ラセミ体 |
ラセミ体とはキラル(ある構造がその鏡像に相当する構造と重ね合わせることができないと言う性質をもつ)な化合物において等量のエナンチオマーが混在する状態を呼ぶ。(図1)
図1 ラセミ体の例(右と左が等量混在) ラセミ体は旋光性を示さず光学不活性である。
ラセミ体であることを特に示す場合には化合物の前に(±)-をつける。これに対して一方のエナンチオマーが他方より多く存在している非ラセミ体の状態を、純粋に一方だけである場合も含めて光学活性体と呼ぶ。 気体、液体、溶液においてはラセミ体の示す物理的性質、例えば沸点、屈折率、密度などはそれぞれを構成するエナンチオマーとまったく同一である。
しかし、固体では様子が異なる。 ラセミ体の結晶にはラセミ混合物、ラセミ化合物、ラセミ固溶体の3種類がある。
ラセミ混合物:全体としてはラセミ体であるが、個々の単結晶はエナンチオマーの一方のみからなる場合。 ラセミ化合物:結晶の単位格子中に両エナンチオマーが同数ずつ含まれている場合。 ラセミ固溶体:両エナンチオマーの混晶として存在する場合。
これらの特徴を表1に示す。
表1 ラセミ体結晶の種類 各結晶の融点図は図2のようになる。
図2 ラセミ体結晶の種類と融点図の例
このように単にラセミ体といっても、それらが固体で存在する場合にはいろんな種類がある。 有機って面白いよね!! (2000/6/4 ブレビコミン)
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【用語ミニ解説】
■エナンチオマー
鏡像異性体(Enantiomer)。 重ね合わせることの出来ない鏡像体のこと。
光学活性体を製造・供給しようとする工業技術キラルテクノロジー。国際的にも高いレベルにある日本のキラルテクノロジーの現状を概観する。
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