分子間にはどんな力が働いている? |
2つの分子が反応したり、分子間化合物ができたりするときには分子同士に相互作用が働いているから起こるのである。 それでは分子にはどんな力が働いているのか?
分子に働いている力には分子間相互作用と分子内相互作用が考えられる。 ここでは分子間相互作用について考えてみよう。 分子間に働く力は大きく6つに分類される。それを表1に示す。
表1 分子間に働く相互作用
これらの安定化・不安定化のエネルギーは計算をすることのできる量であり、最近の計算化学では次のように述べている。 例えば2つの分子A、Bが相互作用し分子間化合物を作る場合、A、B間の結合エネルギーは(1)式で計算できる。 ΔE=EABー(EA+EB) (1) EAB:相互作用系A−Bのエネルギー EA、EB:孤立系A、Bのエネルギー またこのΔEは(2)式のように表される。 ΔE=DEF+INT (2) DEF:変形エネルギー(deformation energy) INT:相互作用エネルギー(interaction energy) DEF、INTについて、例としてBH3とCOが相互作用し配位化合物H3B-COを与える反応(図1)より説明する。
図1 DEFとINT
このINTについて北浦 、諸熊氏によって計算方法が示されている。式(4) INT=ES+EX+CT+PL+MIX+DISP (4) 各因子は表2の通りである。
これらの中で有機化学で重要なのは最初の4項である。
静電エネルギー(ES)は二つの分子が接近したときにそれらの間で働くクーロン力による相互作用エネルギーであり、表1で述べた静電力や配向力がこの項に含まれる。これは水素結合と呼ばれる分子間結合に重要な働きをしている。結合は弱い結合であるが、これは2つの分子が会合する十分な大きさで、氷の結晶やギ酸のようなカルボン酸の二量体での結合を作ったり、核酸の二重らせんにみれれるように生化学においても重要な働きをしている。
交換反発エネルギー(EX)は被占軌道間の相互作用によるエネルギーである。この重なりをなくすように被占軌道の変化が起こり、この変化によって不安定化する。嵩高い(かさだかい)置換基の間の相互作用も、それぞれの被占軌道の相互作用である。
電荷移動エネルギー(CT)は一方の分子の被占軌道と他方の分子の空軌道が相互作用すると、新しい被占軌道はもとの分子軌道よりも安定であるので相互作用系は安定化する。そのときのエネルギーである。
分極エネルギー(PL)は分極した分子やイオンが近づいてきたときに、電場などの摂動によっておこる電子密度の変化に由来するエネルギーである。表1の誘起力に対応し、分子内で被占軌道から空軌道への電子励起によって、静電相互作用に好都合な電子分布への再配列が起こり安定化に寄与する。
このように、分子間にはさまざまな力が働いているので、これらを考慮して反応を考えていくことが重要である。うーん難しい。 ちょっと有機と離れたけど、有機って面白いよね! (2000/6/3 ブレビコミン)
▼参考、関連文献
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【用語ミニ解説】
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