーエバポレーターR-80シリーズ

高性能のロータリーエバポレーターで、効率良く研究を進めたい。けれど設置スペースに限りがあり購入を諦め…

有機ホウ素化合物の「安定性」と「反応性」を両立した新しい鈴木–宮浦クロスカップリング反応の開発

第 635 回のスポットライトリサーチは、広島大学大学院・先進理工系科学研究科 博士…

植物繊維を叩いてアンモニアをつくろう ~メカノケミカル窒素固定新合成法~

Tshozoです。今回また興味深い、農業や資源問題の解決の突破口になり得る窒素固定方法がNatu…

自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間

50歳前後は、会社員にとってキャリアの大きな節目となります。定年までの道筋を見据えて、現職に留まるべ…

イグノーベル賞2024振り返り

ノーベル賞も発表されており、イグノーベル賞の紹介は今更かもしれませんが紹介記事を作成しました。 …

亜鉛–ヒドリド種を持つ金属–有機構造体による高温での二酸化炭素回収

亜鉛–ヒドリド部位を持つ金属–有機構造体 (metal–organic frameworks; MO…

求人は増えているのになぜ?「転職先が決まらない人」に共通する行動パターンとは?

転職市場が活発に動いている中でも、なかなか転職先が決まらない人がいるのはなぜでしょう…

三脚型トリプチセン超分子足場を用いて一重項分裂を促進する配置へとペンタセンクロモフォアを集合化させることに成功

第634回のスポットライトリサーチは、 東京科学大学 物質理工学院(福島研究室)博士課程後期3年の福…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP