食虫毒の作用 |
現在、某食品会社の食中毒事件で食品の安全性が話題になっている。
では、食中毒とは一体なんなのだろうか? また、毒とはどうして人体に害をもたらすのか?できるだけ、有機化学的に考えてみよう。
まず、今回の食中毒では毒素原生大腸菌や、セレウス菌とよばれる菌が食品中で増殖し、これを摂取すると腸管内で増殖するとともにエンテロトキシン(腸管毒)という毒を産出しこれによって下痢、吐き気などの中毒症状が出た。
この食中毒は細菌型食中毒といわれ、食中毒患者数の大部分を占めるものである。 その他にフグやアサリなどに含まれる自然毒、化学物質による食中毒などがある。
それではこれらの異物が体に入って毒性を示すプロセスについて考えてみよう。 いろいろな摂取経路を経て体内に入った異物は、生体内の臓器や組織に到達してはじめて、その毒作用を示します。 (図2)
図2 毒性研究における2つのステップ
例えば、輸入食品につくカビが作り出すアフラトキシンB1という物質(図1)は発ガン性(肝臓ガン)を示すのですが、何らかの原因で肝臓まで到達しなければ、肝臓ガンを引き起こすことはありません。
図1 アフラトキシンB1(aflatoxin B1)
というわけで、毒がその作用を繰り広げるためには、それぞれに用意された場所に行く必要があるわけです。 これらの場所を標的部位と呼びます。また摂取された物質がその標的部位に到達するまでの段階を動態学的なステップと呼ばれています。
さて、有機化学で考える部分は上述のような内容ではなくて、これらの毒の反応メカニズム、つまり作用学的ステップを考えることにあります。毒のメカニズムがわかれば、適確な解毒剤できるので被害を最小限にとめることができるのです。
しかし、実際にはメカニズムが解明されているのは少数物質であり、いまだ解明されていないものがほとんどです。
その例として、前述したアフラトキシンB1のメカニズムについて解説しよう。 この物質は前に書いたようにカビが生産する有毒物質で、急性中毒、肝臓ガンを引き起こします。
図 3-1 3-2 3-3 3-4 アフトラキシンB1の発ガン性は15,16位の二重結合が飽和された(二重結合のない)アフラトキシンB2(図3−2)では、約2桁オーダーで減少が認められたため、この二重結合が発ガン性に重要な意味を持つだろう(図3−1)と考えられ、15,16-エポキシド(図3−3)が発ガン性物質の本体と推測されていた。
メカニズムとしてはアフラトキシンB1とDNAが反応すると、グアニンのN7が結合した図3−4が得られ、これがDNAを阻害し、変異体すなわち腫瘍を作ることがわかった。
アフトラキシンB1はそれが微量に入った食物などを大量摂取すると危険な物質であるが、現在日本では見られていない。
このように毒として作用する物質は、化合物にも天然物にも大量にある。しかし、ほとんどが毒の影響が出てから、つまり被害者でてから、対応、研究されたものばかりである。
なんとか未然に防げないものか?食中毒に関しても、においや味ではわからないし、被害が出ないとわからない。まあ対策としては、生で食べず加熱するということで、死ぬ細菌もいるが。
これらのメカニズムを考えるのは広義の有機化学の範囲であり、生物学、生物学、天然物化学などの範囲を勉強していないと難しい。 有機って面白いよね!! (by ブレビコミン)
▼参考、関連文献
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