1,2脱離反応 |
今回は知識の確認のため書いた。 まず脱離反応について説明しよう。
脱離反応とは反応基質から二つの結合の開裂によって1分子が失われる反応である。 そして脱離反応は開裂する結合の位置関係によって異なる生成物を与える。
炭素からの1,1脱離ではカルベン、1,2脱離ではアルケン、1,3脱離ではシクロプロパンを与える。
ここでは、多分化学科の大学生なら1、2年で習うであろう、1,2脱離反応について説明する。
典型的な脱離反応のひとつは塩基によるプロトン引き抜きを伴うHXの脱離である。 反応は図1のように進む。
図1 脱離反応の反応機構
しかし、基質と塩基によって、二つの結合切断(図1ではH-CとX-C)の起こりやすさが変化する。 それによって下のような3つの場合が考えられる。
1、X-の脱離能が大きくC-X結合が切れやすくC-H結合が切れにくい。→E1反応 2、X-の脱離能が小さくC-X結合が切れにくくC-H結合が切れやすい。→E1cB反応 3、1、2の中間である。→E2反応
また、これによってポテンシャルエネルギーの様子も変化するはずである。 図2に二つの結合の進み方を示したMore O'Ferrall-Jencksのエネルギー図を示す。
図2 脱離反応のMore O'Ferrall-Jencks図
このように反応機構の変化はC-HとC-X結合の切断の容易さによって決まるので、塩基の強さ、X-の脱離能、カルボアニオンとカルボカチオンを安定化する置換基の効果、塩基の接近に対する立体効果、溶媒の極性などさまざまな要因によって支配されている。
思い出したかな? 有機って面白いよね!! (2000/6/22 ブレビコミン) |
【用語ミニ解説】
化合物が原子団を放出してより原子数の少ない分子となる反応形式のこと 。
脱離反応の例
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有機化学の教科書として大学の教科内容によく適合したものとして定評を博する、原著第10版の全訳。よりわかりやすい記述に書き改め、カラー写真を導入して図表の見栄えを改善した。
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